レンタルサービスのサステナビリティを考える場合、輸送と梱包は依然として大きな問題だ。 写真提供 アビブ・ラクマディアン
フォーマルウェアのレンタルは、60年以上前から卒業パーティーや結婚式、その他特別な行事のときに利用されてきた。1度しか着ない服を買うのは経済的ではないという理由から、消費者はたびたびレンタルを選んだ。今や、ファッションのレンタルサービスはカジュアルウェアにも広がりを見せており、ファッションに関心が高い多くの消費者が、衣類のごみを減らそうと、レンタルに熱い視線を向けている。
2018年には、米国で1130万トンの繊維廃棄物がごみ捨て場行きとなった。そのほとんどが衣類だ。繊維廃棄物を最小限に抑えることはきわめて重要だが、衣類のレンタルは、新しく買うよりも本当にサステナブルなのだろうか。調査結果は、この問題がそれほど単純ではないことを示している。
ごみを最小限に抑えるため、レンタルに前向きなZ世代消費者
2021年に、オンラインジャーナル『Sustainability』に小規模な研究が発表された。それによると、Z世代(1990年代半ばから2010年くらいまでに生まれた世代)の大人の消費者は、衣類の過剰消費を減らすため、レンタルサービスを試すことに前向きだった。レンタルも、新しい服を着たいという欲求を満たすものには違いないが、重視されるのは服を「着る」ことであって、「所有する」ことではない。
ワシントン州立大学アパレル・マーチャンダイジング・デザイン・テキスタイル学部の学部長を務めるティン・チーは、論文執筆者の一人だ。チーによると、オンライン調査で得た362件の有効回答から、衣料レンタルサービスを使いたいという消費者の気持ちに大きく影響する要素は、数多く存在することが分かったという。
たとえば、Z世代の消費者は、衣類のレンタルに前向きな考えの人を知っていると、自分も衣類をレンタルする傾向が強くなる。衣類のレンタルによる環境的メリットについて学んだ経験や、環境を守るためのそれまでの行動も、レンタルサービス活用への意欲につながっていた。
「自分の服が増えすぎてしまうと、捨てたり寄付したり、古着として早々に売ったりすることもあります」とチーは言う。「衣類のレンタルは、自分の服を増やさずに最新の流行を取り入れたい消費者には、取り組みやすい解決策かもしれません」
表面的に見れば、レンタルサービスは衣類の寿命を延ばせるし、本来なら着られないような服を気軽に着やすくなる。消費者の購入回数を減らすことにもつながる。ところが、衣類のレンタルは、必ずしもサステナブルとは言えない。
衣服のレンタルは、ごみ削減ができない
衣類のレンタルがサステナブルかどうかは、多くの要素に左右される。『Environmental Research Letters』に発表された2021年の論文は、新しいジーンズを1着買い、普段と同じように使ってから捨てると、レンタルして10回着てから返すよりも環境に良いという結果を示している。調査では、購入とレンタルの両方において、製造から配送、使用、ライフサイクル終了までのCO2総排出量を推定して比較した。その結果、レンタルする方が地球温暖化を悪化させる可能性が高いことが分かった。
レンタルは製品をより有効に利用できる反面、衣類の配送や返却で、より多くのCO2を排出すると言われている。ただし論文によると、消費者がジーンズを着る回数を増やし、低炭素な輸送手段を使えば、新しいジーンズを買うのと同じくらい、あるいはそれよりもサステナブルになるだろうという。
「(レンタルと購入の)どちらが環境への負担が大きいかを決める要素には、購入した場合の着用回数、各レンタルにおける輸送距離、それぞれの洗濯方法などがあります」。ファッション業界のシンクタンク「New Standard Institute」の設立者でディレクターのマキシン・ベダ(今回の論文には不参加)は、そう説明する。
レンタルまたは購入する衣類のタイプも、サステナビリティに影響する大きな要素だ。たとえば、品質の悪いファスト・ファッションの服を新しく買うことと、長持ちするように作られた品質の良い衣類を買うことは同じではない。そう説明するのは、コロラド州立大学デザイン・アンド・マーチャンダイジング学部准教授で、地球環境サステナビリティ学部の専任教員でもあるソナリ・ディディだ(今回の論文には不参加)。また、徒歩圏内にある店からレンタルするのと、オンラインのレンタルサービスで届けてもらうのとでも、環境への影響は異なる。
