動植物由来の有機物を燃やして発電するバイオマス発電は、化石燃料を使わないクリーンな発電方法のひとつだ。地球温暖化防止や循環型社会の構築など多くのメリットがあり、日本でも積極的に取り組まれているバイオマス発電について、ポイントを確認しておこう。

バイオマス発電とは

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バイオマス発電とは、動植物から生まれた有機性の生物資源であるバイオマスを燃やして発電を行うことだ。大きく分けて、バイオマスを直接燃やす方法とガス化して燃焼させる方法の2種類がある。

化石燃料を使わないバイオマス発電は、温室効果ガスを増やさないカーボンニュートラルな発電方法だ。  バイオマスの燃焼により二酸化炭素が発生するものの、その排出量は火力発電に比べて少なく、自生している植物が吸収できる程度である。

再生可能エネルギーに該当するバイオマスによる発電の形態は、次の3種類だ。

木質バイオマス発電 端材や木質のチップなどをそのまま燃やして発電する
バイオガス発電 家畜排泄物、食品廃棄物、その他の有機物などを発酵処理して分離したバイオガスを燃やして発電する
バイオ熱量発電 木材から熱分解ガスを発生させ、これを燃やして発電する

特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所によると、2021年のバイオマス発電量は、全体の4.1%にとどまっている。前年の3.2%と比べれば0.9ポイント増加しているが、さらなる普及が望まれる。

出典:「2021年の自然エネルギー電力の割合」(特定非営利活動法人環境エネルギー政策研究所)

注目される背景

バイオマス発電が日本で注目されることとなった大きなきっかけは、2002年6月に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」が閣議決定され、バイオマス利用促進が始まったことだ。

バイオマス発電は、地球温暖化防止や循環型社会の形成に加えて、農林漁業・農山漁村の再活性化、戦略的産業の育成への有効な対策としても効果的である。どのようなメリットがあるのか、詳しくは「バイオマス発電を行うメリット」で解説する。

SDGsとの関係性

バイオマス発電は、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の達成に貢献する。

二酸化炭素の総量に影響しないカーボンニュートラルなバイオマス発電は、地球温暖化対策の効果が期待できるからだ。また、廃棄物の再利用・減少につながることから、循環型社会構築や地球環境の改善に貢献することができるだろう。

バイオマス発電を行うメリット

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バイオマス発電を行うことの代表的なメリットは、次の5つだ。

◆バイオマス発電を行うメリット

・二酸化炭素の排出量を削減できる

・安定した発電量が見込める

・循環型社会の構築に貢献できる

・地域の活性化につなげられる

・焼却時の排熱利用ができる

バイオマス発電がどのような恩恵をもたらすのか、以下で説明する。

CO2(二酸化炭素)の排出量を削減できる

バイオマス発電はカーボンニュートラルな発電方法であるため、CO2(二酸化炭素)の排出量を削減することができる。

カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を差し引きしてゼロであればCO2が排出されていないとする考え方だ。バイオマス資源は光合成によりCO2を吸収して成長するため、これを燃焼させて行うバイオマス発電のCO2の排出量はゼロと考えられている。

