市場に出回るエコ商品を見分けるためのキーワードと危険信号を専門家が分析
再生紙でできたコップに温かいコーヒーを注いでホッとひと息
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近年、サステナブルな商品の製造や購入への意識が一気に高まり、商品の認証ラベル自体の信ぴょう性が疑われることも増えてきた。もっと環境に配慮した買い物をしたいと思っても、一体何から手をつけたらいいのだろう? サステナビリティとは何を意味し、どんな特性があるのかを把握するのも難しいのに、どうすればサステナブルな商品を見分けられるのか? グリーンウォッシュ(実際は行なっていない環境保護への取り組みを偽装すること)を見抜き、真にサステナブルな商品がどういったものかを知るため、買い物をする際に、さまざまなカテゴリーで環境に配慮した商品を見極めるコツを専門家に聞いた。
実際のところ、サステナブルな消費者であるとはどういうことか
もっとサステナブルな暮らしをしていきたいと思うなら、日々の消費を見直す必要がある。原産地はどこで、材料はどのように調達され、どのくらい長持ちするのか、再利用やリサイクルはできるのか、何を買う時も、そういうことを知ろうとしなければならない。
「サステナビリティとは、地球とそこに住む生きものに配慮することだと考えています」 そう話すのは、サステナビリティを追求し、執筆や講演を行うジテマリー・ヨハンセンだ。「具体的には、材料の調達や自然資源、生産にともなう廃棄物、化学物質の使用、廃水管理、輸送、製品寿命、処分、リサイクル、そうした多くの要素を考慮して、ものづくりをし、買い物をすることを指します」 ヨハンセンは、オンラインで各種講座を提供するサイトTilleoで、サステナブルな暮らしの専門家として、より環境にやさしい生活について伝えている。
環境にやさしい商品の特徴を見極めるよりも先に、まずするべきこととしてヨハンセンがアドバイスするのは「しないこと」だ。必要のないもの、サステナブルな生産や調達が行われていないものは、まず買わない。もしサステナビリティに関する法律を作るなら、その第一条にくるのが「有害な商品には『ノー』を突きつける」になるだろう。
やむを得ないグレーゾーンを知る
できるだけサステナブルに生きる術を身につけることは、その意味するところを繊細に感じ取るということでもある。ヨハンセンは、かならずしもすべてが白黒はっきりしているわけではないと言う。完全にサステナブルだと言えるようにするには、それが作られ、使われる過程、その中で生じる影響といったあらゆる段階がサステナブルでなければならない。本当の意味で、すべての点において100%サステナブルな商品などあり得ないのである。なぜなら、商品のライフサイクルのどこかで無駄が生じてしまうのは、まず避けられないのだから。
たとえば、ラジャン・ロイが手がけるニュースレター「Sustainability x Fashion」では、特にファッション業界におけるサステナビリティの具体的な意味合いを、深く掘り下げている。「ひとつひとつの商品が及ぼす環境への影響を評価すると、矛盾だらけで、非常に込み入っています」とロイは言う。「Tシャツ商品をオーガニックコットンに切り替えるとして、そのコットンの生産に必要な水の消費についてはどう考えればよいのでしょう? 再生プラスチックを原料とするレギンスを売り出すとして、製造元からの輸送による影響については?」
とはいえ、より環境にやさしい生活を目指すのなら、サステナブルな商品を見極めて買うなど、その場その時にできる小さなことを積み重ねていくしかない。結局、私たち消費者ができることは、商品が環境に及ぼす影響の全体像を調べ、それを軽くする方法を見出すことに尽きる。「エコ」や「環境にやさしい」と謳うだけのラベルに、何も考えずに飛びついてはいけない。サプライチェーンをさかのぼったその先、環境への影響が生じ始めるところが出発点だ。関心を持って、情報を集めること。そして、プラス面とマイナス面を、賢くはかりにかけよう。
販売戦略の意図を読む
ブランドや商品の販売戦略をよく見てみると、そこに潜むサステナビリティの矛盾を示す危険信号が見えてくる。
買い物時に立ち止まるべき危険信号の例:
- 大手ブランドの商品は、大量生産を行っている性質上、あまりサステナブルでない。
- グリーンウォッシュ:商品のラベルに「環境にやさしい」、「エコ」、「サステナブル」と書いてあっても、詳しい説明や記載がなければ、疑いの目をもってよく調べること。
- 「アップサイクル(付加価値を高めつつリサイクルすること)」に関する記載のないプラスチック容器包装。
