カナダのトロントに拠点を置くHydrostor社。2010年に設立された同社は、高度圧縮空気エネルギー貯蔵(A-CAES)技術を独自に開発した先進企業だ。圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)は、従来のリチウムイオン蓄電池を使った貯蔵技術とは違い、その名の通り「圧縮空気」を使うのが特徴だ。A-CAESでは、エネルギーをクリーンで信頼性の高い電力網に移行することができる。同社の実用規模の蓄電システムでは、オフピーク時に、大量の空気を小さな地下貯槽に送り込む。その後、エネルギー需要が高くなるピーク時にその空気を解放してタービンを回している。

How A-CAES Works

Hydrostor社のA-CAESシステムは、天然ガス施設などで使われている他の回転発電装置とよく似ている。しかし、調達・製造~使用~廃棄の段階をトータルした「ライフサイクルコスト」の観点から見ると、A-CAESは競合する技術よりも優れている。最大のメリットは、 A-CAESでは燃料や化学物質を使わず、排出物も出さない点だろう。A-CAESの寿命は50年以上。その上、大規模かつ長時間の蓄電(100MW以上)システムの中では、キロワット時(kWh)当たりの設置コストが最も安い。しかも4時間から24時間以上の蓄電ができるのだ。

Agnas Zinc Mine before construction of Hydrostor A-CAES Project.

システムの仕組み

A-CAESでは、基本的には、オフピーク電力や、電力網や再生可能エネルギー源から得る余剰電力を使ってコンプレッサーを稼働し、加熱圧縮空気を作り出す。次にHydrostor社が特許を取得した燃料を使わない断熱工程で熱を抽出し、その熱を独自の蓄熱槽に貯蔵する。空気の貯蔵には専用の空洞も利用している。静水圧を補償する装置により、稼働中は、システムの圧力が一定に維持される。電気が必要になると、静水圧が空気を表面に押しやり、そこで空気が熱と再び混ざり合って膨張し、タービンを通って電気を生み出す。

Angas A-CAES Project Above Ground Infrastructure 3D Model

こう聞くと非常に単純な仕組みに聞こえる。一体、A-CAESのどこがすごいのだろうか?それは、Hydrostor社が石炭火力発電所や古い鉱山を、実用規模のエネルギー貯蔵施設として再活用する方法を見出した点にある。古い施設には送電網につながるインフラがすでにあるので、コストや時間を大幅に削減できるのだ。

同社はオーストラリアで3000万豪ドルの契約を締結。アデレードの南東60kmにあるストラタルビンのアンガス亜鉛鉱山を再利用し5MW/10MWh規模の、燃料要らずの高度圧縮空気エネルギー貯蔵(A-CAES)施設を建設する予定だ。

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