気候変動危機への対応に関する話が、金融や投資、年金と関連付けて語られることがよくあるが、それには理由がある。地球の温暖化による最悪の結末を避けようとする世界の取り組みは、ある意味、資金の再配分に向けた緊急のミッションと言えるからだ。このミッションが、投資の世界における抜本的な変化を後押ししている。

積立年金などの投資は、世界の気候変動対策に大きな変化をもたらしうるビジネスを支える可能性を秘めている。その変化は、何か行動を起こすことで生まれる場合もあれば、何もしないことで実現される場合もある。また、こうしたビジネスは、格差の拡大や多様性の欠如といった気候変動以外の社会課題に取り組む鍵にもなる。私たちのお金が、こうした企業の方向性に影響を与えるかもしれない。なんにせよ、企業には株主や投資家に対する説明責任があるのだ。

だが、「責任ある投資家」であるということは、「責任ある消費者」であることとはまったく違うと言っていい。買い物かごの中身をエシカルな商品や環境に配慮した商品に替える場合なら、さほど悩むことなく買うべきものを選べるだろう。

投資の場合は、そうはいかない。特に初心者ならなおさらだ。何より、買い物かごにもっとサステナブルなものに入れ替えればいいエシカル消費とは違って、責任投資はそれほど単純にはいかないこともある。なぜなら投資家は、別の形で企業に影響を及ぼせるからだ。だから、考えるべきことや疑問に思うことも当然違ってくる。

そこで、責任投資の世界を渡り歩きやすくするため、責任投資に関する課題やジレンマ、専門用語、注意点をまとめたオンラインガイドを作成した。責任ある消費の場合と同じように、責任投資においても判断力を養うためのヒントとなれば幸いである。

責任投資に関する課題やジレンマ、専門用語、注意点まとめ

新しい言葉

企業はこれまで利益のみで評価されてきたが、最近では環境や人に及ぼす影響によっても評価されるようになった。それに伴い、投資の世界には新たな用語や略語が生まれている。

「ESG」は環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、この評価基準に対する企業のパフォーマンスを気にかける投資家や年金加入者が増えている。他にも、さまざまなESG目標や基準、情報開示に関する略語があるが、便利なガイドを用意したので、尻込みすることはない。

グリーンウォッシュから身を守る

曖昧で正確さに欠ける表現を使うと、企業がうたう環境への効果について誤解を生じさせる恐れがある。また企業は、裏付けが足りない主張をすることにもなりかねない。これは、「グリーンウォッシュ」と呼ばれる。例えば、「グリーン」や「エコ」といった言葉は、実際のところ何を意味するのだろうか?

企業がグリーンウォッシュをすると、確かな情報に基づいて判断するのが難しくなる。また、行動を改め、気候変動危機に立ち向かおうとする企業のまっすぐな努力も台無しになる。だからこそ、消費者にとっても投資家にとっても、企業のグリーンウォッシュを見抜く力がたちまち重要なライフスキルとなっているのだ。そこでこのガイドでは、投資家がグリーンウォッシュから身を守るためのコツを伝えている。

ダイベストメント(投資撤退)か、エンゲージメントか

これは、大きなジレンマとなっている。責任投資家は、倫理や環境の問題への取り組みが不十分な企業の株を売るべきか、あるいは株を持ち続けて、株主としての立場を利用して企業に改善を促すべきか。この議論はよく「ダイベストメント対エンゲージメント」のジレンマと呼ばれ、どちらの立場も強い主張を持っている。

ダイベストメント(投資撤退)の問題は、自分が売った株を、特に何も考えていない投資家が喜んで買うかもしれないという点だ。つまり「見捨てて乗り換えて」しまうと、汚染をもたらす企業経営の手綱が、責任感のない投資家の手にわたってしまう可能性が高いということだ。また、ひどい汚染をまき散らしている企業への投資をやめれば、こうした企業がクリーンな事業運営に移行しようとしても、そのための資金調達が難しくなるかもしれない。

投資を続けるということは、議論の場に参加し続けるということだ。そうすれば投資家は、取締役会に圧力をかけて変化を促すことができる。これは、より効果的に働くことが多い。ダイベストメントかエンゲージメントかという二択から抜け出し、その代わりに、企業とのエンゲージメントの中で株主としての立場を強めるための脅しとして、ダイベストメントを最後の手段と捉えるのがよい。その理由を、このオンラインガイドでは説明している。

影響力の美学

では、投資家はいったいどうすれば、企業にCO2排出量の削減やサプライチェーン労働者に対する不当な扱いへの対処を促せるのだろうか。柔らかい物腰で説得することから、大ニュースになるような抗議運動まで、株主が企業に一歩進んだ行動を促すための方法を紹介する。

エンゲージメントは、投資家や年金加入者が個人として行うこともできるが、株主がグループを作って行動するケースもある。だがそれよりも、年金や投資会社の資産を預かる資産運用会社が動いた方が、さらに大きな圧力を与えられる。資産運用会社は、個人の資産を集めて個人投資家に代わって投資をしたり投資ファンドを運用したりする。そのため大抵は、各投資先の株の保有数もずっと多い。

株主のエンゲージメントには、かなりの粘り強さと専門知識が求められる。このオンラインガイドでは複数の資産運用会社にインタビューを行い、株主としてのエンゲージメントをどのように行っているか、また産業界における責任投資の広まりを受けて自社の役割がどのように変化したかを尋ねた。

規模とインパクト

サステナビリティ課題に対しワクワクするようなソリューションを提供する小さなスタートアップは、応援したくなる。そうした企業は、投資を受けて当然かもしれない。一方で、安定した大企業は面白みには欠けるかもしれないが、市場への影響力を持つ大企業が動いた方が大きなインパクトを生み出せることもあり、検討の価値がある。

より環境に配慮した公正な事業運営への移行を加速させることを目指して株主が大企業へのエンゲージメントをはかれば、その企業自体とサプライチェーン全体の規模の力によって、もっと大きな世界規模の取り組みに多大なインパクトを及ぼせることも多い。簡単に言えば、大企業の方が改善の余地が大きいのだ。また、気候危機による経済的な打撃や、将来の規制、イメージ悪化のリスクにさらされる可能性も高いため、改善しなければという義務感も大きい。

このように、企業と投資家の双方にとって、責任投資の財務的側面と倫理面の関連性はますます高まっている。

責任投資についてもっと詳しく知りたい方はRoyal London – The Invested Generation(ロイヤルロンドン 投資世代)をご覧ください。

 

この記事は、The Guardianで執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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