- 聞いたことのない原材料は、環境に負荷のない、サステナブルなものであるとは到底考えにくい。
- 遠く離れた場所で作られたもの:輸送が必要になるため、その過程で多くのCO2排出量されてしまう。近くで生産された商品を選ぶようにしよう。
- パーム油、マイクロプラスチック、パラベン、合成繊維を含むものは避けること
サステナブルではないブランドや原材料、商品を比較的避けやすいのは美容業界だ。買い手にとってありがたいことに、美容ビジネスではサステナブルなものづくりや基準に関する教育を重視する傾向にある。
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海洋保全の取り組みを軸に、安全で環境に配慮した美容商品を展開するブランド「One Ocean Beauty」の担当者は、大体の目安として「遺伝子組み換え作物(GMO)やパラベン、硫酸塩、フタル酸類、ポリエチレングリコール類、ナノ粒子、鉱油、合成香料は、人体に有害なだけでなく(毒性があり、肌荒れやホルモンバランスの乱れ、ガンなどの原因となる)、環境にも良くないため、お客様には避けるようにご提案しています」と言う。このブランドは、さまざまな海洋活性物質を使って製品を作っているが、欧州の基準に準拠し、1400種類の有害成分の使用を禁止・制限している。
まずは疑問を持つこと。そのスキンケア用品やクリーム、化粧品には、地球環境を永久に傷つけてしまうような着色料やマイクロプラスチック、有害化学物質、香料は含まれていないか? 分からなければ、詳しく調べよう。
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大事なのは、信頼性と透明性
透明性は、真にサステナブルであることを決定づける特性の一つである。「透明性を求めて、疑問を投げかけ、生産や調達についてまとめた動画をチェックし、各種証明書の提示を求めましょう」と話すのは、女性向けのアスレジャー(普段着としても着ることができるスポーツウェア)ブランド「Port de Bras」を立ち上げたクラリッサ・エガナだ。(業界を問わず)サステナブルなブランドは、ウェブサイトや各種メディア、ときにはお客様との直接のやりとりを通して、その理念やプロセスを包み隠さず積極的に伝えようとする傾向がある。サステナブルであることを自ら語る企業なら、環境に関する取り組みや方針をすべて公開するのが当然で、その内容は、Google検索ですぐにチェックできるようにすべきだ。
エガナは2015年にブランドを立ち上げ、それ以降、自社のサプライチェーンを通じて生じる影響の最小化に熱心に取り組んできた。「大事なのは、大きな視野で考えること。『悪影響をどこでどのように減らせるか』だけではなく、『どこでどうすれば、コミュニティに良い影響を与えることができるか』も考えるのです」と彼女は言う。
エガナは、地元で原材料を調達し、必要に応じて雇用機会も提供する。また慈善事業への協力や植林のほか、できるかぎりアップサイクルも行っている。こうした価値観や活動のあり方こそ、ブランドに期待されるものだ。
原料の調達や生産の基準について十分に情報開示を行っているファッションブランドといえば、「Pangaia」、「Mola Sasa」、「allSisters」もそうだ。ほかにも、だいたいは規模が小さめだが、誠実にサステナビリティを実践しているブランドもある。責任あるものづくりを行うデニムブランド「G-Star Raw」は、地球にやさしいファッションの未来のために、今のやり方に代わる別の方法を追求し続けている。フランスの老舗バックブランド「ロンシャン」は、最新のコレクション「グリーンディストリクト」で再生ナイロン糸「ECONYL(エコニール)」を採用するなど、素材への投資を通じて環境に配慮した取り組みを進めている。
場合によっては、環境にやさしいブランドを見つけるのに苦労するかもしれないが、そういうブランドからは、たいてい似たようなこだわりを読み取ることができる。
次のキーワードは、良い特性と考えていい:
- 自然/オーガニック
- 生分解性繊維
- 環境対応包装
- 地元産
- エシカル生産
- フェアトレード
- 職人工芸品
- スロープロダクション
- 欧州の環境規制に準拠(通常、米国よりもかなり厳しい)
- 受注生産
- アップサイクル/長寿命/高耐久性(代表例:ECONYLナイロン糸)
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注目すべきは、第三者機関の認証を受けている商品やブランド
