先ごろ、米モンタナ州ハヴァー市に住むドリュー・ニューフィールドは、廃水処理に革新的でサステナブルな手法を取り入れ、環境保護庁(EPA)に認められた。

ハヴァー市の廃水処理施設でマネージャーを務めるドリュー・ニューフィールドは、これ以上税金を使うことなく、廃水処理の性能を上げる方法はないかと探していたところ、思いがけない解決策を見つけた。地元のビール醸造所から出る廃棄物を使う方法だ。

ニューフィールドが働く廃水処理施設では、1200万ドル(約13億円)で設備を改修したばかりだった。しかし、微生物の力を借りて廃水からリンや窒素を取り除く「栄養塩除去システム」の改善はできなかった。栄養塩が残っていると、アオコ(青粉)が発生し、地元でとれる魚が激減する可能性がある。そのため、栄養塩の除去は欠かせない。ニューフィールドは、人口1万人の小さな市に住む人々に、これ以上税の負担をかけずに済む解決策を求めていた。そこで、自然の力を借りて栄養塩を除去する方法を見つけるため、さまざまな発酵有機物を調べ始めた。

「まず、近所のカフェに行って、コーヒーかすをもらえないかと聞いてみました」とニューフィールドは言う。「エスプレッソのコーヒーかすを何袋か廃水に入れてみました。バクテリアの力でコーヒーに含まれるカフェインを分解する方法を教えてもらったのです。それこそ、廃水から栄養塩を取り除くために求めていた方法でした」

やがてコーヒーかすが手に入らなくなると、ニューフィールドは、別の飲み物に目を向けた。ビールだ。醸造したあとに残る大麦のかすも発酵したものだと知り、地元で醸造所を立ち上げたばかりのマイケル・ギャリティに電話をかけた。

「ギャリティはトリプル・ドッグ醸造所を立ち上げる前、市の職員をしていて、私の挑戦に全面的に協力してくれました」とニューフィールドは言う。「彼の方も、醸造廃棄物がトレーラーの床を浸食して穴をあけてしまうので、どうにかしなければと考えていたのです」

醸造に使われた大麦には、酵母、糖、ホップが大量に含まれており、廃水処理施設では、窒素やリンを取り除く微生物の働きを邪魔してしまう可能性がある。そのため実際には、醸造ビジネスの成長が、その地域の廃水処理施設の脅威になる可能性もある。ニューフィールドは、とりあえず醸造廃棄物を少しずつ使い始めてみた。それ以来、市の支出を年間何千ドルも節約し続けている。

「最初のうちは、みんな私のことを頭がおかしいと思っていました。でも、大麦は完全に分解し、消えてしまうのです」とニューフィールドは説明する。「大麦は、廃水処理の過程で、あらゆるバクテリアのエサになります。バクテリアは、エサがなくなるまで食べつくしてくれます。出来たてのビールを使ったら、バクテリアが喜んでいましたよ」

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ニューフィールドが市の廃水処理に醸造後の大麦を利用し始めて3年になる。その間ずっと、EPAが廃水処理施設に求める条件を満たしてきた。さらには、この新しいアイデアで廃水の質を改善し、施設全体の信頼性を向上させたとして、ハヴァー市はEPAの表彰も受けた

「栄養塩除去の基準に合うよう、別の方法でこうした化学的処理を行うには、莫大な費用が必要ですが、醸造廃棄物を使えばタダでできます」とニューフィールドは説明する。「ミョウバン(廃水処理に使う薬品)だけで年間1万6000ドル(約170万円)以上の削減になります」それだけでなく、施設の改修が不要になったおかげで大きな節約にもなった。

ニューフィールドの革新的な取り組みは、ほかの自治体にも影響を与え、地元の醸造所から出る廃棄物を用いた試みが広がっている。つい先日、ニューフィールドはカナダのマニトバ州にある廃水処理施設の人々に自分のやり方を説明したところだ。ここ2、3週間は、同様の施設やマスコミから、毎日問い合わせの電話がかかってくる。施設の改修が必要なのに財源がない地域にはピッタリの方法です、とニューフィールドは伝えている。

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この記事は、EatingWellのローレン・ウィックスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。