「オンラインの衣料レンタルというビジネスモデルは、画期的なものです。でもその一方で、サステナブルな面を打ち出せるように、サプライチェーン全体でビジネス慣行の透明性をもっと高める必要があります」とディディは言う。「要するに、手に入るデータや情報が足りないと、新しい服を買うよりサステナブルな選択肢には見えない、ということです」
定額制衣料レンタルサービス「Rent the Runway(RTR)」は、2021年に第三者機関に調査を依頼し、衣料レンタルのビジネスモデルと新しい衣類を購入する場合とを比較したライフサイクル・アセスメント(ライフサイクル全体を通した環境負荷の算定)を実施した。調査を担当したサステナビリティ・コンサルタント会社JPB Strategies、Green Story、SgTは、レンタルは新しい服を買う場合と比べて、水とエネルギーの使用量や炭素排出量を少なくできると結論づけた。ところが、裏付けとなる具体的な情報やデータが示されておらず、調査結果が信頼できるかどうかは疑問だとディディは語る。
「サステナビリティや気候変動がこれまで以上に議論されるようになり、消費者の目に止まりやすくなってきました。そこでRTRなどの衣料レンタル会社は、はっきりしたデータを示さずに、衣類のレンタルはファッション消費においてサステナブルな選択肢だと主張したのです」とディディは言う。「オンラインの衣料レンタル会社は、ばんそうこうを貼るような場当たり的な対応をするのではなく、意識してサステナブルな取り組みをする必要があると思います」
店での受け取りや、持ち込みによる返却を増やし、持続可能な洗濯方法を取り入れ、環境に配慮した梱包を多くすれば、レンタルをもっとサステナブルにできるだろう、とディディは言う。また、プラスチック梱包材の返却にインセンティブを与える、サプライチェーンの透明性を高める、レンタルする衣類を廃棄するまでの使用計画と責任を明確に示すなどすれば、サステナブルであることをもっと強く押し出せる。
購入を減らし修理を増やす方がはるかに良い
「サステナブルなファッション消費を推し進める上でベストなのは、消費者が『Avoid(避ける)、Reduce(減らす)、Reuse(再利用する)、Recycle(リサイクルする)』をこの順番で実行することです」とディディは言う。何よりサステナブルなのは、そもそも新しい服を買わないことだろう。買う代わりに、友人や家族と、手持ちの衣装の定番を交換してみてもいい。修理したり再利用したりしても、衣類の寿命を延ばせる。
新しい服を買うことにするなら、何が欲しいかより何が必要かを考えよう。長く使えるように作られた品質の良いものを買い、マイクロプラスチックによる環境汚染の大きな原因になる合成繊維は避けるべきだ。
「オンラインのレンタルのような、ファッション業界を根底から変えるモデルは斬新です。ただ、洗濯や輸送、梱包材が環境に与える影響の大きさを考えると、最もサステナブルな選択とは言えません」とディディは言う。「さらに言うと、オンラインの衣料レンタルモデルのほとんどは、借りた服をそのまま購入できるようになっています。それがファッションの過剰消費を加速させているのです」
全体として見ると、レンタルと購入はどちらがサステナブルかについてもっと明確な答えを出すには、さらに調査が必要だとベダは言う。今のところは、何度も着ない服をレンタルすることにすれば、新しい服のニーズを減らせる。ただそれよりも、頻繁に着られる基本の服をそろえておく方がいいのかもしれない。
オリジナル記事Does renting your clothes reduce fashion waste?はPopular Scienceに掲載されたものです。
この記事は『Popular Science』に掲載されたものです。
この記事は、Popular Scienceよりカーラ・デルガードが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。