循環型経済、サーキュラーエコノミーという考え方が注目を集めている。こうした世界的な流れの中、全国産業廃棄物連合会は、2018年4月、全国産業資源循環連合会へと名称を変更した。産業廃棄物の適正処理と資源循環への取り組みを推進し、地球環境保全に力を尽くす同連合会。青年部協議会・会長の沖川 学氏に、その活動内容を聞いた。

業界自体がSDGs

産業廃棄物処理業の業界団体の若手メンバーで構成される全国産業資源循環連合会 青年部協議会。会長の沖川 学氏は「私は常に『ごみ屋らしくない、ごみ屋』を目指すべきだといっています」と話す。一般市民の廃棄物処理事業者へのイメージは、それがリサイクルであろうが、埋立てであろうが、すべて『ごみ屋』なのだ。

「連合会の名称が変わっても、市民のイメージは変わらない。変えるためには、私たち自身が『ごみ屋らしくない、ごみ屋』になる必要があるのです」

若者が入りたいと思える会社、誇りを持って仕事のできる会社、働きやすい会社にしたいと沖川氏はいう。業界のイメージを払拭するためには、まず社内から変えていく必要がある。

「SDGsといいますが、私たちの業界自体がSDGsそのものといえます。我々が最先端だという気概を持って、社会貢献を通常の業務からやっていることを、外へも発信していくことが重要かと思います」

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全国産業資源循環連合会
青年部協議会 会長 沖川 学 氏

香川県高松市でリサイクル業を営む『リソーシズ』の代表を務める沖川氏。25年前、父親が脱サラし、産業廃棄物処理業界に入ったという。沖川氏の会社の名刺には、『CSV推進企業』の文字が刻まれている。同社では、地域貢献やボランティアなどCSRの活動に加え、地域の課題をビジネスで解決する、CSVの活動にも早くから力を入れてきた。

そのひとつが障害者雇用。『リソーシズ』には現在75名の社員がいるが、うち20名が障害者だという。最初の雇用は約15年前、会社近くの養護学校の先生に依頼されたのがきっかけだった。

「当時は社員30~40名。少数精鋭でやっている中で、怪我をされても困るし誰が面倒を見るのかと、正直、私は反対しました。しかし、父は『ええやないか、地域貢献だ』と…。最初はできる業務をしてもらっていましたが、一生懸命真面目にやるので、だんだんレベルが上がって。ボランティアで雇用したつもりが、しっかりと戦力になるようになりました。最初に18歳で雇用した子は今33歳で、立派なベテランです。今では彼らがいないと会社が回らないので、会社も地域もWin−Winになっています」

毎年、2名、3名と雇用を続け、15年で20名の雇用。現在では、中学のうちから実習に来て業務を経験した上で、会社に合う生徒を高校卒業のタイミングで採用するカタチをとっているという。

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リソーシズでは、工場見学などもさかんに行なっている

災害時初動マニュアルを作成

全国産業資源循環連合会の青年部として近年力を入れているのは、災害時の対応だ。自然災害が多くなる中、災害発生時の災害廃棄物処理の円滑、迅速な処理などが、地域社会から求められている。

青年部では災害委員会をつくり、東日本大震災、熊本地震、西日本の豪雨などを経験したメンバーにヒアリング。

「災害ごみの処理も大事だが、災害が起きたら会社に来いといわれても、家族の安否確認ができない中で会社には行けない」といった、現地の生の声を収拾。それを活かした『災害時初動マニュアル』を作成し、今年7月に開催された通常総会で発表した。

「災害地にいるということは、自分たちも被災しているということです。まずは、一番小さなコミュニティである家族の安否確認をいかに取るか。災害時に家族の集まる場所を決めるといった家庭ごとのルール作りの重要性を示した防災マニュアルになっています」

親会との関係については、「これからは連携が大切な時代になっていきます。青年部をもっと使ってほしい」と話す。

親会は、これまで築いてきたネットワークをフル活用し、地元行政や国に声を上げる。その下で、労働安全、災害などの実務が絡んでくる部分は、若い青年部が汗をかくといった関係を理想とする。

「建築や土木、トラックなどの連合は、バックボーンが非常に力を持っています。そこに業界として肩を並べていくためには、親会と青年部の両輪で業界を回していく必要があると考えています」

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青年部では、緊急事態訓練や清掃活動などを行い、メンバーどうしの絆を強めている

本当の意味での資源循環が必要

中国の廃棄物輸入規制などで、廃プラ問題が大きな問題となっている。

「我々が便利を追求した結果が、今に繋がっています。廃プラを海外に輸出できなくなって、私は良かったと思っています。廃棄物を発展途上国に送ることでは、何の解決にもなりません。本当の意味で循環をしない限り、海洋汚染もなくならない。今の便利な社会自体が地球環境を悪化させている。不便さの中に未来があるかなと思っています」

環境に終わりはない。製造者責任としては、モノを作る時から廃棄物になることを考え、便利なものではなく、環境に負荷のないものを作っていくべきといえる。

「経産省や厚労省は、新しい製品ができたタイミングで、『環境負荷、リサイクルの仕組みが確立しない限り製品として出してはいけない』といったルールを整備することが必要かと思います。また、そうしたことを、製造者も消費者も考えていかなければならないと思います」

この記事は、環境ビジネスオンライン 2020年03月30日号より、アマナデザインのパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせは、licensed_content@amana.jpにお願いいたします。