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硬質の漂着プラを燃料チップ化する(出所:エルコム)

エルコム(北海道札幌市)は2月8日、長崎県対馬市に、硬質プラスチック専用燃料化システムを納入したと発表した。これにより同市は、漂着ごみの約半分を占める漂着プラスチックの全量を島内の資源・エネルギーとして利用できるようになった。

同市は2021年2月から、発泡スチロール製漂着廃フロートの燃料化(エルコム製装置)を開始。今回、新たに硬質プラ燃料化システムを導入したことで、市沿岸に漂着する漁業用硬質ブイや漁具などの資源化が可能になった。

体験型エコツーリズムによる地域の活性化・付加価値化を

同社が提供する「e−PEPシステム」は、硬質プラスチックは1cm程度に破砕するだけで、同システムの樹脂ボイラ「イーヴォル」の燃料となるという。今回納品した樹脂破砕機「クダック」は、大きな硬質ブイやパレットなどを一度に処理ができるよう設計し、投入、排出は全てコンベア搬送の半自動化ラインとした。

漂着プラごみは砂や貝殻などの付着物が多く含まれる。そのため、破砕後は震動機を通して不純物を取り除き、プラスチック燃料のみが分別貯留できる仕組みとした。処理能力は1時間あたり硬質ブイが入った1立法mフレコン16体を破砕チップ処理できるという。減容率は1/8。

今後、同市では、2022年度以降の予算でe-PEPシステムのエネルギー化を担う樹脂ボイラ「イーヴォル」の導入を行い、島内の温浴施設などで燃料化した漂着プラスチックの有効利用を完結させる予定だ。

同社はこの事例を通じて、プラスチックの分散型エネルギーとしての活用と、体験型エコツーリズムによる地域の活性化・付加価値化を行いながら、同社が推進する「クリーンオーシャンプロジェクト」の普及に努めるとしている。

対馬市沿岸に流れ着く、年間約716トンのプラごみ

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対馬市に漂着する海洋プラスチック(出所:エルコム)

同市の海岸線の延長は915kmに及び、対馬海流が日本海に流れ込む入り口に位置しているため、海洋プラスチックが日本で最も流れ着く地域のひとつだといわれている。

市内の環境保全団体の調査によると、2020年度に回収された漂着ごみは、約135立法m。そのうち、流木などの自然物を除く約61立法mがプラスチックで、重量換算にすると約716トンに及ぶという。漂着プラスチックが海に再び流出すれば、マイクロプラスチックとなり近海の生態系に深刻な影響を及ぼす。

同市では美しい海を取り戻すため、漁業者などの協力を得ながら回収事業に取り組んできたが、これまでこれらの回収プラごみを効率的に処理する設備がなかった。島外へ輸送処理するのにも多額な費用がかかるため、その有効方法を模索しながら、島内の中継処理場で保管を行ってきたが、今後はe−PEPシステムを使用しその場で処理を行い、島内の貴重なエネルギーとして利用していく予定だという。

汚れの少ない単一素材については、島内でアップリサイクルを視野に、適材適所の利用を検討していくという。

この記事は、株式会社日本ビジネス出版『環境ビジネス』(初出日:2022年2月10日)より、アマナのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、にお願いいたします。