北アフリカの王国モロッコでは、リサイクルの取り組みが始まったばかりだ。だが、有機廃棄物の処理を専門とするスイス企業エレファント・ヴァート(「緑の象」の意、以下「EV社」)の助けを借りて、着実に前へと進めている。

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アフリカ大陸の北西端に位置するモロッコ王国。青い街シェフシャウエンの美しい広場の風景。@Gettyimages

「ここでは何も捨てません。すべてが生まれ変わるんです」。中心都市メクネスのEV社でそう胸を張るのは、生産マネージャーのモハメド・エル・カボス。同社が生産した堆肥をひとつかみし、ぱらぱらと砕いて見せる。

2012年に建てられたその工場は、アフリカ大陸にあるEV社の同様の施設の中では最大で、堆肥と有機肥料の年間売上が4万トンにのぼる。

貯蔵庫には、おがくずやパレット、果樹の枝が高く積まれている。肥料を積んだ何台ものトラックがガタガタと通り過ぎ、重機が堆肥の山をかき混ぜて空気を送る。

カボスによれば、同工場では家庭から出る有機廃棄物の処理は行っていないという。家庭ごみが事前に分別されることはほとんどなく、コストがかかりすぎる。からだ。

代わりに運び込まれるのが、木材を扱う近くの農場や工場、エッセンシャルオイルを生産する生活協同組合からの廃棄物だ。

「畜産場から出る家畜の糞には、多くの窒素が含まれます。それを炭素が豊富な有機物と混ぜ合わせたら、あとは自然に任せます」とカボスは言う。

堆肥の生産には約4カ月かかるが、屋外の発酵エリアから悪臭が発生することはない。木材が匂いを吸収してくれるのだ。

実際にかいでみると、新鮮な土の匂いがする。カボスは、「と言うより、小麦粉とアーモンド、ゴマで作られたモロッコの伝統的なペースト菓子『ザミタ』のような匂いですね」と笑った。

EV社の工場では、堆肥にカリやリンを加えた肥料も生産している。

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堆肥を重機でかき混ぜる様子イメージ @Gettyimages

「時限爆弾」

EV社の製品は主に現地の市場で、有機農場のほか、化学肥料の使い過ぎで栄養を失った農地を持つ大企業に販売されている。

農業は、現在もモロッコ経済の柱のひとつだ。

「自分の土地で作物を作り続けたい農家や、健康で持続可能な農業を選ぶことの重要性を理解している農家からの需要が高まっています」とカボスは語る。

メクネスは、フランスの水・廃棄物処理大手スエズが廃棄物処理・回収施設を運営するなど、別の有機廃棄物リサイクル事業の拠点でもある。

だが全国的な状況はまったく異なる。

2015年に公表された数字を見ると、リサイクルされた家庭ごみは6%(700万トン中42万トン)に過ぎず、残りは埋め立てられた。

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モロッコにある埋立地のひとつ @Gettyimages

一方で、産業廃棄物(主にプラスチック、紙、金属、電気・電子機器)のリサイクル率は12%に及ぶ。

モロッコは2022年までに廃棄物の20%をリサイクルするという目標を掲げていたが、現在はその期限が2030年に後ろ倒しされている。

都市におけるリサイクルの専門家であるムスタファ・ブラケスは、政府のリサイクル推進策を厳しく批判した。

「(首都)ラバトの官僚たちが考えている戦略には、まったく意味がありません。モロッコとは傾向がまるで異なる欧州をお手本にしたものですから」

モロッコでは家庭ごみの80%近くを有機物が占めるが、欧州では30%未満だという。

モロッコには、26カ所の分別施設と埋め立て地がある。だが実は他にも、これまでに正式に認められるか、閉鎖された違法なごみ集積場が66カ所もあるという。

「(廃棄物の)処理に焦点を合わせた取り組みばかりで、回収の改善策を考えようとしないのです」とブラケスは嘆く。

モロッコの廃棄物管理は、例えるなら「時限爆弾」だという。

「発生源の問題に目を向けなければ、ただ埋立地ばかり増やしていくことになります。家庭での分別から始まる仕組みを作ることが不可欠です」

オリジナル記事Firm transforms waste as Morocco faces trash ‘time bomb’Digital Journalに掲載されたものです。

この記事は、Digital JournalよりAFPで執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。