安定した発電量が見込める

自然環境に左右されずに安定した発電量が見込めることも、バイオマス発電のメリットだ。

同じ再生可能エネルギーの太陽光発電や風力発電は、発電量が天候に大きく左右されるため、安定しないのが難点だ。

バイオマス発電は、燃焼させるバイオマスさえ確保しておけば安定して発電できるので、ベースロード電源として活用されることが期待できる。

循環型社会の構築に貢献できる

バイオマス発電で、ごみとして廃棄される生物資源を再利用すると、廃棄物の発生を抑制することにつながる。これによって循環型社会の構築に寄与することが可能だ。

なお循環型社会とは、限りある資源を有効活用するために、すぐに廃棄してしまうのではなく再利用できるものは再利用し、資源を循環させられる社会を意味する。

持続可能な社会を実現するうえで、循環型社会の構築は欠かせないため、大きなメリットといえるだろう。

地域の活性化につなげられる

バイオマス発電には、エネルギーの地産地消効果が期待できることから、地域の活性化につなげられるというメリットもある。

農産漁村には、端材や家畜排泄物・水産加工残滓・その他の有機物といったバイオマス発電に必要となるバイオマスが豊富に存在している。

このような有機物を廃棄物とせず、資源として活用できる仕組みを各地域に作ることができれば、新たな所得が生まれ地域活性化の実現につながるのだ。

焼却時の排熱利用ができる

バイオマス発電では、バイオマス燃料の焼却時に熱が発生する。この排熱を利用しエネルギー効率を向上させることができるという点も、バイオマス発電のメリットだ。

例えば、排熱を利用してお湯を作り、温泉施設や温水プールなどを運営することができる。農作物の栽培時の温度管理や、近接する施設の暖房などにも利用できるだろう。

このように、バイオマス発電は、排熱を有効利用することでコストパフォーマンスを向上させられ、周辺地域の利便性を高めることができるのだ。

バイオマス発電にまつわる課題

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バイオマス発電には、多くのメリットがある一方で、次のような課題もある。

◆バイオマス発電にまつわる課題

・大規模施設やスペース確保が難しい

・多くのコストがかかる

どういうことなのか、もう少し詳しく見ていこう。

大規模施設やスペース確保が難しい

バイオマス発電に必要なバイオマス資源は広い地域に分散しているため、小規模分散型の設備が必要になり、大規模施設の設置が難しい課題がある。

例えば、木質バイオマス発電に欠かせない端材や建設廃材などは、1か所で大量に集められるものではない。各地域の産業で得られたり、解体する都度、少量ずつ発生したりするからだ。広範囲から大量に集めてこようとすれば、今度は、運搬費がかさんでしまうだろう。

運搬コストをできるだけ抑えるには、小規模施設にせざるを得ない。しかし、そうなると、大規模な発電ができず施設の運営効率が悪くなってしまうというのが、バイオマス発電の悩ましいところだ。

多くのコストがかかる

バイオマス発電は、ほかの発電方法に比べてコストがかさむ課題がある。

燃料となる資源を安定して調達するためには、収集・運搬・管理に高い費用がかかるからだ。特に、木質バイオマス発電ではコストが高くなる傾向にある。運搬コストに加えて、燃料となる端材や木質チップなどを安定して発電できるように加工する際にもコストがかさむからだ。

バイオマス発電に取り組む企業事例

クリーンなバイオマス発電に取り組む企業は、日本にも多い。ここでは、イーレックス株式会社・株式会社レノバ・東京ガス株式会社の事例を紹介する。

イーレックス株式会社

発電・燃料・小売りなど幅広く電力事業を展開するイーレックス株式会社は、バイオマス発電事業に力を入れている企業だ。

現在、5基のバイオマス発電所を運転しており、今後はさらに2基の建設を予定しているなど、脱炭素社会の実現に大きく貢献している。また、FIT制度から自立した日本初の大型バイオマス発電所の建設を計画しており、その動向には今後も目が離せない。

株式会社レノバ

株式会社レノバは、再生可能エネルギーの発電所を開発・運営している企業だ。

同社では、循環型社会の実現に貢献するために、バイオマス発電で生じた廃棄物の適切な処理と、最大限のリサイクルに取り組んでいるのが特徴だ。例えば、木質バイオマス発電で生じた灰を、セメントや道路の基礎材として再利用している。

東京ガス株式会社

東京を中心に事業を展開する大手ガス会社の東京ガス株式会社は、複数のビジネスパートナーと連携し、バイオマス発電事業に取り組む企業だ。

2020年9月には、伏木万葉埠頭バイオマス発電所と市原八幡埠頭バイオマス発電所を単独で取得するなど、再生可能エネルギーの普及に向けた事業を積極的に推進している。

まとめ

廃棄される有機物を燃料として再利用するバイオマス発電は、持続可能な社会を作るうえで重要な取り組みのひとつだ。カーボンニュートラルで安定した発電ができ、地域活性化なども期待できるため、普及が望まれる。私たちも電力会社を選ぶ際に、バイオマス発電を行う企業を選ぶことで、その普及を後押しできることを覚えておこう。