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貧困を撲滅し、地球を守り、平和と繁栄を促進する行動を求める世界的な呼びかけ「持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、あらゆる人が行動を起こすだけでなく、あらゆる技術をも結集する必要がある。モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)は、現代における重要な環境的・社会的課題に取り組む上ですでに重要な役割を果たしており、かつては不可能と思われていた方法が、これら技術の応用で可能となり、さらなるソリューションの手助けになると考えられている。これから紹介する3社は、こうした視点で重要なプレーヤーになりうる社会的企業で、各社の代表は最近ニューヨークで開催されたビジネス行動要請(Business Call to Action:BCtA)の年次フォーラムで講演をしている。

Sevamob

Sevamobはインドの社会的企業であり、インド、南アフリカ、米国ジョージア州など世界100ヵ所以上でプライマリヘルスケアのサービスを提供する。Sevamobの「ポップアップ」クリニックは、農村部や医療サービスが行き届いていないコミュニティに住む何百万人もの貧困層にサービスを届けることができる。同社が他の企業と一線を画している点は、AIを使って、カンジダ症のような軽度皮膚感染症やビタミン欠乏症から、緑内障やマラリアなどの深刻な疾患まで、様々な病気をその場で発見しているところにある。

医療サービスが十分に行き渡っていない地域における大きな問題は、医療費の支払いが困難であることだけでなく、眼科医や皮膚科医などの専門医を見つけることが難しいケースが多いことに加え、検査用検体を遠方の検査室に送る必要があるために費用がかさみ、治療開始が遅れることだ。

Sevamobのテクノロジーは、AIの一種である機械学習を利用して、視力検査、皮膚検査、血液検査(まもなく尿検査も導入予定)の結果から、症状の緊急度を評価し、パターンを検出し、様々な数値を計測する。機械学習によって、データが入力されるたびに「学習」して、精度が向上するのだ。例えば、血液検体があれば、看護師が顕微鏡とスマートフォンアプリを使って貧血やマラリアを即座に診断が可能。Sevamobの創設者でありCEOのシェリー・サクセナによると、同社のモデルを使えば、血液だけで50種類以上の異なる疾患を検出できる可能性があるという。

「私たちが開発したのは基盤となるプラットフォームであり、将来的にはいくらでも検出できる疾患は増やすことができるでしょう。プラットフォームを拡張するには、より多くの患者データを収集し、そのデータのモデルを構築するだけでよいのですから」とサクセナは述べる。

aWhere

米国を拠点とするaWhereも、Sevamobと同様、先進的な技術を使って多くの人々にサービスを提供している。ただし、aWhereはサービス向上のために顧客からデータを収集するのではなく、顧客に有益なデータを配信している。

aWhereは、AIに基づく予測、独自のアルゴリズム、高度な分析技術を利用して、アフリカやアジアの小規模農家が抱える最大の課題のひとつ「予測不可能性」への対処を支援している。

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気候変動に伴い、気象パターンの予測はますます困難になり、気温の変動も激しくなっている。農業に従事しない人たちは、こういった極端な異常気象の増加により、気候変動を実感する。しかし小規模農家にとっては、夜ごとに気温が上昇して害虫や病気が繁殖するという農業の現場以外ではほとんど気づかれないことが致命的な事象になりえるのだ、とaWhereのCEOであり共同創設者のジョン・コーベットは述べる。こうした大気のわずかな変化だけで、作物を壊滅させるのには十分なのだ。

aWhereは、農家が予測不可能な気候の変化をうまく切り抜けるのに役立つ極めて正確な天気予報などの情報を提供している。

しかし、Sevamobとは異なり、aWhereのビジネスモデルは底辺(base of the pyramid: BOP)層の農家を対象としたサービスに限ってはいない。同社は小規模なスタートアップ企業ではなくグローバル企業であり、その顧客は生産者や卸業者から政治家まで様々。このように幅広い顧客層を持つことで、aWhereはその使命を維持しながら事業を継続し、成長を続けているのだ。

Envirofit International

エネルギー企業のEnvirofitは、BOP層向けサービスとして、IoT技術を利用した調理用ガスの少量販売を行っている。

Envirofitは、今も薪や木炭を燃料としている家庭向けに、よりクリーンなエネルギーソリューションを設計、開発。同社の最新のイノベーションは、1回わずか50セントの都度払いで利用できる調理用ガスSmartGasだ。

「新興市場の消費者の購入行動から、彼らは1日分ずつを少量購入していることが分かります」と同社の広報担当ディレクター、ジェシカ・アルダーマンは述べる。「シャンプーを桶一杯買う人はいません。使い切りの小分け袋で買うのです」

アルダーマンによると、テクノロジーだけでなく、それに付随するサービスモデルが同社のイノベーションという。Envirofitは顧客の家にスマートメーターを設置し、最初のガスボンベを配達する。その過程で、同社の担当者が顧客に安全な使い方を教え、顧客は携帯電話のアプリを使って、必要に応じてクレジットを追加、クレジットがなくなるまでメーターからガスが供給される。その後、再度支払いがなされるまでメーターはシステムを停止するが、ガスボンベが空になる前に警告が送信されるため、顧客は新しいボンベを注文できる仕組みだ。

「お客様にとって、『当社のスマートテクノロジー』は、ガスを安全、安心、低コストで使っていただけるようになるという点に大きなインパクトがあります」とアルダーマンは述べる。「しかし、これはお客様だけでなく、お金がどこに流れているかを知りたい投資家の皆さんにとっても画期的な技術なのです」

スマートメーターとスマートフォンアプリでガス使用量を追跡できるため、業界で初めて、各戸調査をしなくても、ガス調理の利用状況を簡単に測定できるようになったとアルダーマンは述べる。

インパクトの測定は、社会的・環境的課題に対する成果と財務リターンの両方に関心を持つ投資家の間でますます重視されてきている。そのため、測定ツールを提供することで投資を奨励するというやり方は、先進技術がSDGs達成に向けたレースを加速させうる新たな方法と言えるだろう。

出典: equities.com

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