企業を中心にペーパーレス化は進んでいる。環境とも関連の深いペーパーレス化はSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )にも関わるテーマだ。この記事では、ペーパーレス化の現状はどのようなものか、ペーパーレス化と関連の深いSDGsの目標は何か解説する。

企業のペーパーレス化は進んでいる

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一般社団法人日本能率協会の調査によると、勤怠管理や人事評価を中心に企業では電子化が進められていることがわかった。これは、2019年4月より従業員の労働時間の把握が義務化された影響も大きい。

一方で、同調査においては、契約書や印鑑、FAXについてはまだまだ電子化が進んでいないこともわかっている。一部では電子化が進んでいるものの、進んでいない部分もあるといった状況だ。

出典:「2021年「ビジネスパーソン1000人調査 」【ペーパーレス化の実施状況】」(一般社団法人日本能率協会)

また、こうした企業の動きを促進するために、法律の整備も進められている。政府は、ペーパーレス化の推進として電子帳簿保存法の改正を行い、2022年1月施行の改正で事前承認制度を完全に撤廃した。

とはいえ、紙文化が根強いためにペーパーレス化が進んでいない産業・企業もある。そこで、ペーパーレスを実現するには何ができるか、個人ベースで電子化に役立つツールはどのようなものかを後述していく。

SDGsとペーパーレス化の関係

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企業のペーパーレス化の状況について説明してきたが、実は、ペーパーレス化はSDGsとも関連が深い。ここではペーパーレス化で、SDGsの17の目標のうち、どの目標達成に貢献できるか紹介する。

目標12「つくる責任 つかう責任」

SDGs12「つくる責任 つかう責任」は、持続可能な消費と生産に関する目標だ。目標の達成は、将来の経済、環境、社会へのコスト削減、貧困の減少などにつながるとされる。

SDGs12の中でもとくにペーパーレス化と関連深いのが、12.2と12.5のふたつのターゲットだ。

・12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を達成する

・12.5 2030年までに予防、削減、リサイクル、再利用で、廃棄物の排出を大幅削減する

>>SDGs12の詳細はこちら

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の取り組み内容

目標13「気候変動に具体的な対策を」
ペーパーレス化は、SDGs13の目標「気候変動に具体的な対策を」とも関連が深い。

SDGs13は、農業生産や生態系保全、エネルギー供給などのあらゆる分野に影響する気候変動について、先進国、開発途上国問わず取り組むべき目標を明らかにしたものだ。

特にペーパーレス化は、13.3のターゲットと関連が深い。

・13.3 気候変動の緩和、適応、影響の軽減、早期警告による教育・啓発で人的能力や制度機能を改善する。

>>SDGs13の詳細はこちら

【気候変動に具体的な対策を】SDGs13の目標を徹底解説

 

目標15「陸の豊かさも守ろう」

さらに、ペーパーレス化と関連が深い目標にSDGs15「陸の豊かさも守ろう」がある。森林や山地などの生態系の保全などをとおして、生活の基盤である陸の豊かさを維持するための目標だ。

SDGs15の9つのターゲットのうち、ペーパーレス化と関連深いのが、15.1と15.2のふたつのターゲットである。

・15.1 2020年までに、国際協定の義務に則り、陸域生態や陸淡水生態系と関連するサービスの保全・回復・持続可能な利用を確保する

・15.2 2020年までに、あらゆる森林の持続可能な管理を促進し、森林破壊を阻止するとともに、森林の回復や森林再生を増加させる

>>SDGs15の詳細はこちら

SDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の取り組み内容とは?ターゲットと事例を紹介

 

個人ができるペーパーレス化

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ペーパーレス化はSDGsとも関連があるからこそ、ペーパーレス化に向けた取り組みを積極的に実施すれば、SDGsの目標達成にも貢献できる。

先に企業におけるペーパーレス化について取り上げたが、ペーパーレス化を促進するためには、企業だけでなく社会に属する一人ひとりが高い意識をもつことも重要だ。ここでは、個人ができる身近なところでの電子化の具体的な方法を紹介する。

スケジュール帳を電子化

スケジュール管理は、スマートフォンアプリなどを使って電子化するのもペーパーレス化の方法のひとつだ。たとえば、無料で使える「Googleカレンダー」では以下のような機能がある。

