オーストラリア・メルボルンにあるメルボルン・ガールズ・カレッジ。この名門女子高が、ごみ箱を廃止した。2019年9月からは「弁当は繰り返し使える弁当箱に詰めるか、ごみが出たら自宅に持ち帰るように」と生徒たちを指導している。
カレン・マニー校長は、各家庭で、この取り組みをきっかけにサステナビリティの視点から学校でのランチについて考え、包装の少ない商品を買うようになれば、と期待している。
「オーストラリアの国立公園に入る時と同じようなことです。持ってきたごみは、責任を持って持ち帰ってもらいます」とマニー校長は話す。
同校は、繰り返し使える容器を使用している生徒に、景品を与えるポイント制度を作った。
なお、食べ残しは生ごみ用のコンポスト容器に入れられる。教室や職員室などで使う紙のリサイクルは継続する。だたし、トイレのサニタリーボックスは廃止の対象外とされている。
メルボルン・ガールズ・カレッジはごみ箱を廃止するオーストラリア初の高校ではないのかとマニー校長は考えている。
教員のアンドリュー・ヴァンスは、同校のサステナビリティ担当チームは6カ月間、保護者や生徒とこのアイデアについて話し合ってきた、と教えてくれた語る。
ヴァンスは9年生(中学3年生)向けの海洋生物学の授業を受け持っており、プラスチック汚染が海や川にもたらす影響について生徒たちに伝えてきた。
「7月にはプラスチックフリー月間を実施しました。この期間は、どうしても必要なプラスチック製品を『ジレンマバッグ』に入れるというルールのもと、このバッグを常に持ち歩いていました」とヴァンスは語る。「ごみを出さないようにするには、どうやって歯磨き粉を持ち運べばよいか。ジレンマバッグは、新しい視点から物事を考えるきっかけになります」
校内のごみの量を調べたところ、2018年に発生したごみは埋立地954立方メートル分に相当し、処理費用13,000ドルに上る量だったとヴァンスは話す。
教員のポーラ・マキントッシュはガーディアン・オーストラリア紙に対し、「回避、再利用、責任、これらを取り組み全体のキーワードにしています。」と語った。「学校に出入りする製造業者にも、包装を減らし、生分解性で土に還る包装を使ってほしいと伝え、ご協力いただいています。ありがたいことです」
同校の生徒の保護者らも、この取り組みを支持している。
同校に通う10年生(高校1年生)の双子の娘を持つリサ・グリーンナッフは、学校のしっかりとした環境に対する方針を誇りに思っている。
「正直、最初は少し面倒だなと思いました。でも、変化に面倒はつきものですから」と語った。
グリーンナッフは、スーパーでのシリアルバーの購入を見直し、ヨーグルトは小分けのものではなく、繰り返し使える大きな容器に入ったものを選んでいきたい、と語る。家では蜜蝋を使った「ミツロウラップ」を使っている。
「少し前から娘たちは自分でお弁当を作るようになりました。学校の取り組みにも進んで参加しています。マイカップも持ち歩いています」とグリーンナッフ。
「スーパーや学校での食品の提供の仕方にもよると思うので、カフェテリアでの食事の出し方が気になりますね。瓶や缶製品の販売が続くかどうかも気がかりです」
同校に通う娘を持つナターシャ・デイビッドソンも、学校でのランチで環境に配慮することに賛成している。
デイビッドソンはTwitterに「うちの娘は喜んでミツロウラップで食べ物を包むし、弁当箱も使っている」と投稿した。
うちの学校でも何年も前からごみ箱の廃止に取り組んできたので、校庭がきれいだよ。子どもたち(親たち)も学習して、ラップに包んでくるのをやめ、何度も使える弁当箱を使うようになってきている。この取り組み、うまくいくよ。メルボルン・ガールズ・カレッジ、素晴らしいね。
— ロブ・ラッキー(@lackey_rob) 2019年8月26日
結局、埋立地行きでしょ?学校にごみ箱がなくなっても家で捨てるだけでは?
実質的に何の意味があるの?— クリス (@Chris66597915) 2019年8月26日
行動変容と環境持続可能性の専門家であるメルボルン大学のジョフリー・バインダーによると、ごみ箱廃止の成功は、どのように実行し、人々を巻き込むかにかかっている。
バインダーはガーディアン・オーストラリア紙に対し「ごみ箱廃止について、生徒や保護者を巻き込みながら戦略を立ててきたのであれば、この取り組みはかなり実のあるものになると思います」と語った。
「学校から家庭のごみ箱にごみが移るだけなら、何もしないのと同じです」
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発表のタイミングがちょうどよかった、とバインダーは言う。というのも、メルボルンのあるビクトリア州でリサイクル業者SKMが破産してリサイクル危機が起こり、さらに中国とインドネシアがオーストラリアからのリサイクルごみの輸入を禁止した時期と重なったからだ。
「学校にとってはタイミングがよかったですね」とバインダー。「引き金となる出来事が何もない状態で始めていたら、みんな意図を理解できず『何が問題なの?』と言っていたでしょう」
「実施する理由は火を見るよりも明らかでした。だから、はっきりしない状態で進めるよりも、反対意見がずっと少なく済みました」
突然何かを廃止することは、人々が問題をよりクリエイティブに考える力になる、とバインダーは言う。
「この取り組みには、大きな可能性があります」とバインダー。「学校菜園の例を考えてみてください。今では多くの学校に菜園があり、教育の一部としてうまく取り入れられているのですから」
この記事は、The Guardianのリサ・マーティンが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。