マイクロプラスチックが地球上の生き物にとって重大な問題であることは、十分に裏付けられている。そして、状況はますます深刻になってきている。どうしたら、人間はプラスチックに頼るのをやめられるだろうか。欧州連合(EU)の取り組みに、そのヒントを探る。
環境保全に取り組むNGOのOceanaの報告によれば、2009年以降、プラスチックを飲み込んだり、プラスチックにからまったりした海洋ほ乳動物やウミガメが、アメリカ沿岸で1800匹も見つかっている
ノエル・セリス(AFP)
どうすれば、マイクロプラスチックが消費者向けの製品に幅広く使われている現状を、変えられるのだろうか? 究極の目標は完全に禁止することだが、家庭向けの製品の大部分を市場から追い出すのは、現実的ではない。明確な計画と戦略を立て、段階的にアプローチしていく必要がある
トロント市(カナダ)で使われているレジ袋
アンドリュー・モラン
マイクロプラスチックの影響を見定めるため、Digital Journalでは三回シリーズで、その問題の深刻さと、提案されている解決策にせまる。第二回となる今回は、国を越えた戦略作りの事例を紹介する。第一回では以下の内容を取り上げた。
欧州化学品庁の取り組みは、マイクロプラスチックの削減に向けた段階的なアプローチの一例だ。科学的証拠の分析が始められたのは2017年。目的は、意図的に製品に加えられるマイクロプラスチックについて、欧州連合(EU)レベルでの適正な規制を提案することだった。プラスチックは、ほとんどがリサイクルされず、埋め立てられるか焼却されている。
プラスチック包装は、リサイクルしようとしても難しい場合が多い。黒色の食品トレーや、プラスチックでコーティングされた紙のコーヒーカップなどがその例だ。
プラスチックを飲み込んで死んでしまったアホウドリのひな。「太平洋ごみベルト」で発見された
ダンカン・ライト(米国魚類野生生物局)
2019年、こうした状況を問題視した欧州化学品庁は、EU域内で販売される製品に含まれるマイクロプラスチックを規制する計画を作成した。環境中に放出されるマイクロプラスチックを減らす、または完全になくすことを目指すものだ。現時点では、マイクロプラスチックの放出を20年間で50万トン減らすという目標が提案されている。
サーキュラー・エコノミー(循環型経済)
EUの「プラスチック戦略」には、リサイクル、つまりプラスチックをごみとして埋め立てるのではなく再利用することも含まれている。より広い視点で見ると、これはサーキュラー・エコノミーを目指す戦略の一部でもある。
サーキュラー・エコノミー(循環型経済)とは、簡単に言えば、資源を使い続けることによってごみをなくすことに重きを置く経済モデルだ。リユース(再利用)、シェアリング(分かち合い)、リペア(修理)、リファービッシュ(整備)、リマニファクチャリング(再製造)、リサイクル(再利用)などがキーワードになる。
こうしたキーワードが示す活動を通じて目指すのは、クローズド・ループ・システム(閉じた範囲内で資源が循環するシステム)の構築だ。つまり、システムの中に新たに入ってくる資源の量を減らし、システムの外に出ていくごみの量や環境汚染、二酸化炭素排出量を抑えるのだ。そして製品をできるだけ長く使い続けることで、新しい製品を一から作らなくてもいいようにする。
戦略
EUのマイクロプラスチックの戦略は、今後新たに開発されるプラスチック製品について、生物分解性でないポリマーの使用禁止を提案している。また、ある種の製品(充填剤など)に用いられるプラスチックの使用禁止も提案している。人工芝グラウンドに充填剤として用いられる粒状のゴムチップは、EU域内で最大のマイクロプラスチックの排出源だ。
レバノンの海辺に散らばるプラスチックなどのごみ
ジョセフ・イード(AFP/File)
戦略では、プラスチックの製造や、マイクロプラスチックの排出に関する新たな規制についても提案している。
スケジュール
EUでは、域内市場のすべてのプラスチック包装を2030年までにリサイクル可能なものにすることを目指している。環境活動家からは、それでは遅すぎるという声もあるが、少なくとも一つの目標にはなる。そして目標があれば、それに向けて一貫性のある計画を立てることができる。
この記事は、Digital Journalで執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。