ジンバブエ南東部、チレジ近郊のムクワシンにあるサトウキビ農園。焼けつくような日差しが無情に照りつける日曜の朝、近くの教会からは心地よい賛美歌が響いている。

農園のそばで暮らす子どもたちの多くが日曜学校へ通い、聖書の物語を聞く時間だ。

しかし、9歳のタピワ・ムンベレンゲ(仮名)*にとっては、いつもと同じつらい一日だ。ボロボロの服を着て、擦り切れたプラスチックの靴を履いたタピワが、うず高く積まれたサトウキビの間から顔を出す。まだ幼い少年だが、この農園でもう半年も働いている。

2017年に両親を亡くし、仕事を探さなければならなくなったとき、彼はまだ7歳だった。年老いた祖母と暮らしながら、今も生活のために働いている。

汗だくになりながら、タピアは間に合わせの刃物を力いっぱい振り回す。背丈の倍も高さがあるサトウキビの茎を、たたき切っている。

「学校には行ったことないよ。やってるのは、これだけ」と、タピアは恥ずかしそうに言った。「おばあちゃんの手伝いをしてるんだよ。ぼくがやらないと、二人ともお腹を空かせて死んでしまうから。おばあちゃんは、ぼくにひもじい思いをさせたくないから、働きなさいと言うんだ。仕事は大変だよ。病気になることもあるし」

タピワは祖母にうながされ、この『マリチョ(単調で退屈な仕事)』を手伝うようになった。祖母とタピワに支払われる賃金は、二週に一度、一人2ドルだ。

収入は食べ物やせっけんを買うために使われる。「いつか学校に行きたい。それで、おばあちゃんが欲しいものを買ってあげるんだ」とタピワは話す。

これが、プランテーションで働く最貧の少年の日常だ。ムクワシンの農家は、ジンバブエのサトウキビ産業を支える労働者を不当な低賃金で働かせたとして非難された。収穫期の農家では、安い人手を必要としている現実がある。

サトウキビ畑の向こうで、子どもたちが池に放った漁網を代わるがわる持ち、夕飯用のカペンタ(煮干しに似た小魚)を引き揚げようとしている。どの子もサトウキビ農園で働いたことがあるという。

学校が休みに入ると、子どもたちはたった10ドルの月給を得るために、サトウキビ農園で働く。

「授業料が必要なときは、マリチョに行かないといけない」と、ある少年は言った。「教科書とか学校で必要なものを買うお金が家にはないから、一生懸命働かないと」

ジンバブエ先進農業関連産業労働組合によると、サトウキビ農園の労働者の月給は180ドルである。

プランテーションには、毒ヘビや健康を損なうさまざまな危険が潜んでいる。しかし、タピワくらいの年齢の子どもは、防護服を身に付けずに働いている。

昨年、ヒッポバレー高校の女子生徒が、チレジのサトウキビ畑で起きた火災に巻き込まれて焼死した。

14歳のモーゼス・シラング(仮名)*は、1年間無給で働いた後に農園の仕事を辞めたという。

今は牧場での家畜の世話の仕事をしているシラングは、農園の雇い主は賃金を支払わなかったと語った。「ただ働きだったので、辞めるしかありませんでした。口約束だけで、一度もお金をもらっていません。この国では子どもが不平等な条件で働かされています。ぼくと同じ年頃の子どもには逃げ場がなく、プランテーションでひどい扱いを受けています」

ムクワシン・サトウキビ農園の労働者の大半は、故ロバート・ムガベ大統領が2000年に行った土地改革政策により再定住した農民だが、近年、児童労働が横行している。

2018年9月に発行された米労働省の報告書によると、ジンバブエの子どもが従事している仕事は、鉱業や農業などの児童労働としては「最悪の部類」に入るという。

報告書では、ジンバブエの経済状況の悪化が児童労働を増やす一因となったと指摘している。基礎教育の機会が与えられないことで、リスクがさらに広がる恐れもある。

児童労働の報告が相次いでいることを受けて、政府は調査を開始すると宣言した。実入りのいい砂糖ビジネスの行く末が揺れている。

労働・社会福祉大臣のセカイ・ンゼンザは、次のように語った。「この事態を心配しています。子どもの権利条約の署名国でもあるジンバブエの労働・社会福祉省としては、事態の進展に高い関心を寄せています。児童労働を終わらせるためのプログラムも実施中です。子どもたちを確実に守っていくため、喫緊の課題として調査を進めていきます」

ジンバブエ・サトウキビ農家振興協会会長のエドモア・ベテライは、同協会では農家に対して子どもの雇用を禁止したと言う。

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「児童労働の話はときどき耳にします。人々にはいつも、事実を話すように伝えています。仕事を求めて訪れる人は…子どもをよく連れてきますが、子どもは関係ないはずです」

ベテライはこう続けた。「18歳未満の未成年者を働かせることは固く禁じています。生産した砂糖を「血の砂糖」と呼ばれるのは不本意ですから。世界中で砂糖を販売しているので、ネガティブな印象をもたれたくないのです」

5月にジンバブエは強制労働条約の2014年議定書に批准し、あらゆる形態の強制労働と闘うことを誓った。

全世界で1億6,800万人の子どもが何らかの仕事に就いている。その内、9,800万人が農業部門、1,200万人が製造業などの工業部門で働いている。

サハラ以南のアフリカは世界で最も児童労働が多く、5歳から17歳まで5,900万人の子どもが働いているという。国際労働機関(ILO)の推定によると、アフリカでは5人に1人以上の子どもが、自分の意志に反して、採石場や農園、鉱山など過酷な仕事や危険な仕事に雇われている。

*子どもの個人情報を守るため名前を変えています。

この記事は、The Guardianのチレジ在住ニャシャ・チンゴノが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。