2017年7月18日、中国は世界貿易機関(WTO)に対し、プラスチックや紙など一般廃棄物の輸入停止を通告。日本では、行き場を失った廃プラスチック類を処理すべく、RPF化によるサーマルリサイクルに注目が集まっている。環境型純国産エネルギー源としてのRPFの可能性について、日本RPF工業会 事務局長・石谷吉昭氏に聞いた。
RPF1トン=重油700リットル
中国の廃棄物輸入規制により、特に廃プラスチックの処理において注目されるようになったRPF。
RPFとはRefuse derived paper and plastics densified Fuel の略。主に産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙および廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料だ。
再生紙として利用困難な紙くずや木くずなどのバイオマス由来のものと、従来、焼却や埋め立て処分されていた廃プラスチックを徹底的な選別などの工程を経て、適切に破砕・混合・成形し、石炭やコークスなど、化石燃料相当の発熱量を有する化石燃料の代替としても需要が拡大しつつある。
中国の輸入規制は、これまで廃プラスチックを有価で取引してきた排出事業者にとっては切実な問題だ。日本RPF工業会事務局長の石谷吉昭氏は「輸入規制以降、『行き先のなくなった廃プラスチックを何とか処理してほしい』と、RPF事業者へ持ち込まれ始めました。サーマルリサイクルを実現するRPFへの加工は、排出事業者のゼロエミッションの仕組みを壊すことのない方法としても注目されています」と話す。
RPFは、RDF(廃棄物固形化燃料)とは原料となる廃棄物の種類が異なる。廃プラスチックや紙くずを主原料にすることから、RDFに比べ高い熱量を有し、RPF1トンを重油に換算すると、ドラム缶3本半(700リットル)と同等のカロリーとなる。また、塩素、硫黄などの有害物質の含有が少なく、自己発熱や可燃性ガス発生などの危険性も低い。
2010年には日本工業規格(JIS)に制定されており、貴重な国産燃料資源として、その品質を認められている。
二酸化炭素排出量比較表(RPF vs 石炭)
出典:一般社団法人日本RPF工業会/http://www.jrpf.gr.jp
使用する燃料 | (A) 単位発熱量*1)GJ/t |
(B) 単位発熱量 kcal換算 1000/4.18605*A |
(C) 排出係数*2) |
(D) トン当たり CO2排出量 |
(E) RPFの石炭に対するCO2排出割合 |
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新エネルギー(固形燃料RPF) | 25.7 GJ/t | 6,139 kcal/kg | 1.5700t-CO2/t | 1.57t-CO2/t | 67.4% |
輸入一般炭 | 25.7GJ/t | 6,139kcal/kg | 0.0247t-C/GJ | 2.33t-CO2/t | 100.0% |
熱量換算係数 | 4.18605 |
出典:
*1):単位・標準発熱量:平成19年5月資源エネルギー庁総合エネルギー統計検討事務局「2005年度以降適用する標準発熱量の検討結果と改訂値について」
*2):排出係数:平成18年3月経済産業省、環境省令第3号「特定排出者の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の算定に関する省令」
参考:
GJ(ギガジュール)とは10⁹J(ジュール)のこと。
カロリーとの換算は以下の定式による。1.00000kcal=4.18605KJ(計量法上の定義式)輸入一般炭のD)トン当たりCO2排出量は、0.0247tC/GJであるが、t-CO2/GJに変換するためには、(CO2分子量/C原子量)44/12=3.67を乗算する。
環境負荷低減の効果も
排出事業者の段階で分別され、性状のハッキリした産業廃棄物を使用することから、品質の安定した使いやすい燃料となるのがRPFの特長。
「6,000カロリーを中心にユーザーの都合に合わせ、5,000、7,000と調整できます。カロリーが一定なので、ボイラー燃料としては非常に安定して使いやすくなっています」(石谷氏)。
