再生可能エネルギーの専業事業者として2012年1月に創業したリニューアブル・ジャパン。土地開発、金融、技術の3輪のビジネスモデルで、変化の時代に成長を続けてきた。2018年7月には、岩手県一関市に営農型メガソーラー発電所が完成。全国各地に10カ所の事業所を構え、再エネによる地域活性化にも積極的に取り組む。

金融ノウハウで再エネを広げ、地域を元気に

2012年1月に創業し今年で7年になるリニューアブル・ジャパン。創業者で社長の眞邉勝仁氏は、「創業のきっかけは、2011年の東日本大震災でした」と話す。

もともと、金融業界出身の眞邉氏。当時、海外の再生可能エネルギー事業に携わっており、被災地に太陽光で稼働する浄水設備を届けたのが、リニューアブル・ジャパン誕生のきっかけとなった。

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リニューアブル・ジャパン 代表取締役社長
眞邉勝仁氏

「金融の力を使い、太陽光や風力のプロジェクトを実現しようと考えました。海外では、プロジェクトファイナンスで太陽光や風力の資金調達をしていることは知っていました。FITがスタートすれば、証券化のマーケットが必ず来ると確信しており、そのお手伝いをしようと思ったのです。再生可能エネルギーと金融の架け橋になることで、震災復興に貢献したいと、独立を決めました」(眞邉氏)。

再生可能エネルギーの専門事業者としてリニューアブル・ジャパンが掲げるミッションは3つ。

1つ目は「クオリティの高い発電所をつくり安全に運営すること」。プロジェクトファイナンスの場合、資金の8割は金融機関が拠出する。「金融機関に認められるような発電所、かつ、地図に残る発電所をつくる。特に造成された土地は日本の宝だと思っていますので、20年を超えて長く使えるクオリティの高い発電所をつくり、安全に運用することが重要です」(眞邉氏)。

2つ目が「金融のノウハウを生かし、再生可能エネルギーを広げること」。高度な金融ノウハウを活用し、環境債や上場インフラファンドなど、投資家ニーズに合致した金融商品をつくり、投資機会を提供していく。

そして3つ目が「再生可能エネルギーで地域社会を元気にすること」。震災復興を目指した創業の歴史から、地域貢献は同社の使命。「発電所を開発する地域で税金を納めたり、雇用を創出するのは当然。プラスα、何かできないかと常に考えています。地元企業との協業、東京での物産展のお手伝い、エネルギーの勉強会など、地域の方々と対話しながら、ニーズに合ったカタチでさまざまな取り組みをしています」(眞邉氏)。

たとえば、発電所の開発をおこなった鹿児島県垂水市では、市から業務委託を受け、特産品の販路拡大支援事業をおこなっている。カンパチの養殖で有名な同市に首都圏の飲食店関係者を招き、養殖場などを視察するものだ。

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カンパチの養殖で有名な垂水市へ首都圏の飲食店関係者が生産者を訪問する「垂水シェフツアー」を実施

プロジェクトファイナンスで営農型発電事業を実現

全国各地に40の発電所を持つリニューアブル・ジャパン。「発電所の管理は地域で行うのが、我々の方針です。現在、10の地域事務所を持ちますが、2019年には15に増やします」(眞邉氏)。

こうした地域とのコミットメントがあることで実現したのが、岩手県一関市での営農型発電所。資金調達が困難とされる営農型発電において、東北銀行からプロジェクトファイナンスの手法による融資を受け、2018年7月に完成した。

同発電所は、再生可能エネルギーを積極的に導入する一関市、藤沢農業振興公社、営農者、地権者、関係各社との協議を経て実現した。発電所を設置した農地では、麦の栽培と太陽光発電を両立。発電事業収入の一部を20年間にわたり営農支援費用にあてることで、地域創生に貢献する。

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岩手県一関市に開設した営農型大規模太陽光発電所。2018年11月より麦を栽培

リニューアブル・ジャパン 執行役員投資管理部長の原尚美氏は「正直、資金調達には大変苦労しました。最終的に東北銀行様から『地域の金融機関として参画する』という意志決定をいただき、プロジェクト実現に至りました。東北銀行様がリスクを整理して踏み込んでくださったことはありがたいですし、全国的に見ても、画期的なプロジェクトになったと思います」と話す。

太陽光発電にとって、日当たりが良く平らな土地である農地はポテンシャルが高い。一方で、人口が減少する地方では、農業のなり手がなく、農地として利用されないまま放置されている土地が多くある。営農型発電は、太陽光発電の拡大と農業再構築の両面で、解決策のひとつとなり得る。

「営農型発電の相談を受ける場合、営農の継続に懸念がある案件が多数です。そもそも営農の主体がないところからのスタートとなるため、当社では営農の仕組みをゼロから再構築する部分も引き受けています。太陽光だけでなく、農業の部分のビジネス構築も含め、地域創生ができる仕組みづくりに、今後も積極的に取り組んでいきます」(原氏)。

インフラ事業者としての覚悟

同社は2023年までに、自社開発1ギガ、ほかの物件1ギガで計2ギガの太陽光発電所を金融商品として持つことを当面の目標として掲げる。

2017年3月には子会社である日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が上場。8月には、東急不動産と再生可能エネルギー事業領域において資本提携し、新たなファンドも構築している。発電所の出口、資金を再調達できる仕組みはできあがっている。「デベロッパーで金融を出口とし、自社で技術を持っている。開発、金融、技術の3輪のモデルは海外のデベロッパーでは普通です。当社は、デベロッパーですが、金融と技術に支えられています」(眞邉氏)。

FIT価格は下がり、国内における再生可能エネルギーの事業環境は容易とはいえない。しかし、エネルギー事業を行う者には、インフラとしての電気を当たり前に供給し続ける義務がある。そこには、FITや事業環境に左右されない、インフラ事業者としての覚悟がある。

「CSRは経営である」との信念を持つ同社は、事業のなかに地域との協働・地域への貢献の視点がある。太陽光発電事業者は地域に欠かせないインフラ事業者であり、地域の持続的な発展、すなわちサステナビリティに貢献すべきであるとの認識も持つ。

市場は日本だけではなく、世界にも大きく広がっている。「日本のクオリティ、技術、フィロソフィーを世界へも輸出していきたい」(眞邉氏)。人々が使う電気を環境に優しいモノに変えていく。日本の再生可能エネルギーを引っ張り、この分野で日本が世界でリーダーシップを取っていけるようにすること。これが、リニューアブル・ジャパンの大きな使命だ。

この記事は、環境ビジネスオンライン2019年02月12日号掲載より、アマナデザインのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。