ごみ問題とは、不法投棄による環境汚染や、ごみ処理場の新増設に対する近隣住民の反対、焼却・埋め立てが追い付かない問題の総称を指す。現在、世界中で深刻化しており、日本でも問題視されている。しかし、現状を正しく把握できていない方も多いのではないだろうか。
今回は、ごみ問題に向き合う上で必須の知識となる、日本と世界のごみ問題の現状・影響・解決に向けた取り組みなどを紹介する。
日本と世界のごみ問題の現状
まずは、日本と世界のごみ排出量の現状を以下に示す。
日本と世界の1年間のごみ排出量 | |
日本のごみ総排出量 | 4,167万 トン(2022年調査) |
世界194ヶ国のごみ量 | 約21億トン(2019年調査) |
出典:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)」
出典:増大する廃棄物危機を煽っている国の米国のトップリスト|メープルクロフト (maplecroft.com)
単純計算をすると、世界194ヶ国が排出するごみ量のうち約0.2%を日本が占めている。ここからは、ごみの排出や処理に関する日本と世界の現状を詳しく紹介していく。
日本の現状
現在、日本国民1人につき、1日に約1キロのごみを排出しているといわれている。環境省による最新の報道発表によると、令和2年度の日本のごみ総排出量は4,167万トン、1人1日当たりのごみ排出量は901グラムという結果だった。
前年度と比べると、ごみ総排出量は2.5 % 減少し、1人1日当たりのごみ排出量は1.9 % 減と、ごみ排出量は減少傾向にあることが分かる。
また、ごみ処理時のリサイクル率は20.0%となっており、前年度の19.6%と比べると改善している。しかし、最終処分場である埋立地の容量には限度があることを考えると、より一層のごみの総量を減らす必要がある。
世界の現状
世界のごみ排出量や対策状況は、国によって大きく異なる。Verisk Maplecroftの調査によると、世界194ヶ国で毎年排出されるごみの量は約21億トンで、ごみ処理時のリサイクル率はわずか16%、3億2300万トンにとどまった。
G20諸国のうち、もっともごみ排出量が多いのは中国で、次がインド、そしてアメリカだ。ごみの排出量は人口に比例していることが分かるが、アメリカの人口はインドの4分の1程度であるにも関わらず、ごみの排出量は同程度である。アメリカは、ひとり当たりのごみの排出量が、世界と比べても突出しているのだ。なお、日本は8番目に排出量が多い国である。
このような状況を踏まえ、中国では専門の対策組織や法律を整備し対策を行っている。また、アメリカのサンフランシスコでは、従来の3Rに加えて、生ごみの堆肥化を推進する施策を行っているのが特徴的だ。
ごみ問題によって生じる影響
ごみが増えることが問題視されるのは、次の深刻な影響が考えられるためだ。
◆ごみ問題によって生じる主な影響
・廃棄物処理にともなう温室効果ガスの排出
・埋立地の不足 ・海洋プラスチック問題 |
廃棄物処理にともなう温室効果ガスの排出
ごみが増えることで、廃棄物処理にともなう温室効果ガスの排出が増加する。温室効果ガスとは、文字どおり地球温暖化の一因となるもので、二酸化炭素が代表例だ。ごみ処理を行うとき、多くの場合は焼却処分するが、このときに温室効果ガスが発生する。
環境省の報告によると、2018年度の廃棄物分野の温室効果ガス排出量は、3,782万トンにも及ぶ。SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の目標達成に向け、大幅な温室効果ガス削減が求められる中、その発生原因となるごみの減量は急務だ。
埋立地の不足
埋立地の不足も、ごみが増えることによる大きな弊害の1つだ。
環境省によると、令和2年時点での最終処分場(埋立地)の状況は、以下のとおり予断を許さない状態になっている。
令和2年時点での最終処分場(埋立地)の状況 | |
残余容量 | 9,984万㎥ |
残余年数 | 22.4 年 |
出典:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和2年度)について | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)」
残余年数とは、今ある最終処分場がいっぱいになるまでの残りの年数を推計した数値だ。推計ではあるが、このままごみが減らないと、22年後には焼却灰や不燃ごみが埋められず溢れかえる危険性を示している。
海洋プラスチック問題
ごみ問題によって生じる影響として、近年深刻化しているのが、海洋プラスチック問題だ。
ごみに多く含まれるプラスチックは、自然界で分解されるまでに、長ければ数百年もかかる。そのため、プラスチックごみが海に流れ込むと、海の生態系に悪影響を及ぼすのだ。
