オランダのビール醸造会社ハイネケンは、缶飲料のマルチパックの梱包材として、環境に優しいボール紙を使うことを決めた。これまで大量に使ってきたプラスチック製の使い捨てパックリングやビニール包装に代わるものだ。
同社は2200万ポンドをかけて、新技術を開発し、英国に工場を整備した。ハイネケンやフォスターズなどの人気ブランドを対象に2020年4月から切り替えを進める。
パックリングの素材となるボール紙は、リサイクルが可能で、マルチパックの重さに耐えられる強度を持つ。同社が英国で販売する製品を対象に切り替えを行えば、2021年末までに計517トンの梱包用プラスチックを削減できることになる。
第一弾として、まずはハイネケン、フォスターズ、クローネンブルグ1664で新素材を導入する。その後2021年末までに、ストロングボウ、ブルマーズ、レッドストライプ、ジョン・スミスを含む全マルチパック製品に対象を広げていく。
業界では「ハイコーン」や「ヨーク」とも呼ばれるプラスチック製のパックリングは、ビールをはじめとする缶飲料を束ねて梱包するためのものだ。50年以上、広く使われてきたが、海洋プラスチック汚染の深刻化につながり、海洋生物にとって大きな脅威となっている。
同社は世界190カ国で事業を展開するが、新梱包材の導入は英国が初となる。英国で同社が生産する缶製品は、全ブランドで年間5億3000万本に上る。そのうちフォスターズが1億5000万本、ハイネケンが3950万本を占める。
ハイネケンUKのマーケティングディレクター(取材当時)であるシンディ・テルボートは、「これはお客様の声に応えるための取り組みです。3年かけて開発に取り組み、試行錯誤を重ねてきました」と話す。
BBC Oneのドキュメンタリー番組「ブルー・プラネットⅡ」で海洋ごみの問題が取り上げられて以来、プラスチック製の容器包装への一般市民の反感が高まった。それに伴い、メーカーやスーパーマーケットは対応を進めてきた。
英NPOの海洋保全協会の広報担当者は、次のように語っている。「(ハイネケンによる)この進歩は、ビーチや海のプラスチック削減にもつながる興味深い取り組みです。こうしたパックリングは、ビーチクリーンの時によく見つかります」
代替素材の開発に取り組んできたデンマークのビール醸造会社カールスバーグは2018年、プラスチック製のリングの代わりに、リサイクルできる接着剤を用いる計画を発表した。また英国の酒造会社ディアジオは、ギネス、ハープ、ロックショア、スミジックスといった自社ビールブランドのマルチパックで、プラスチックを使った梱包を廃止。ボール紙への切り替えを始めた。
バドワイザーで有名な米国のビール製造会社アンハイザー・ブッシュは2019年9月、英国で生産しているすべての自社ビールブランドで、2020年末までにプラスチック製使い捨てパックリングを廃止すると発表した。ステラ・アルトワ、バドワイザー、バドライトといった人気ブランドも対象となる。
ハイネケンによると、環境に優しい梱包材の導入で、缶飲料のマルチパックの生産に伴うCO2の排出量を3分の1減らせるということだ。
この記事は、The Guardianの消費者関連ニュース担当特派員レベッカ・スミサーズが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。