エネルギー自給率が低い日本では、地球環境に配慮しつつ、安定して資源を確保することが大きな課題となっている。そんな中、持続可能なエネルギーの供給の視点において注目されているのがエネルギーミックスだ。

本記事では、エネルギーミックスが生まれた背景やメリット・デメリット、日本のエネルギー事情について解説する。

エネルギーミックスについて知ろう!

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エネルギーミックスとは何か、その内容や必要とされる理由について見ていこう。

エネルギーミックスとは

エネルギーミックスとは、電力を生み出すエネルギーをひとつの方法に依存するのではなく、石油、石炭、天然ガス、原子力、水力、太陽光などの異なるエネルギーを組み合わせて、バランスよく電力を供給することだ。

エネルギーミックスはベストミックスともいわれ、電源構成の最適化とも表現できる。

エネルギーミックスの「S+3E」とは

エネルギーミックスを考えるうえで重要なのが「S+3E」だ。SはSafetyの頭文字で、安全に電気を作ることが前提であることを示している。

3Eは、それぞれ、Energy Security(安定した電気の供給)、Economic EfficiencyまたはEconomy(電気の低コスト化)、Environment(環境への配慮)を表す。

エネルギー自給率の低い日本において電源構成を最適化するためには、S+3Eの調和を図れるような複数のエネルギーを取り入れることが重要とされる。

エネルギーミックスが重視される背景

エネルギーミックスが政策として打ち出されたきっかけは、1973年のオイルショックだ。同年のオイルショックは第4次中東戦争を発端としたもので、原油価格は数ヶ月のうちに急激に高騰した。

当時の日本は、石炭から石油にエネルギー源を移行している段階で、石油への依存度が高かったこともあり、原油価格の高騰により大きな影響を受けた。ガソリンなど石油関連製品の値上げによって物価は上昇し、資源不足への不安からトイレットペーパーや洗剤がスーパーの店頭から消える事態にもなった。

オイルショックは日本のエネルギー政策にも影響を与え、エネルギーミックスをはじめとした新たなエネルギー政策が打ち出されることになった。

2011年3月に起きた東日本大震災に起因する福島原発の事故も、エネルギー政策の転換に大きな影響を与えている。事故がもたらしたさまざまな影響が原子力発電を引き続き活用することに対する大きな懸念に発展し、全国の原子力発電所が運転を停止する事態になった。

原子力発電所はその後一部で再稼働となったが、政府は原子力発電に関わる第4次エネルギー基本計画・エネルギーミックスの方針として、原発依存の低減や安全優先の再稼働を掲げている。

以上のように、資源を利用するエネルギーの利用においては、さまざまな問題が発生する可能性を考えなくてはならない。不確実な将来に備えるためにも、エネルギーミックスが必要とされる。

電源別の特徴は?発電方法ごとのメリットとデメリット!

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エネルギーミックスでは、S+3Eを意識することが求められる。日本においてはどのような電力の組み合わせが考えられるのか、代表的な発電方法としての特徴を見ていこう。

原子力

原子力は主にウランを燃料とした発電方法で、ウランは世界に広く埋蔵されていることから、資源の安定供給のメリットがある。加えて、大量発電による安定供給や発電コストが低いことも特徴だ。発電時に二酸化炭素が発生しない点においても環境面でのメリットがある。

一方で、福島原発の事故にも見られるような安全面の確保や、使用済みの放射性廃棄物の処理が確立されていないなどの課題も残されている。

火力

火力は、24時間稼働できるほか、安定して大量に発電ができる方法だ。出力も調整しやすく、長年エネルギー供給源として利用されてきたことから燃料の運搬や貯蔵も確立されている。

ただし、燃料に使われる資源の量に不安があるほか、資源の供給や価格の変動に影響を受けやすい。発電時に二酸化炭素が多く排出される面も問題となっている。

再生可能エネルギー(風力・水力・太陽光など)

再生可能エネルギーとは、水力や風力、太陽光、地熱などの永続的に利用可能なエネルギー源のことを指す。いずれもエネルギー源が尽きることなく、将来にわたって継続的に利用できるのが特徴だ。環境にもやさしく、発電時に二酸化炭素を排出しないものも多々ある。

