プラスチック容器に、「バイオマスプラ」「バイオマス」と書かれているのを目にしたことはないだろうか。従来のプラスチックの代わりにバイオマスプラスチックを利用する企業は増えつつある。

バイオマスプラスチックは通常のプラスチックと何が違うのか、用途や活用によるメリット、普及に向けた取り組みについて紹介する。

バイオマスプラスチックとは?

バイオマス プラスチック と は 1.jpg

プラスチックは機能性に優れていることから、生活のさまざまな場面で利用されている。しかし、プラスチックが広く普及したことによって、プラスチックごみが景観を汚したり生態系に影響を及ぼしたり、さまざまな環境問題が生じるようになった。

各国は将来的にプラスチックごみの汚染をなくしていくために、さまざまな取り組みを行っている。そこで注目されるようになったのがバイオマスプラスチックの活用だ。

植物などが由来のプラスチックのこと

バイオマスプラスチックとは、植物など再生可能な有機資源を原料として作られたプラスチックをいう。主な原料は、サトウキビやトウモロコシなどの植物だ。

バイオマスプラスチックはどのように作られるかで、以下の2種類に分けられる。

・全面的バイオマス原料プラスチック

・部分的バイオマス原料プラスチック

全面的バイオマス原料プラスチックは、バイオマスのみを原料にしたプラスチックのことだ。現在石油が原料となっているものでも、すべてがバイオマス原料に切り替えられることで全面的バイオマス原料のプラスチックになる。

部分的バイオマス原料プラスチックは、部分的に石油由来の原料を利用しているが、残りはバイオマスを原料としているプラスチックだ。バイオマスプラスチックといっても、石油系の原料が混ざったタイプのプラスチックも存在する点に注意したい。

バイオプラスチックとバイオマスプラスチックの違い

バイオマスプラスチックとバイオプラスチックは似ているが、その意味の範囲が異なる。

バイオマスプラスチックが再生可能な有機資源を原料としたプラスチックであるのに対して、バイオプラスチックはバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称である。

バイオプラスチック
バイオマスプラスチック 生分解性プラスチック
再生可能な有機資源を原料としたプラスチック 微生物などのはたらきで最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるプラスチック

生分解性プラスチックとは、微生物などによって最終的に水と二酸化炭素にまで分解されるプラスチックのことだ。バイオマスを原料にしたバイオマスプラスチックの特徴を持ったものもあれば、化石資源を原料にした生分解性プラスチックもある。

いずれも環境に配慮して作られたプラスチックであって、化石原料のプラスチックとは異なる性質を持つ。

バイオマスプラスチックの主な用途

バイオマス プラスチック と は 2.jpg

バイオマスプラスチックは、焼却処分をしても環境への負担が少ないことから、さまざまなものに活用されている。以下は、バイオマスプラスチックの主な用途だ。

・食品容器包装

・非食品容器包装

・衣料繊維

・電気・情報機器

・OA機器

・自動車

身近なところだと、食容器包装やレジ袋などが代表的だ。ただし、食品容器に関しては生分解性プラスチックが使われることもある。

ほかにもペットボトルのラベルのような非食品容器包装、衣服のような衣料繊維としての活用も多い。

精密機器関連でもバイオマスプラスチックの活用が見られる。電気・情報機器分野ではCPUなどを納めるPCの外側、OA機器分野では複写機のプラスチック部分、自動車分野ではカーシートやドアトリムなどでも活用されるようになってきた。

バイオマスプラスチックを活用する利点

2018年度の国内におけるプラスチック投入量は約992万トンで、このうちバイオマスプラスチックの投入量は4万1千トンであった。

全体的な割合としては決して大きくないが、年々バイオマスプラスチックの生産能力は向上しており、投入量も増えてきている。

なぜ従来のプラスチックではなく、バイオマスプラスチックに置き換える動きが見られるのだろうか。ここでは、バイオマスプラスチックを活用するふたつのメリットを紹介する。

