ハイチに住むローズ・ボンクールは、ガリガリに痩せた二人の幼い女の子を質素な自宅に連れ帰った。彼女は、子どもたちを孤児院から救い出だそうと奮闘する一人だ。
「頭がおかしいんじゃないかとよく言われます」とボンクール。彼女の名前は「善良な心」という意味を持っている。
南北アメリカ大陸の中で最も貧しい国の一つであるハイチでは、人身売買や、ひどい場合には虐待まで起こるような児童保護施設の闇から、子どもたちを救い出す取り組みを進めている。
これまでハイチ国内の120の家庭が、行き場のない子どもたちを自宅に迎え入れた。
ボンクールが迎えたのは、8カ月と3歳の姉妹だ。この里子たちに食事や衣服を与えるための経済的支援は、一切ない。そのため、彼女は二人のためにお下がりの服を譲ってもらえないか、まわりの人に聞かなければならない。
「自分の子ではないのになぜお金を使うのか、理解されないこともあります」とボンクール。彼女の実の娘は、里子の二人を本当の姉妹のように思っている。自慢の娘だと彼女は言う。
孤児をめぐるさまざまな問題が生じるきっかけとなったのは、2010年にハイチを襲った壊滅的な地震だ。死者は25万人を超え、首都のポルトープランスは大きな被害を受けた。
地震の後、孤児院などの児童保護施設の数は倍以上に増えた。
ハイチにはそうした施設が現在754カ所あるが、そのうち、IBESRと呼ばれるハイチ政府の児童社会福祉機関の認可を受けたものや認可申請中のものは50カ所ほどしかない。
ハイチ政府は、これ以上無認可の施設が開設されないように対策を始めたところだ。
-売春、臓器売買 –
またハイチ政府は、国際養子縁組を受ける子どもたちを守るための国際協定にもついに署名した。
かつてのハイチでは、他国の者が自国民を養子にとる際には、ハイチ国内の孤児院に行って院長と話をつけるだけで済んだ。IBESRは、成立した養子縁組を登録する機関として、最後に関与するだけだった。そう語るのは、IBESRの理事長を務めるアリエル・ジーンティ・ヴィレドローインだ。
現在ではIBESRが養子縁組のプロセスで指揮をとり、子どもたちの里親を決めている。「そうすることで、人道に反する行為をある程度防げるんです。今まで、売春や臓器売買の話を持ちかけられたこともあったので」とヴィレドローインは言う。
国が養子縁組に国が関与することは、自分の子どもを孤児院に引き渡す親が悲しみに暮れる事態を避けるためにも重要だとされる。
「親が子どもを孤児院に託すときに、場合によっては、何が書いてあるのかも分からないまま書類にサインすることもあるんです」とヴィレドローイン。
彼女が言うには、我が子がすでに養子にとられて国を出たと知って取り乱す母親もおり、児童福祉機関がその対応にあたることもよくあったようだ。
ハイチ国内には孤児院で暮らす子どもが2万7000人いるとされる。そのうち、少なくともどちらかの親が生きているという子どもは80%にのぼる。
– 孤児院の資金 –
実は、一部の孤児院には十分な資金の余裕がある。それなのに、極度の貧困で家族がバラバラになり、親から離れて暮らし続けることを余儀なくされている子どもたちがいる。ハイチ国内の児童福祉団体はそれを残念に思っているという。
ハリー・ポッターの作者J・K・ローリングの名声を生かして創設された「ルーモス」は、孤児たちが実の両親と再び暮らせるように支援するNGOだ。この団体が2017年に発表した内容によると、ハイチ国内にある孤児院のたった3分の1だけでも年間7000万ドル以上の寄付金を受け取っている。
「7000万ドルですよ。これだけのお金があれば、子どもたちが実の両親と暮らせるように支援できたと思いませんか」とヴィレドローインは言う。彼女の所属するIBESRの年間予算は、100万ドルに過ぎない。
ユニセフも各国政府に対し、考え方を改め、家族が一緒に暮らせるように資金を使ってほしいと呼びかけている。
「孤児院で1年過ごすごとに、その子の心理認知能力の発達が3~4カ月遅れるという研究結果があります」とユニセフ・ハイチ事務局のマリア・ルイーザ・フォルナーラ代表は語る。
2010年の大地震の後、各国から孤児院に支援が寄せられるようになった。その一方で、ハイチに住むクレディオン家は、里親になる決意を固めた。
かつての里子たちは、すでに巣立っていった。
そして現在は、ジェスリー(10歳)とフェジアナ(11歳)の二人の女の子を育てている。
「あのひどい経験を生きて乗り越えると、人のありがたみが分かるようになります」とソロン・クレディオン。「この子たちは、幼いんです。貧しいのは、この子たちのせいではありません」。二人の子を実の娘のように思っているクレディオンは、そう語った。
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