アフリカでのワクチン接種 写真提供:istock.com/Sean_Warren
ガーナでは、自分の住む地域で看護師のケアを受けられることで小児死亡率が下がり、また、貧困により教育を受けていないことによる母親たちの不利益の解消にもつながっている。
これは、ガーナ大学と米コロンビア大学、ガーナ北部にあるナブロンゴ保健研究センターの研究者らによって明らかになった研究結果で『SSM—Population Health』誌に掲載されている。この成果がアフリカの人々にもたらすよい影響が認められ、研究者らがエルゼビア社のアトラスアワードを受賞した。
ガーナでは、生まれてくる子ども1,000人のうち50人近くが5歳を迎えるまでに命を落としている。ほんの数十年前までは小児死亡率はその倍以上もあった。貧しくて教育を受けていない母親の子どもは、死亡するリスクが高くなることも分かっている。母親たちは医療施設に行く意義が分からないためだ。
「教育を受けていれば、女性は正しい選択をした上で役立つ情報にアクセスでき、子どもが生き延びられるのです」とアヤガ・バワ博士は言う。「私たちは、ガーナの取り組みが単に小児死亡率を下げるだけでなく、お金持ちと貧しい人々が受けられる教育の差から不平等が生まれる現実を改善するために、どれほど効果があるか示したかったのです」
1990年代、ガーナ大学の人口学地域研究センター(RIPS)で上級講師をしていたアヤガ・バワ博士は、同僚と共におこなった研究で、自分の地域で医療サービスを受けられるよう案内すれば、小児死亡率を下げられることを明らかにした。彼らの研究に基づき、ガーナ政府は全国に方針を打ち出し、農村でも地域医療のサービスを提供できるようにした。
だが、すべての地域で取り組みが順調に進んだわけではない。地域ごとにさまざまな調整が必要だった。しかしバワ博士はあきらめず、その数年後からプロジェクトに乗り出した。目標は、地域医療への具体的なアプローチや貧富の影響の評価について、最も良い方法を見つけることだ。
今回の研究では、1995年から2010年にかけて、5歳未満の94,599人を対象に、地域医療に介入する取り組みが死亡率に及ぼす長期的な効果を評価した。取り組みの効果を調べるために実施した方法は4つで「地域医療の普及に取り組むボランティアを育成する」「資格を持つ看護師を駐在させる」「ボランティアと看護師を組み合わせて駐在させる」「地域への介入はせず、管理のみをおこなう」というものだ。
研究では、地域で看護師のケアを受けられれば「教育を受けていない貧しい家族のもとに生まれた子どもにおいて高い」とされていた死亡リスクの差が相殺されることが明らかになった。つまり、経済状況や教育水準にかかわらず、すべての家庭で小児死亡リスクが同じになることが分かったのだ。また、地域に駐在するのが地域医療の普及に取り組むボランティアだけの時は、比較的恵まれた家庭にのみその恩恵が見られた。
研究結果から確かなのは、地域に看護師がいれば、小児死亡率が低下し貧富の格差が大きく改善されるということだ。
「この疑いようのない根拠に基づき、私たちはガーナ政府と協働し、ガーナの他の地域でもこのやり方を進めています」とバワ博士は話す。「まずはいくつかの地区でスタートし、コンセプトをしっかりと伝えます。そのための資金も確保しました。あとは、そうした地区が“学びの場”となって他の地区の見本となれば、効果はどんどん広まっていくでしょう」
バワ博士は、この制度を確立させて、ガーナだけでなくアフリカ大陸全土に広めたいと考えている。
アトラスアワードを支援する国際科学委員会は、バワ博士の研究の影響力の大きさを讃えてこう付け加える。「健康や医療サービスへのアクセスを決定づける社会的な要因が子ども(および大人)の死亡率に及ぼす影響について、重要な議論が続けられています。今回の研究は、この難しい領域の解明に役立つだけでなく『地域に根ざした看護師』という現実的な解決策も示しています。規模の拡大にも非常に適したモデルなので、より多くの国に真剣に取り組んでほしいです」
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