一部のスタートアップが大気中のCO2を除去するサービスを始める中、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者はもう一つの難題に挑んでいる。格段に強い温室効果があるメタンをいかにして除去するか、である。大気中に放出されてから最初の20年間で比較すると、メタンにはCO2の80倍以上の温室効果がある。これはつまり、メタンを大気中から除去できれば、すぐにでも気候変動対策に大きな効果をもたらす可能性があるということだ。

最近発表された論文には、猫用トイレに使われる安い砂の一種ゼオライトに少量の銅を含ませたものを用いた実験結果がまとめられている。実験では、この新しい素材を詰めたチューブを熱してそこにメタンを通すと、メタンがCO2に変換された。メタンの濃度をかなり低くしても問題なく変換されたという。

理論上は、CO2に変換できればサングラスウォッカ、ジェット燃料など新しく商品を作る際に活用できる。だが大気中に放出されるだけだとしてもメリットはある。

「『CO2の発生をともなうプロセス』と言うと、『いや、それはダメだ。CO2は環境に悪いからね』という声が返ってきます」 そう語るのは、MITの工学部教授で論文の執筆者の1人でもあるデジリー・プラタだ。「でも、温暖化の観点からすると実際にはメタンの方が、はるかに環境への負荷が大きいことが分かっています。メタンをCO2に変換できれば、すぐに気候面でのメリットを地球にもたらし、私たちが生きている間に実際に温暖化の速度を変えることができます」

プラタによると、大気中のメタンの半分がCO2に変換されれば、大気中の炭素濃度は417ppmから1ppm増えて418ppmとなる。一方、温暖化は16%軽減することができる。

これまでに、同様のプロセスでメタンを燃料の一種であるメタノールに変換しようとする試みもあった。だがその場合、優れた費用対効果を維持することが難しく、メタンからCO2を生じさせる化学反応の方がうまくいく。炭鉱でメタンを回収する技術の開発に挑んだ研究者もいたが、これには強い熱を別途必要とする高価な素材が用いられた。このゼオライトと銅からなる素材は手頃な価格である上に、それよりもずっと低い温度で反応する。

次の段階としてMITの研究者らは、この素材がメタンを回収する最適な構造となるよう微調整をする予定だ。「猫用トイレの砂に空気を通すのは、簡単ではありません」とプラタは言う。「あらゆる技術的な問題が起こるところを想像してみてください。粉は飛び散るし、加熱も難しい。だから私たちがやるべきは、大量の空気を比較的速く通過させつつ、それでも十分な化学反応を起こせるような構造の触媒にすることです」 最終的には、車に使われている触媒コンバーターに近いものになると彼女は語る。

このシステムは、メタンが大量に排出される場所での活用が想定される。たとえば、牧場の牛舎は、牛のげっぷや糞に由来するメタンの主要な発生源の一つだ。ここでは、壁に備え付けてある換気装置にこの技術を取り入れることができるだろう。「換気装置の下流部分に組み込むだけです。すでに動いている空気の流れを利用できるのが、このやり方の利点です」とプラタは言う。ファンを使わずに済むので省エネになる。メタンが変換されると熱も発生するため、この熱を再利用して化学反応を継続させることができる。

世界が抱えるメタンの問題の解決は、排出自体を削減できるかどうかにもかかっている。石油・天然ガス部門においては、メタンの漏れを検出して流出を防ぐこと(そして最終的には化石燃料から脱却すること)を意味する。ごみの埋立地では、食べ物が腐ることで生じるメタンを回収すれば、発電に活用できる。牧場では、メタンの分解装置で家畜の糞をエネルギーに変えることもできる。牛のエサに海藻を混ぜて食べさせるなど、それ以外の解決策も有効かもしれない。

融解が進む永久凍土から放たれるメタンのように、上記以外の発生源からの排出をなくすことは、不可能とは言わないまでもさらに難しくなるだろう。CO2同様、大気中にはすでに大量のメタンが存在する。だからこそ、その大気中のメタンをなくすことは極めて重要だと考えられるのである。

この記事は、Fast Companyよりアデル・ピーターズが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。