・スケジュールの作成や削除

・定例スケジュールの設定

・特定ユーザーとのスケジュールの共有

・組織内でのカレンダーの公開・非公開設定

・スケジュールへのファイル添付

・サブカレンダーの作成など

Google経由でお店の予約をした場合は、自動でGoogleカレンダーに予定が入力されるため、スケジュール漏れを防ぐのにも便利だ。

また、上記でも紹介したようにビジネスシーンに役立つ機能も広く備わっている。組織内でのカレンダーの共有や会議室の予約なども行えるため、個人での利用はもちろん、組織として取り入れるのにも便利だ。

メモ・ノートを電子化

メモやノートの電子化もペーパーレス化に役立つ。メモアプリの代表的なツールのひとつが、「Google Keep」だ。Google Keepは基本的なテキストメモのほか、以下のような機能も利用できる。

・リスト型メモ

・ボイスメモ

・画像メモ

・手書きメモ

・リマインダー機能

・ラベル機能   など

紙ベースのメモやノートと異なり、音声データや写真データなどをフル活用できるのが特徴だ。また、手書きメモであれば、紙のメモのように手書きでメモを残すこともできる。さらに、共有機能もあるため、重要なメモの共有などビジネスシーンでの活用も可能だ。

ペーパーレス化を実現するためにも、これらのようなツールを活用し、個人ができることから始めてみるとよいだろう。

ペーパーレス化を推進している自治体・企業の事例

ペーパーレス化にあたって個人でできることを紹介したが、自治体や企業の動きがともなわないと社会規模でのペーパーレス化の実現は難しい。ここでは、自治体や企業のペーパーレス化の取り組みを紹介する。

長野県長野市

長野県長野市では、これまで会議で使用される資料作成のため、大量の紙が必要になるという課題があった。印刷には手間がかかるほかコストも発生する。

これを受けて、長野市が導入したのがICTを活用したペーパーレス会議だ。実現のために、長野市は、ノートPCと大型ディスプレイ2台を設置して、ティスプレイで資料を表示すると同時に、個々のノートPCでも資料を閲覧できるようにした

さらに、会議資料の作成方法のルールも策定した。例えば、PCでの表示に不向きなもののみ紙の資料で対応するなどが挙げられる。これにより、14万枚もの紙を削減し、印刷費用300万円の削減に成功している。

株式会社野村総合研究所

株式会社野村総合研究所では、机上に資料が山積みになるなどオフィス内に紙があふれ、業務の円滑な執行に支障をきたすことやセキュリティ面が疎かであることに課題を抱えていた。

このような状態を改善するべく、野村総合研究所で実施されたのが、単に紙を使わないのではなく、紙にとらわれないノンペーパーである。

まず、ノンペーパー推進のため、机上、足元、共用キャビネットなどの整理整頓や不要な書類の処分を実施した。

さらに、会議の効率化を図るためのノンペーパー会議も実施。会議室にスクリーンやプロジェクターを置いて資料を映したり、事前公開などを行ったりすることでノンペーパーを進めた。

結果として、紙関連のコストが減少したほか、スペースの有効利用による会議スペースの増加が実現している。

コニカミノルタビズコム株式会社・コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社

コニカミノルタビズコム株式会社および、コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社は、文書量の増加に課題を抱えていた。コンプライアンスや内部統制の観点から、文書の保存期間や原本管理規定が定められていたためである。

このような保存する文書の増加に対応するため、ペーパーストックレスを実施した。具体的な取り組みとして実施したのが、電子保存できる文書の電子化や共有スペースと個人の保存場所の規定だ。共有文書については、年度ごとにファイルボックスに入れ、分類した後、ラベルを貼って検索が容易にできるように保存方法を変更した。

このような取り組みの成果もあり、同社は、東京タワー1本分の厚みがある紙資料の削減に成功している。


まとめ

ペーパーレス化は自治体や企業でも取り組みが進められている。ペーパーレス化を進めSDGsの目標達成を実現するには、個人でも意識を強くもつことが重要だ。協和キリン株式会社では、SDGsに関連するさまざまな取り組みを実施している。

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