「エシカルでサステナブルなものづくりをしていることを証明する第三者認証に注目しましょう」とヨハンセンは言う。商品のラベルやパッケージなど、目につきやすいところに認証マークがついているものもある。たとえば、食材を選ぶなら、自然栽培や非GMO認証取得を謳っている商品、USDA(米国農務省)のオーガニック認証マークをはじめとする信頼できるラベルの付いた商品を選ぶといい。(サステナブルな食品ブランドを見分ける方法についてはこちら、生鮮品でも冷凍品でも、サステナブルな海産食品を買う詳しい方法についてはこちらでチェック。いずれも英文サイト)
洗剤や日用品の買い物なら、米国のエコマークGreen Sealやカナダの環境ラベルECOLOGO認証、動物実験が行われていないことを証明するリーピング・バニーの認定マーク(化粧品にも使われる)など、厳しい基準を満たした商品であることを証明する公式マークを探そう。
それでも多くの場合、どのような品質認証を受けた商品であるかは、ある程度調べなければ分からない。たとえば、ワイン・蒸留酒業界のサステナビリティに関する取り組みは分かりづらい時があるが、取り組みが行われていないわけではない。実際は、ワイン・アルコール業界でも環境に配慮した素晴らしいものづくりを行っているブランドは多いが、それを大々的にアピールしていないのだ。スコッチウイスキーを代表する「マッカラン」は、数年前、再生可能エネルギーを主な動力源とする新しい蒸溜所を建設した。フランスのコニャックメーカー「レミーマルタン」は、取引先の農家の85%で高環境価値認証(フランス政府による農業の認証制度)を獲得している。
ワインでは、カリフォルニアのワインメーカー「ボンテッラ」が、自然栽培ワインの先駆者として、有機・バイオダイナミック農法を率先して実践してきた。「責任あるものづくりを行っていることを分かりやすく伝えるため、当社のワインには、『有機ブドウを使用』と記載したり、カリフォルニア州の認証機関CCOFの有機認証マーク、ドイツの有機農業団体デメターによるバイオダイナミック農法の認証マークを表示しています」と説明するのは、ボンテッラのワイン醸造家ジェフ・チチョーキだ。「このような認証は、外部の管理機関が当社の事業のあり方を認定するものであると同時に、サステナブルな品質に対する責任が当社にあることを意味するものです」 ワインや蒸留酒のサステナブルな側面は、店頭で簡単には分からなくても、調べれば分かることも多い。
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隠れたサステナブルブランドを見出す
サステナブルな商品とはどういうものかが分かってくると、間違いなくサステナブルなのに、そのことを大々的に謳っていないブランドを見分けられるようになる。「Poglia」は、全ての過程においてサステナブルで、コレクター心をくすぐる商品をオーダーメイドで展開するライフスタイルブランドだ。創業者のマックス・ポギーラは、素材や技術、製品の品質からその価値を感じ取ってほしいと考えている。インテリアブランド「Meso Goods」と「Artistic Tile」も、環境に配慮した商品であることを明示するだけで、派手に宣伝したりはしていない。
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一番大切なこと
結局、買い物は私たちの生活の一部にすぎない。本当の意味で地球にやさしい生き方をするには、ライフスタイルそのものを変えていく必要がある。
「それぞれが取り組める範囲で、よりサステナブルに生きるためにもっと手軽にできること。使い捨てプラスチックの利用をやめることもそうだし、菜食中心の食事にしたり、出来合いのもので済まさずに食事を手作りしたり、ゴミ拾いをしたり、意欲的な環境政策を掲げる政治家に投票したりすることもそうです。家では食べ物を無駄にしないとか、ファストファッションをやめるとか、地元の企業や規模の小さい個人事業を応援するのもいいでしょう」とヨハンセンは言う。
まずは、環境に有害なプロセスを拒否すること。そして、地元に根差し、少量生産を支援し、できるだけ地球から無理なく得られる資源を使うようにして、未来の世代に借りを作らないことだ。
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この記事は、Real Simpleのアンジェリカ・ポコバが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。