「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからです」1675年、アイザック・ニュートン卿はそう書いた。
それから3世紀以上を経た今、一人では偉大なことは何もできないと考えたニュートンの言葉が、現代においてもますます意味を持つものになっている。スティーブ・ジョブズに仲間がいなかったら、彼のアイデアは実現しただろうか? インターネットの発明者がいなければ、グーグルに存在意義はあっただろうか?
インクルーシブビジネスの世界も同じだ。刺激的なコラボレーションがますます増えている。飛躍的な成果を挙げている多くの事例は、パートナーシップが価値をもたらすこと、協力関係からイノベーションの機会が生まれることを証明するものだ。最近では、BCtAメンバーで眼鏡メーカーのエシロールと中国のEコマース大手アリババの提携の例がある。エシロールとアリババは、アリババのRural Taobao販売店を通じて、これまで眼科検診を受けたことがなかった中国農村部の何千人もの低所得者に共同で検眼サービスを提供している。
アフリカでは、同じくBCtAメンバーのマスターカードが、何百万もの小規模農家と潜在的な買い手をつなぐサービスを提供し、国際熱帯農業センター(CIAT)や米国アフリカ開発財団の協力のもと、取引記録のデータを作成している。これにより、小規模農家に経済的な安定がもたらされた。
こうした取り組みでは、イノベーションにコラボレーションを掛け合わせ、社会的影響と企業収益という2つの目標を同時に目指している。これらの要素をうまく両立できれば、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献した民間企業として注目を集め、他社に大きな影響を与えるリーダーになれる。
具体的に考えてみよう。
イノベーションによって、企業は新たなニーズへの対応や新規市場への参入、核となる経営手法に柔軟性をもたせることができる。目まぐるしく変わる世界の中で、自社の存在意義を保てるのだ。
また、コラボレーションによって、企業は他社の強みを活かしながら、これまでとは違った方法で、以前は手が届かなかった市場や領域に挑戦できるようになる。だから、単独では難しいことも実現できるのだ。
SDGsをインクルーシブビジネスの目標の中心に据えて、社会的影響が大きい実績を積み重ねること。それが、変わり続ける顧客ニーズを確実にとらえたビジネスモデルへの転換、報告内容の改善、信頼の構築につながっていく。
そして、事業収益を維持したければ、利益を上げるだけでは不十分だ。将来にわたり、持続可能な経営を続ける必要がある。
BCtAを牽引しつづけているのは、世界中に影響を及ぼし、何百万もの人々の生活を改善しているメンバー企業の取り組みだ。今年のBCtA第9回年次フォーラムのテーマは、「インクルーシブビジネス:コラボレーションとイノベーションが生み出す新たなモデル」。今後どのようにインクルーシブビジネスを起こし、SDGsに関する取り組みを加速させられるか、メンバー企業の視点が議論のベースとなる。
エシロールやマスターカードをはじめ、ロクシタンやスプラカフェ、ビッグシェフ、タークセル、ビィヴなど他の多くのメンバー企業からも報告がある予定だ。いずれもインクルーシブビジネスの先進企業で、革新的なモデルをうまく取り入れ、他社と連携することで、全世界の喫緊の環境課題や社会課題に対する解決策を模索している。
フォーラムでは、各社が示す展望に別の企業からもアイデアが寄せられるだろう。企業は、顧客や投資家、グローバルコミュニティが重視する社会や環境へのメリットをしっかりと形にしつつ、成長と発展の機会をとらえなければならない。その過程に注目していきたい。
この記事は、ビジネス行動要請(BCtA)代表代理のサバ・ソバーニ、BCtAコミュニケーション・リーダーのエイミー・ブラウン、BCtA副代表のナジラ・ヴァリが執筆したThe Guardianの記事であり、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。