具体的には、プラスチックが海洋生物に絡まったり、海洋生物が有害物質を含むマイクロプラスチックを食べたりすることが、生態系の破壊や海産物の汚染につながっている。
海洋プラスチック問題の現状と「私たちにできること」については、下記の記事で詳しく紹介している。
ごみ問題解決に向けた国の取り組み
多岐にわたる悪影響が考えられるごみ問題の解決に向け、日本では次のような取り組みが行われている。
◆ごみ問題解決に向けた主な国の取り組み
・循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行
・バイオプラスチックの普及促進 |
それぞれの取り組みについて、下記で詳しく紹介していく。
循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行
ごみ問題対策として、近年、政府が積極的に推進しているのが、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行だ。
循環経済とは、廃棄を前提とせず、資源としての再利用を前提とした経済活動のあり方を意味する。
従来、製品は使い終わったら廃棄して、再び製品をつくるときは新たな資源を投入していた。一方、循環経済では、使用済み製品を最大限資源として再利用する。
使用済みペットボトルを回収し、新たなペットボトルの原料に再利用する「ボトルtoボトル」も、循環経済のビジネスモデルの1つだ。
ごみが増える原因である、大量生産と大量消費を効果的に抑制できる。
バイオプラスチックの普及促進
バイオマスプラスチックや、生分解性プラスチックといった、バイオプラスチックの普及促進も、重要なごみ問題対策の取り組みの1つだ。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックとは、植物をはじめとするバイオマス素材からつくられたプラスチックだ。焼却処分しても、二酸化炭素の総量を増やさないカーボン・ニュートラルとして注目されている。
バイオマスプラスチックの原材料に使用される植物は、二酸化炭素を吸収しながら成長する。そのため、焼却処分によって二酸化炭素が発生しても、全体的な総量は増加しないのだ。このことをカーボン・ニュートラルという。
廃棄物処理にともなう温室効果ガスの排出の抑制にも効果的だ。
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックとは、自然環境でも速やかに分解する特徴を備えたプラスチックだ。通常のプラスチックと同様に使用でき、使用後は微生物の働きで水と二酸化炭素に分解 され、自然界に戻っていく。近年は、ごみ袋やティーバックなどにも活用されている。
分解が早いため、ごみ問題の影響の中でも、主に海洋プラスチック問題の解決に効果的である。
ごみ問題に対して私たちができること
ごみ問題の解決には、国や企業だけでなく、私たちの取り組みも欠かせない。ここでは、ごみを減らすためにできるアイデアを、リデュース・リユース・リサイクルの3つの視点から紹介する。できることから、ぜひ実践してみて欲しい。
リデュース
リデュースとは、ごみの発生を抑える取り組みだ。気軽に取り組めるリデュースとして、次のようなアイデアが挙げられる。
◆リデュースのアイデア
・マイバッグやマイカトラリー、マイボトルなどを利用する
・食材は食べきれる量を購入し、余計なものは買わない ・シャンプーや化粧品など、詰め替え用の製品を選ぶ ・家具や衣類などは、長く使える丈夫で流行り廃りに左右されないデザインのものを選ぶ ・家具や家電製品は、壊れてもすぐに買い替えず、修理する |
リユース
リユースとは、使い終わった製品を捨てずに再利用することだ。以下のような取り組み方が挙げられる。
◆リユースのアイデア
・要らなくなった衣類、雑貨、家電などは知人に譲ったり、フリーマーケットに出品したりする
・必要なものは、すぐに新品を購入するのではなく、フリーマーケットなどで探してみる ・リターナブル容器を採用している製品を選ぶように心がける |
リサイクル
リサイクルとは、使用後の製品などを資源として再利用することだ。私たちがリサイクルのためにできることの代表例を見てみよう。
◆リサイクルのアイデア
・要らなくなった衣類、雑貨、家電などは知人に譲ったり、フリーマーケットに出品したりする
・必要なものは、すぐに新品を購入するのではなく、フリーマーケットなどで探してみる ・リターナブル容器を採用している製品を選ぶように心がける |
まとめ
ごみ問題は、日本だけでなく世界レベルで、真剣に解決すべき深刻な課題だ。温室効果ガスの発生・埋立地の不足・海洋プラスチック問題と、影響は計り知れない。
国もあらゆる施策を実施しているが、速やかな解決には私たちの取り組みが必要だ。今日からでも、できることから始めよう。