デメリットは、利用するエネルギー源によっては気候条件が大きく影響することだ。特に、太陽光や風力は気候条件や季節の影響を受けやすい。また、一部のエネルギー源は電力を得るために広大な土地を必要とすることも課題となっている。

なお、再生可能エネルギーの中でも水力や地熱は、エネルギー効率が良く安定供給がしやすい電力だ。ただし、水力発電は大規模な開発の余地が限られること、地熱発電は同じ地熱を活用する事業者同士の合意形成が難しいなどの問題もある。

再生可能エネルギーを含むクリーンエネルギーについては以下の記事でも解説している。あわせてご覧いただきたい。

>>「クリーンエネルギー」とは?具体的な種類と現状の課題を解説

エネルギーに関連して日本が抱える課題

エネルギーミックスは複数のエネルギーを組み合わせて最適化することと説明した。最適とは何かを考えるためには、日本の現状や課題についても知っておく必要があるだろう。

日本のエネルギーの問題としてまず挙げられるのが、国内のエネルギー源の自給率の低さだ。日本は多くの電力を消費しているにもかかわらず、電力の源である石油や天然ガスなどのエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っている。

パリ協定以降、世界的に脱炭素化が進められる中で、温室効果ガスの排出量が多い化石燃料の利用依存度を引き下げていけるかが課題だ。

しかしながら、温室効果ガスの排出が少ない再生可能エネルギーの割合は、ヨーロッパの先進国と比べると低いことも指摘されている。脱炭素化とエネルギーの安定供給などを両立させるには、再生可能エネルギーの大量導入に向けた発電コストの低減も大きな課題である。

エネルギーに関して日本が掲げている目標

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エネルギーの確保に関して、政府は今後どのような方向性を示しているのだろうか。ここでは日本が掲げているエネルギーに関する目標を紹介する。

2030年にエネルギーミックスを実現させる

2030年に向けて、政府の掲げるエネルギーミックスが実現した場合の目標として2013年度比での温室効果ガスの46%の削減(さらに50%削減)を目指している。 

実現のために掲げているのが、エネルギー自給率の引き上げだ。2013年には6%にまで下がったエネルギー自給率をおおむね30%にまで引き上げる方針である。

また、2030年のエネルギーミックスを実現するには電源構成も重要だ。2030年度においては、電源構成 の割合を、火力約41%(LNG火力20%程度、石炭火力19%程度、石油火力等2%)、原子力20~22%、再生可能エネルギー36~38%、水素・アンモニア1%として目標設定している。 

参考:エネルギー基本計画の概要|資源エネルギー庁

参考:2030年度におけるエネルギー需給の見通し|資源エネルギー庁

2050年にはカーボンニュートラルを実現させる

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を抑え、さらに吸収量を増やすことによって、全体的に温室効果ガスの排出をゼロにする取り組みのことである。2050年までに設定されている温室効果ガスの削減目標は80%の削減だ。 

2050年に向けた削減目標を達成するには、脱炭素化された電力の利用や再生可能エネルギーなどの活用、水素などの新たな選択肢の導入、炭素除去技術の利用などが求められる。

参考:新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?|資源エネルギー庁

適切なエネルギーミックスを実現するには

2030年のエネルギーミックスの実現には環境への配慮なども含まれることから、カーボンニュートラル実現との関連性も高い。具体的に、2030年のエネルギーミックスのためには、以下のような対策が求められている。

・第4のエネルギー源としての再生可能エネルギーの最大限の活用

・再生可能エネルギーのコスト低減と地域との共生の実現

・原子力の安全性向上と防災や放射性廃棄物処理への対応

・火力発電の低炭素化と国内資源の有効活用 など

現時点で、利用比率の高い火力発電については、当面は再生可能エネルギーの不安定さを補う主力の供給源として利用しつつ、比率を引き下げていくことが重要となる。

まとめ

カーボンニュートラルの実現などに関して、エネルギーミックスは深く関わっている。今後のエネルギーの動向について理解を深めるには、エネルギーミックスの概念や政府の目標について理解を深めていくことが大切である。