「プラスチックの惑星」にようこそ。Science Advances誌に掲載された研究によると、1950年代に大規模な生産が始まって以来、91億トンものプラスチックが作られ、その約半分は最近の10年で生産された。そのうちの69億トンがすでにゴミとして廃棄され、そのうちリサイクル処理されたのはわずか9%だ。79%が投棄または埋立処理されたことになる(残りは現在も使用中)。

身の回りでどれだけのプラスチックが使われているのか、多くの人は気づいていないかもしれない。実は、私たちのまわりには使い捨てカミソリ、フリースの上着、靴、歯ブラシなど、プラスチック製品があふれている。環境NGOであるOcean Conservancyの報告によると、ビーチクリーンで最も多く回収されるゴミはタバコの吸い殻(フィルターにプラスチックが入っている)だそうだ。

海洋プラスチック

こうしたゴミの多くは海に行き着く。米海洋大気庁の海洋ゴミプログラムの主任科学者であるエイミー・V・ウーリンによると、2010年の1年間だけで推計約880万トンのゴミが海に流れ込んだ。これはトラック1台分のプラスチックを毎分、海に捨てるのと同じ量だという。

そして、冒頭でふれた91億トンものプラスチックの行方はどうなったか? その多くは現在も世界の海に漂っている。ほとんどのプラスチックは消えることはない。小さなプラスチック片になっていくだけだ。マイクロプラスチックという細かい粒子になるものもあり、推計5兆個のマイクロプラスチックが世界の海を漂っているという。

悲しいことに、カキやウミガメ、サンゴのような海洋生物は、こうしたプラスチック粒子を食べ物と勘違いしてしまう。その結果、本来の食べるべきものを食べず栄養失調になる。被害はそれだけでない。海洋生物は、プラスチックの粒子を食べることで、有害な化学物質を摂取している。マイクロプラスチックは海に残留している有害な化学物質を吸着するからだ。そのような化学物質のなかには、ホルモン失調を引き起こし、生殖を妨げるものや、魚の肝臓障害を引き起こすものがあることが明らかになっている。

また、食物連鎖の最下位に位置するプランクトンが、プラスチックの影響を受けている可能性も示唆されており、連鎖の最上位にいる私たち人間への影響も心配されている。

食品中のプラスチック

「食事にマイクロプラスチックをふりかけたい」という人はいないだろう。しかし、私たちの身のまわりにも同じ汚染物質があり、もしかしたらこうした物質は食卓にも潜んでいるかもしれない。

研究者たちは、魚、塩(海塩)、さらには飲料水の中にもマイクロプラスチックを見つけている。

「マイクロプラスチックが人体にどのような影響を及ぼすかについては、まだ研究されていません(これまで実施されたのは動物を用いた研究のみ)」と、マサチューセッツ大学アマースト校のローラ・ヴァンデンバーグは述べている。「しかし、魚や他の生物からはマイクロプラスチックが検出されています。マイクロプラスチックは、動物の体を通り抜けているわけではありません。ですから人体をただ素通りするだけと考えるのは、虫がよすぎるのでは?」と彼女は言う。

プラスチック中の化学物質

とはいえ、私たちはプラスチックの原料の化学物質のことを、ある程度は知っている。私たちは日常生活の中で、以下のような化学物質に常に触れているからだ。

ビスフェノールA(BPA:水筒や缶の内面塗装剤に含まれる)、フタル酸エステル類(包装フィルムなどに含まれる)、残留性有機汚染物質(POPs:テフロン加工されたフライパンに含まれている)

こうした化学物質は食品中に溶け出し、内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)として作用し、体内のホルモンの作用を阻害し、肥満や糖尿病などの代謝性疾患の発症を引き起こす可能性がある。他にも、BPAへの暴露が、がんのリスク増加と関連していることを示唆する研究もある。このように、化学物質は様々な病気との関連が指摘されている。しかし、これらは様々な要因の1つにすぎない点も、しっかり踏まえておきたい。

プラスチックを回避すべきか?

もちろん、プラスチックに含まれる化学物質は気にかけたほうがよいが、大局的に考えてみてほしい。長い目で健康を考えるのであれば、プラスチックにこだわるよりも、食事全般に気を配る方が建設的だ。「ここで本当のリスクをゆがめないでください」とエール大学予防研究センター長のデイビッド・L・カッツは言う。「野菜を中心に、食材を余すことなくまるごと食べたほうが、体に良いことは誰もが知っていることです。こうした食事は、食物に含まれる有害な化学物質を最小限に抑えられるだけではなく、何より身体に悪い食物そのものの摂取を最小限に抑えられるのです」

プラスチックをみなさんの人生から取り除けなくても、そんなに深刻にとらえないでほしい。どれだけ頑張っても、プラスチックを完全に避けることは不可能だ。一番良いのは、再利用できるガラス容器に切り替えたり、ストローを使うのをやめるなど、小さな変化を起こし続けていくことだ。

その他にも、できることはある。

魚に含まれるマイクロプラスチックから身を守る。
水銀の場合と同じく、汚染物質が蓄積しやすいマグロ、甘鯛、ブルーフィッシュ(青魚の一種)、サメなど食物連鎖の上位にいる魚は避ける。

飲料水のプラスチックを除去する。
ワールプール社や3M社製の、シンク取り付け型の逆浸透膜フィルターを取り付ける。これは冷蔵庫やピッチャーのフィルターをくぐり抜ける小さな粒子を通さないので、飲料水のプラスチックを除去できる。

地元のビーチクリーンに参加する。
そして、できれば回収したプラスチックを無料アプリClean Swellに記録する。Ocean Conservancyは、このデータを使って汚染に関するグローバル・データベースを構築し、廃棄物対策の提案に役立てている(記録のお礼としてバッジももらえる)。

政治活動をする。
プラスチック汚染とたたかう非営利団体5 Gyres Instituteなどを支援する。同団体では、汚染に関する法律の厳格化を提唱しているロビイストに調査結果を提供するなどの活動をしている。

参加する。
Plastic Pollution CoalitionやSurfrider Foundationなどの環境団体に参加しよう。ボランティア活動でも寄付でもOK。自分ができることを選び、貢献できる

 

この記事は、EatingWellのミカエラ・ヤングが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。