最近の調査によると、英国の家庭や企業に供給される電力に占める再生可能エネルギーの発電量が、直近の四半期に初めて化石燃料による発電量を上回った。

再生可能エネルギーと化石燃料の発電量が逆転したのは、2019年第3四半期のこと。エネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は40%に拡大した。
英国で、風力、太陽光、再生可能バイオマスによる発電量が化石燃料の発電量を上回ったのは、1882年に同国初となる発電所が稼働を開始してから初めてとなる。

英国の電力・ガス会社は、2019年中に、産業革命以降初めて、再生可能エネルギー発電や原子力発電などによるゼロカーボン(炭素排出ゼロ)の電力が、ガスや石炭火力の発電量を追い越すと予測していた。その予測どおりの金字塔が打ち立てられた形だ。

英国のエネルギー転換の重要な局面で、同国の全発電量の39%を占める化石燃料を再生可能エネルギーが抜く追い風となったのが、今年相次いで新設された洋上風力発電所だ。

わずか10年ほど前には、ガスや石炭などの化石燃料が同国の電力の5分の4を占めていた。しかし、英国の気候科学ウェブサイトCarbon Briefの最新の分析によると、現在、石炭火力発電が全発電量に占める割合は1%未満だという。

英国は2025年までに石炭火力発電を廃止する方針を打ち出しているが、実際には目標よりも速いペースで進んでいる。2020年の春の時点で残る発電所は4ヵ所。ノッティンガムシャーにあるウェスト・バートンA発電所とラットクリフ・オン・ソアー発電所、北アイルランドのキルルート発電所、ノース・ヨークシャーのドラックス社にある2基の発電ユニットのみとなる見通しだ。これらの発電所は、ガス火力発電所に転用する目的で残されている。

電源構成における化石燃料の割合は減り続けているが、前述の調査の報告によると、その大半を占めるのがガス火力発電で、全発電量の38%だった。直近の同四半期における原子力発電の割合は、全発電量の5分の1をわずかに下回った。

英国最大の再生可能エネルギー源は風力だ。近年、大規模な風力発電所が次々と稼働を始め、今では同国の全発電量の20%を占めている。再生可能バイオマスによる発電が12%、太陽光発電が6%と続く。

世界最大規模の洋上風力発電所プロジェクト「ホーンシー・ワン」が、2019年2月にノーフォーク沖で動き始め、10月にはピーク容量が1,200メガワットに達した。それに続き夏には、スコットランド北東沖にベアトリス洋上風力発電所ができている。

これらの計画をすべて合わせると、2018年に家庭への電力供給を始めた当初の洋上発電容量2,100メガワットの倍近くになる。

エネルギー担当閣外相のクワシ・クワーテングは、「私たちは、2050年までに気候変動をもたらす全ての活動に終止符を打とうと取り組みを進めています。今回の記録がまた一つの節目となりました」と話す。

「私たちはすでに排出量を40%削減しました。同時に、1990年以降、英国の経済は1.7倍近く成長しています。現在も多くの洋上風力発電プロジェクトが、過去と比べて最も低い投資コストで進行中です。今後さらにペースを上げて、計画を推し進めていきます」

英国の再生可能エネルギー事業者団体Renewable UKのルーク・クラークは、2030年までに洋上風力発電の規模を3倍にし、その比率が国全体の発電量の3分の1を超えるようにしたいと話す。

労働党の環境政策「緑の産業革命」では、洋上風力発電容量を10年で5倍にする計画だ。巨大な洋上風力発電設備を新たに37基設置し、70,000の雇用創出を見込む。

Renewable UKによると、再生可能エネルギー発電の拡大は、環境に良いだけでなく、電気代の引き下げにもつながるという。ここ数年で、風力・太陽光発電技術のコストが劇的に下がったためだ。

「例えば、新しい洋上風力発電プロジェクトにかかるコストは、これまでになく低くなっています。陸上・洋上風力は、私たちにとって今や最もコストが低く、大規模な電力源です」とクラークは言う。

次世代の洋上風力発電施設では、発電量メガワット時当たりのコストは約40ポンド(6,000円弱)になると見込まれている。エネルギー取引市場における電力の平均価格を下回る額だ。

クラークはこう付け加える。「もし政府が、洋上風力と同じように、陸上風力発電や海洋再生可能エネルギー発電などさまざまな技術の支援に乗り出せば、消費者も企業も、低炭素経済に移行するメリットを十分受けられるようになるでしょう」

 

この記事は、The Guardianのジリアン・アンブローズが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。