新型コロナウイルスの感染を防ぐために使われた個人用防護具（PPE：Personal Protective Equipment）のごみが、深刻な問題になっている。2021年末の時点で、新型コロナウイルス関連のプラスチックごみは約800万トンと推定され、そのうちおよそ2万5000トンが、海に流れ出ている。これには、PPEのリサイクル方法が、やや分かりにくいことが大きく影響している。PPEには、プラスチック製品から、繰り返し使える布マスクまでさまざまなものがある。リサイクル方法が分からなければ、普通の人は使ったらごみとして捨ててしまう。
この事態が、環境に大きな負荷を与えているのは明らかだ。でも、日々状況が進化し新たな問題が出てくるパンデミックの今は、感染対策を緩めるべき時ではない。とりわけ医療従事者の対策は重要だ。しかもオミクロン株の場合、よりサステナブルな、繰り返し使える布マスクのような方法だけでは、感染を十分に防げない可能性がある。
「絶対に欠かせないのは、適切なPPEを医療従事者に提供することです」。世界保健機関（WHO）の健康危機管理プログラム責任者マイケル・ライアンは、2月1日付ニュースリリースでそう語っている。「でも、PPEが周りの環境に悪影響を与えることなく、安全に使われるようにすることも、とても大切です」。WHOによると、新型コロナウイルスが広まる前ですら、医療システムの30％において、発生する廃棄物の量に見合った仕組みが整っていなかったという（医療システムが遅れている国では、その割合は倍増する）。すでに無理があったところに、パンデミックという公衆衛生の危機が2年間続いたため、大きな問題になっている。
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言うまでもなく、ごみを焼却する目的は、使用済みPPEを最終的に埋め立て地へ運ぶ前に、消毒し処分することだ。ただしこの方法は、今なお、おどろくほど多くの温室効果ガスを排出する。プラスチックを燃やすと、二酸化炭素やそれ以外の汚染物質が出るからだ。
しかし最近、コーネル大学の研究者たちが、世の中にあふれるPPEごみを減らし、それを役立てる方法を見つけようと、まったく新しい方法を考え出した。研究の概要は1月に出版された学術雑誌『Renewable and Sustainable Energy Reviews』に発表された。
「結局ごみは出ます。ただ、ごみと言ってもプラスチックですから、まったく使い道がないわけではありません。転用できる素材なのです」。執筆者の一人、フェンギィ・ユーはそう説明する。コーネル大学で、化学生物分子工学の教授を務める人物だ。「ですから、化学物質として利用できる可能性があります」
現時点で、この研究者たちはニューヨーク州における作業プロセスを分類しているしているが、それはおどろくほどシンプルだ。基本的にステップは二つある。一つは医療施設の使用済みPPEを、医療廃棄物を除染し処理する施設に運ぶこと（論文では、サフォーク郡とニューヨーク郡に1カ所ずつ施設を建てることを提案している）。その施設で、マスクをはじめとするPPEを滅菌し、小さく粉砕する。
こうして小さくなったプラスチックは、次のステップで、統合熱分解装置に送られる。熱分解とは、有機物質を無酸素状態で加熱することだ。この処理により、石油から作られた医療用ガウンなどを、役に立つ、小さな化学物質に変換できる。医療用PPEは、エチレン、プロピレン、プロパン、ブタン、ボーキサイト、ガソリン、硫黄などになる。
全体として見ると、プロセスを最大限に効率化した場合、ニューヨーク州ではコストをおよそ400万ドルに抑えられる見込みだ。ちなみに、ニューヨーク市衛生局の2020年の支出だけでも、20億ドルほどにのぼる。投資すれば大きなメリットがあるだろう。具体的に言うと、PPEを焼却した場合と比べて、化石燃料の総使用量の31.5％、および温室効果ガス総排出量の35.04％を削減できるのだ。さらには、PPEを埋め立てごみや焼却ごみにした場合と比較すると、それぞれ41.52％と47.64％の土地が不要になる。「毎年数百万ドル使うだけで問題が解決できるし、全体の状況も良くなるのです」とユーは説明する。
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、私たちはこれからも、より感染予防効果の高いマスクに頼らなければならない。新型コロナウイルスが地球に残す足跡をできるだけ少なくするには、一つひとつの積み重ねが肝心なのだ。
この記事This new recycling system could keep COVID PPE out of landfillsは、Popular Scienceに掲載されたものです。
この記事は、Popular Scienceよりサラ・カイリー・ワトソンが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。