参考:バイオプラスチック導入ロードマップ|環境省・経済産業省・農林水産省・文部科学省

二酸化炭素の排出を抑制できる

産業革命以降、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスによる地球温暖化は世界全体での課題となっている。二酸化炭素の濃度は年々上昇し、環境異常の発生にまで影響が及んでいるとされている。

そこで、バイオマスプラスチックの活用だ。バイオマスプラスチックを利用するメリットのひとつは、二酸化炭素の排出を抑制できることにある。通常のプラスチックは化石資源を使用して作られるが、バイオマスプラスチックは再生可能資源を原料としているためだ。

また、バイオマスプラスチックを処分する際は、基本的には焼却などによる処理が必要になる。ここで二酸化炭素が発生してしまうが、全体的な二酸化炭素の量が実質的に増えることはない。

これは、バイオマスプラスチックの原料に植物が使用されているためだ。植物は、育つ過程において、光合成によって二酸化炭素を吸収する。そのため、バイオマスプラスチックを焼却処分する際に温室効果ガスが排出されても、原料である植物を生産する限り、二酸化炭素の量が実質的に増えないという仕組みになっている。

このように、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いて実質ゼロにすることを『カーボンニュートラル』という。

カーボンニュートラルの詳細や企業の取り組みについては、以下の記事で詳細を取り上げている。

カーボンニュートラルとは?SDGsとの関係や実現に向けた企業の取り組み

化石資源への依存度を下げる

従来、生産されているプラスチックの原料は原油だ。原油は工場で精製され、ガソリン、軽油、灯油などに分けられる。プラスチックは原油から精製されたナフサから作られる素材だ。

プラスチックの原料となる石油は、石油危機が起きた1970年代から枯渇するのではないかとされていた。しかし、石油資源の発見や回収率の向上などによって現在も供給が維持されている。

とはいえ、石油が有限の資源であることには変わりない。2020年時点の石油の可採年数は53.5年といわれている。また、石油資源を継続して利用することによるCO2の排出も懸念点だ。

バイオマスプラスチックは、有限の石油と異なり、再生可能な資源が使われている。原料となる植物を作ることによって繰り返し生産ができるため、化石資源に依存することはない。

従来のプラスチックからバイオマスプラスチックへの置き換えによって、化石資源への依存度を下げることが期待されている。

参考:第2節 一次エネルギーの動向|経済産業省資源エネルギー庁

バイオマスプラスチックの普及に向けた取り組み

バイオマス プラスチック と は 3.jpg

バイオマスプラスチックは、原料調達の効率や製造特性などから従来のプラスチックの製造と比べて製造コストがかかる。コスト面がネックとなって、普及が進んでいないのが現状だ。

このような状況を受けて、政府はプラスチック資源循環戦略として再生可能資源への切り替えなどの方針を重点戦略とし、バイオプラスチック導入ロードマップを策定した。

ロードマップは、導入拡大のための方向性を細かく示し、イノベーションの喚起と需要・供給の拡大を目指したものだ。2030年までにバイオマスプラスチックを最大限(約200万トン)導入することを目標として記載されている。

普及拡大への取り組みは、生産面と市場導入の両面から進められている。

生産コストの問題をクリアするには、技術開発や生産体制の整備など、生産環境の整備は欠かせない。研究開発支援(素材開発やバイオマス割合向上など)や施設設備支援などの整備も進められている。

また、市場導入への普及のために、公共調達での優先化や、認証・ラベリング制度による民間調達の優先化などの取り組みも行われている。

まとめ

バイオマスプラスチックは、従来の石油由来のプラスチックとは異なり、植物などの有機資源を原料としたプラスチックのことをいう。全面的にバイオマスが使用されることもあれば、部分的に使用されることもある。

石油由来のプラスチックとの違いは、有限の資源に依存しないことと、カーボンニュートラルの実現にも貢献できることにある。

認証制度など普及に向けた取り組みも行われているので、買い物などの際に使用されているか意識してみることから始めてみると良いだろう。利用者の増加がバイオマスプラスチックの普及にもつながる。