森林破壊は世界的に急速に進んでおり、年間約1,000万ヘクタールもの森林が減少していると推測されている。森林破壊を食い止めるポイントは、植樹と持続可能な森林管理だ。今回は、森林破壊の現状と、世界や日本が行っている具体的な対策を解説していく。

森林破壊の現状

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環境省によると、1990年には41.28億ヘクタールあった世界の森林面積は、2015年には39.99億ヘクタールにまで減少している。25年間で1.29億ヘクタールもの森林面積が縮小したということだ。

FRA2020(世界森林資源評価2020)によると、2015年から2020年の5年間の森林減少の速度は、年間約1,000万ヘクタールと推定されている。

特に森林の減少が顕著なのが南米とアフリカで、2010年から2020年の期間に、南米では年間260万ヘクタール、アフリカでは年間390万ヘクタール減少した。

森林の減少・劣化は、以下のような事象を引き起こした原因として考えられている。

・熱帯雨林に棲む動植物が毎日100種消失

・地球温暖化の進行

出典:国際的な森林保全対策|環境省

出典:世界森林資源評価(FRA)2020 メインレポート概要(仮訳)|林野庁

森林破壊への対策にかかわるSDGsの目標

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標15「陸の豊かさも守ろう」は、森林破壊の対策にかかわる達成目標だ。具体的にどのような内容が目標として定められているのか把握し、持続可能な社会を築くために求められていることを確認しておこう。

目標15「陸の豊かさも守ろう」

SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」は、減少する森林や生物の多様性などの問題解決を目的としている。そのために、世界規模で森林資源を濫用しない社会と、森林の適切な管理実現を目指している達成目標だ。

森林破壊は、目標15の「陸の豊かさも守ろう」を達成するために解決すべきひとつの課題である。森林減少を食い止めるためには、以下のような対策が求められる。

・世界的規模での植樹や再植林など、持続可能な森林管理を行う

・持続可能な森林管理のもとで作られた製品を優先して消費する

SDGsの目標15に関する詳しい内容は、以下の記事で解説している。

>>SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の取り組み内容とは?ターゲットと事例を紹介

森林破壊に関わるターゲット

SDGsの目標15で掲げられている12のターゲットのうち、森林破壊の解決に関わる3つのターゲットについて見てみよう。なお、「15.b」のように末尾がアルファベットのターゲットは、目標の実現方法を表している。

ターゲット

内容

15.1

「2020年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、山地及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する」

15.2

「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。」

15.b

「保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員する。」

3つのターゲットからわかる森林破壊の対策を行ううえでのポイントは、次のとおりだ。

・森林資源を利用する際は、持続可能な形で行う必要がある

・植林や再植林を積極的に行うべきである

・森林を多く保有する開発途上国に対しては、森林保護が可能になるような幅広い支援をすべきである

出典:15:陸の豊かさも守ろう|外務省

【森林破壊の対策】世界の取り組み

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森林破壊の対策として、世界では次のような取り組みが行われてきた。

1992年 国連環境開発会議(UNCED)において、初の世界的合意である「森林原則声明」が採択
2004年 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)が発足
2015年 国連サミットにて2030年までの国際社会共通の目標「2030アジェンダ」 が採択

ここでは、それぞれの取り組み内容について解説していく。

1992年 初の世界的合意「森林原則声明」が採択

森林原則声明は、1992年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催されたUNCED(国連環境開発会議)で、急速な森林の減少・劣化の進行が問題視され採択された。

森林原則声明(”Forest Principles”)の正式名称は、「全ての種類の森林の経営、保全及び持続可能な開発に関する世界的合意のための法的拘束力のない権威ある原則声明」である。

この声明では、地球規模課題のひとつとして、世界各国・関係国際機関・NGOなどが協力して持続可能な森林経営を推進し解決すべき15項目が規定された。ただし途上国の反対もあり、法的拘束力はない。

2004年 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)

持続可能なパーム油のための円卓会議は、2004年に、WWF(世界自然保護基金)やパーム油産業に関係する団体などが中心となり設立された非営利団体だ。

近年、需要が高まっているパーム油の原料となるアブラヤシを大量生産すべく、急速な農園開発を行ったことで、熱帯森林破壊を招いたことが問題視されていた。

そこで、持続可能なパーム油のための円卓会議を設立し、持続可能なパーム由来原料の使用及び生産に貢献した製品の認証基準を国際的に策定した。同団体では、パーム油の安定供給と森林の保護を両立させる取り組みを行っている。

2015年 2030アジェンダ採択

持続可能な開発のための2030アジェンダとは、2015年9月開催の国連サミットで採択されたSDGsの達成目標だ。

「国連の持続可能な開発目標(SDGs)」として、17の目標と169のターゲットが設定された。前述したとおり、目標のひとつである目標15「陸の豊かさも守ろう」には、森林破壊問題に対する3つのターゲットが設けられている。

国際的に積極的な取り組みを促すSDGsは、森林破壊対策の推進に欠かせない存在といえるだろう。

【森林破壊の対策】日本の取り組み

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ここでは、国際的な動向を受けて、日本が取り組んでいる森林破壊対策を紹介する。

2000年 グリーン購入法制定

2000年に制定されたグリーン購入法の正式名称は「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」である。対象や目的は次のとおりだ。

グリーン購入法とは

対象

国やその関連団体、地方公共団体などの公的機関

内容

指定された商品・サービスを購入する際は、環境に配慮したグリーン購入法適合のものなどを選ぶことを推進

指定商品の例

・紙類

・文具類

・オフィス家具等

・画像機器等

・電子計算機等

※上記を含む全21分野の商品・サービス

目的

グリーン購入を推進することで環境に配慮した商品づくりを促進し、持続可能な社会を構築する

 

2017年 クリーンウッド法施行

日本において2017年に施行されたクリーンウッド法の正式名称は「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」である。合法の木材および木材製品の流通・利用を促進することを目的とした法律だ。木材関連事業者や国が取り組むべきことが定められている。

木材を生産するために、むやみに木を伐採すると森林破壊を招くため、伐採してもよい木のサイズや場所・量などを指定して、コントロールするといったものだ。

【森林破壊の対策】企業の取り組み事例

ここでは、国内外で森林破壊対策に積極的に取り組む2社を紹介する。

トヨタ紡織グループ

自動車のシートや内装材・部品の製造など幅広く事業を展開するトヨタ紡織グループは、植樹に積極的に取り組んでいる企業だ。

「トヨタ紡織生物多様性基本方針」に基づき、2050年までの累計植樹本数132万本を目標に掲げて、各地域で植樹活動を展開している。

ベトナムでは植樹で飛砂防止に努め、アマゾンでは熱帯林の再生活動に取り組み、モンゴルでは植樹で砂漠化を食い止めるなど、世界中で植樹活動に取り組んでいる。

味の素グループ

調味料・冷凍食品からヘルスケア・電子材料まで、さまざまな事業を手掛ける味の素グループは、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」に加盟している。

森林破壊をなくす取り組みとして、事業活動で使用している紙・パーム油の持続可能な調達および利用のほか、社会啓発にも取り組んでいる。

また、「味の素グループ 紙の環境配慮調達ガイドライン」に基づいて、古紙利用100%の再生紙などを優先調達することを定めている。

まとめ

森林破壊は、木材利用だけでなく、農園開発などさまざまな原因で進行している。地球温暖化を食い止め、生物の多様性を守るためにも、植樹をはじめとする対策が欠かせない。私たちも環境に配慮された商品を積極的に選ぶことで、森林の保護に参画することができる。身近なところから取り組んでいくことが大切だ。