最近発表された研究によれば、欧州と北米におけるマルハナバチの生存率は、わずか30年ほどの間に平均で30%以上も減少した。

地球の気温が上がり、雨の降り方がますます極端になっていく中で、マルハナバチは環境にうまく適応できない可能性がある。その上、熱波や干ばつが予想される地域は極度に乾燥するだろう。そうした環境では、マルハナバチの餌となる花々もしおれてしまうかもしれない。

2020年2月7日発行のサイエンス誌に掲載された最近の研究によれば、1975年から2000年の間に、マルハナバチの生存率は欧州では平均で17%、北米では約46%下がった。

カナダのオタワ大学の研究者たちは、北米と欧州の全域に生息する66種のマルハナバチが減少する可能性を推定するモデルを構築した。予測には気温と降雨量に対するそれぞれの種の耐性が計算に組み込まれているが、地球温暖化によってそうした条件はますます厳しくなっている。

研究チームは20世紀と21世紀のそれぞれの個体数データを比べて、生存率の低下を計算した。結果は、あまり楽観できるものではなかった。低下のペースは大量絶滅に向かっていた。マルハナバチは数十年のうちに姿を消すかもしれない。

「子どもの頃に野原や森を駆け回って、ハチなどの虫を探すのが好きだった人は多いと思います。でも、今、虫を探しに出かけたら、数がだいぶ減っていることに気付くでしょう」と語るのは、上記の研究論文の著者でオタワ大学生物学科の博士課程の学生であるピーター・ソロアイだ。

今回の予測では、気候変動がもたらすマルハナバチの減少に関するこれまでの研究が、とりわけ欧州の減少の幅を控えめに見積もりすぎていた可能性がある、とも指摘している。

研究チームが注目したのは、高温になる頻度が高いと、ハチが新しい場所にコロニーを作る能力が損なわれ、局所的な絶滅のリスクが高まることだ。その原因は研究者たちにもはっきりとは分かっていないが、おそらく暑さによってハチの代謝が弱まり、餌とする花も見つけにくくなるからだと考えられている。だから、気温上昇が激しい地域ほど、ハチの受ける被害は深刻になる。

自然界全体が、特にあらゆる昆虫が、過去に例を見ないような絶滅の危機に直面している今、マルハナバチの例はほかの重要な生物の多様性も失われる兆しを示しているのかもしれない。

「マルハナバチは寒冷な気候に適応するように、体が大きくふさふさと毛が生えています」と述べるデーブ・ゴールソンは、イギリスのサセックス大学でマルハナバチの生態学と保全を研究する生態学者だ。他のほとんどの昆虫と違い、マルハナバチは比較的涼しい気候の地域に生息し、暖かい地域で目にすることはあまりない。そういう場所では体が熱くなりすぎるのだ。だからマルハナバチは、地球温暖化に対する備えがあまりできていない。

気候変動による危険が押し寄せつつあるのに加え、マルハナバチは、農薬の利用や農業の集約化といった人間の活動からの直接的な被害も受けている。ネオニコチノイド系農薬がマルハナバチの飛行距離を短縮することや、受粉を妨げる可能性があることを示す研究もある。

マルハナバチは人間にとって大事な生き物だ。大自然に生きる最も優れた花粉媒介者であり、カボチャやトマト、ベリー類などの作物を受粉させることについては最も優れた昆虫なのだ。世界の作物の35%が、花粉を運ぶハチなどの昆虫の力を借りている

ソロアイは以下のように述べている。
「私たちの研究結果は、マルハナバチの数が今よりもだいぶ少ない未来を示すものです。多様性も今よりずっと少なくなるでしょう。野外でも、私たちの食卓においてもです」

一方で明るい話題もある。気候変動による気温の変化が種の耐えられる範囲内である場合には、マルハナバチの個体数は増えるかもしれないと研究チームは予測している。例えば、スカンジナビア諸国にいるマルハナバチの一部は北極圏に移動している。ハチを保全する取り組みの未来は、一般市民の意識にかかっている。近年、市民の意識は高まりつつあるが、それでも、大半の人はハチが直面する危機について十分に理解していない

この問題が広く注目を集めたのは、近年、ハチなどの飛ぶ昆虫の個体数が急減していることを、2017年にドイツの研究者が大きく取り上げたからだ。この研究が発表されるまで、気候変動が昆虫にもたらす脅威について考える人はほとんどいなかったと、ゴールソンは言う。

これはもっと注目すべき問題だと、彼は考えている。「ほとんどの人は、環境がどれほど重大な局面にあるのか、昆虫の減少が全人類にどんな影響与えるか、いまだに理解していないと私は思っています」

本記事はPopular Science誌に掲載されたものです。

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Researchers from the University of Ottawa created a model to estimate the likelihood of bumble bee decline among 66 different species found throughout North America and Europe.

 

この記事は、Popular Scienceよりモリー・グリックが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。