一方でRPFを使用することで環境負荷を低減する効果もある。RPFは石炭(輸入一般炭)に対して燃焼時に同一熱量回収を行う過程で、石炭より33%のCO2排出低減効果がある。さらに、灰化率は3~7%程度で、石炭の11~15%程度に比べ約3分の1で、RPFを燃料として使用するユーザーにとっては、灰の埋め立て処分量や処理費の削減にもつながる。
中国の廃棄物輸入規制で国内に環流する可能性のある廃プラスチック類は130万トン、ミックス古紙が130万トンと推定される。輸出相当品の廃棄物は良質のものが多く、RPF製造のための原料は、今後、潤沢に確保できるようになる。
「原料が増えたことは事実です。問題は使用者側が増えていないことです。国内需要を喚起し、日本で製造したRPFを国内向けに使用する。余ったものは燃料として海外へ販売する。この循環がうまく回れば、日本の廃プラスチックの問題はなくなります」(石谷氏)。
RPFの主要ユーザーとしては製紙業界があげられる。製紙業界では地球温暖化対策として、省エネ対策だけでなく、非化石燃料の利用を2002年頃より積極的に進めてきた。現時点でRPF需要の70%を占めているが、出版印刷系用紙などの生産量の低下もあり、今後、国内での成長はあまり期待できない状況にある。RPF業界としては製紙業界に対する安定供給と品質向上を保ちつつ、新たな需要を喚起することが必須となる。
RPFの特徴
1)品質が安定 | 発生履歴が明らかな産業廃棄物や選別された一般廃棄物(分別基準適合物相当)を原料として使用しているため、品質が安定している。 |
2)熱量のコントロールが可能 | ボイラーなどのスペックに応じ、古紙と廃プラスチックの配合比率を変えるだけで容易に熱量変更が可能。 |
3)高カロリー | 原料として廃プラスチックを使用しているため熱量が高く、石炭およびコークス並みで化石燃料代替として使用可能。 |
4)ハンドリング性が良い | RPFは固形で密度が高いため、コークス、粉炭などと同等の利便性をもち、貯蔵特性および輸送効率にも優れている。 |
5)ボイラー等燃焼炉における排ガス対策が容易 | 品質が安定し、不純物混入が少ないため、塩素ガス発生によるボイラー腐食や、ダイオキシン発生がほとんどない。硫黄ガスの発生も少なく、排ガス処理が容易。 |
6)他燃料に比較して経済性がある | 現状で石炭の1/4~1/3という低価格再生可能エネルギー。将来、負担するであろう排出権購入の費用が削減できる。灰化率が石炭に比べ、1/3 以下となるため、灰処理費が削減可能である。 |
7)環境にやさしい | 総合エネルギー効率の向上と化石燃料削減により、CO2削減など地球温暖化防止に寄与できる。 |
出典:一般社団法人日本RPF工業会/http://www.jrpf.gr.jp
貴重な純国産のエネルギー源
現在、稼働している国内の大型バイオマス発電では、多くの燃料を海外から輸入したチップなどに頼っている。そういう意味では、廃棄物由来のRPFは、貴重な純国産のエネルギー源であるといえる。
石炭火力発電所では、RPFを混焼させることで発電効率を向上させることができないかといった検討が始まっている。また、直接投入ではなく、既存の高効率発電設備に併設したRPF専焼ボイラーからの熱エネルギーを利用し、石炭の使用量を減少させるといった実証実験も、エネルギー総合化学研究所と中国電力が『平成26年度環境省委託事業』として行っている。
世界に目を向ければ、欧州ではすべての固形廃棄物燃料をSRFと呼び、ISO化に向けた動きが進んでいるという。
「ISOの会議でも『これが廃棄物か』と驚かれるほど、日本のRPFは世界的にも品質の高い固形燃料です。日本RPF工業会では、ISOで定義されるSFRの中に日本のRPFを位置づけてもらうべく、積極的に動いています」(石谷氏)。
2012年に前身の任意団体を改組して設立された日本RPF工業会。設立から6年、中国の輸入規制も要因となり、行政のRPFに対する認知度は大きく進展した。
「次は一般企業の環境担当やボイラー担当に、『RPFとは何か』を浸透させていかなければなりません。製紙業界ではRPFを使用することで、エネルギー効率が85%以上になっています。そうした事例をオープンにすることで、RPFに対する理解を深め、新たな需要につなげていきたいと考えています」(石谷氏)。
この記事は、環境ビジネスオンライン 2019年01月15日号より、アマナデザインのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。