今、「エシカル就活」をおこなう学生が増え、SNSでも大きな話題になっている。そこで今回、学生と企業をつなぐプラットフォーム「エシカル就活- ETHICAL SHUKATSUー」を運営する株式会社アレスグッドの半井 翔汰さんと、協和キリンの若手社員3人が一堂に会し、「エシカル×働く」について語り合った。前編では、それぞれの就職活動を振り返る。 

【プロフィール】

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エシカル就活とエシカルキャリアとは?

―半井 翔汰(以下、半井):まず「エシカル就活」と「エシカルキャリア」の違いから話したいと思います。「エシカル就活」とは社会課題解決やサステナビリティを軸に、就職先の企業を探すことを指します。一方、「エシカルキャリア」とは、それを軸に歩んできた個人のキャリアのことで、エシカル就活の先にエシカルキャリアが続いていくイメージです。新卒採用の世界で「エシカル」という言葉が使われ始めたのが2021年頃ですので、ここにいる皆さんは、就活時に「エシカル就活」を意識していなかったかもしれません。ただ、社会課題への関心を企業選びの軸にされた方はいるのではないでしょうか?

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世界中に影響を与える仕事に就きたい

画像:協和キリン株式会社 中谷 友惟香

中谷 友惟香(以下、中谷)

私は「エシカル就活」という言葉は最近耳にするようになったのですが、就活では、自分がめざしたい世界観を実現するために自分が何をしたいのか、できるのかを考えてきたので、その意味では「エシカル就活」だったのかもしれません。就活では、主に2つの点を重視しました。1つ目がグローバル性です。私は、幼い頃から海外の人と働く父の姿を間近で見て育ち、漠然と憧れを抱いていました。その後、父の仕事の関係で高校時代をニューヨークで過ごしました。そこで、ディスカッションや自由な発想・発言が求められる米国スタイルの授業におもしろさを感じるようになり「将来は海外のメンバーと一緒に何かをつくりあげる仕事がしたい」という考えを持つようになりました。

画像:中谷さんが大学時代に参加した、米国での研修の様子。医薬品開発にかかわる研究機関、病院、企業、政府機関、非営利団体を訪問した。

2つ目は、大学時代に感じた医薬品の「情報」の伝え方の重要性です。薬学部の実務実習で患者さんと接していく中で、副作用への不安を持っている方、病気が完治するならどんな治療でも受けたい方、容姿に影響がある治療は受けたがらない方、家族との時間を大切にしながら生活と治療を両立したい方など、考え方はさまざまであることを学びました。この経験から、医薬品を安全に、安心して使用いただくために、正しい情報を患者さんに分かりやすく伝える、ファーマコビジランス(以下PV)の仕事につきたいと思うようになりました。

―半井:幼少期から培ってきた価値観と、患者さんとの出会いが契機になったのですね。多くの企業を見ていく中で、協和キリンを選んだ理由を教えてください。

(中谷)

製薬会社の役目は、患者さんに革新的な医薬品を届けるだけではありません。医薬品を開発・販売した後も、最新の情報を発信し、患者さんや医療従事者に「伝わる」、患者さんの生活を考えた情報発信を続け、患者さんの治療と生活を支えていく使命がある、と私は考えています。こうした思いが、創薬だけでなく患者さんの生活をサポートする考えを持っている協和キリンを選ぶ決め手になりました。

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患者さんに寄り添いながら研究したい

画像:協和キリン株式会社 藤村 留衣

―半井:研究職の藤村さんが、就活時に大切にしていた思いや印象的な出会いなどはありますか。

藤村 留衣(以下、藤村)

私の場合、学生時代に出会ったある患者団体の会長との交流が、自分の核となるものを知るきっかけになりました。実は、以前は研究だけでなく行政など医療制度づくりなどにも関心がありました。しかし、患者さんが抱えるさまざまな悩みや症状を会長から聞いているうちに、彼ら/彼女らの疾患自体を根本的に治したいと強く願っている自分に気付いたのです。この思いに背中を押され、研究職に進むことを決めました。

一方、医薬品研究の状況に目を向けると、研究者と患者さんの接点はほとんどないと知りました。患者さんは医師を通じて研究の経過を知り、研究者も医師や論文、学会を通じて患者さんのニーズを把握しているのが実状です。この状況に、「研究者がもっと初期段階から患者さんと直接接点をもち、声に耳を傾けていれば、よりニーズに寄り添った医薬品を開発できるかもしれない」という思いを強くしました。

こうした思いから、学生時代は海外の患者団体と研究者が協働した成功事例の調査をしたり、患者と研究者をつなぐNPO法人やAMED(日本医療研究開発機構)を訪問したりしながら、知見を深めました。さまざまな経験を重ねながら、目指すべき研究者のあり方を模索していく中で出会ったのが、協和キリンの「私たちの志」です。この会社であれば、患者さんに寄り添った研究を後押ししてくれそうだと強く感じ、入社を決めました。

画像:藤村さんは大学院の薬学部の博士課程を修了。学生時代は研究に打ち込む日々を送った。

―半井:協和キリンの「私たちの志」が、藤村さんの大切にしたい思いとリンクしたのですね。

自分の「ワクワク」も大切に、苦しむ人の支えになる仕事をしたい

画像:協和キリン株式会社 辻 実央

 ―半井:辻さんは昨年4月に入社されたばかりで就活の記憶も新しいかと思います。学生時代の活動や、製薬業界に興味を持った理由などを教えてください。

辻 実央(以下、辻)

高校3年生のときに受けた脊椎側湾症の手術が、私の人生の分岐点になりました。3週間の入院生活を通じて、医師の先生や看護師さんの優しさに触れたり、友人がお見舞いにきてくれたり、いつも以上に人の愛を感じたのです。このときから病院という場所が好きになり、医療に興味を持ち始めました。

高校卒業後は「苦しんでいる人たちの役に立ちたい」という思いから、大学で社会福祉を専攻しました。病院で働きたかったので、教育カリキュラムの一環だった医療ソーシャルワーカーの実習にも参加し、この仕事がいかに医療の現場で必要とされ、患者さんやその家族を支える力になっているかを、身をもって知ることができました。ただ、実習を終える頃には「このままこの道に進んでいいのだろうか」という迷いが生じていました。理由は、自分の未来像を容易に想像できたことです。私は「未来が想像できない」ことに魅力を感じるタイプなので、医療ソーシャルワーカーという職業には、働くうえで大切にしたいと思っていた「チャレンジ」や「ワクワク感」が少ないと感じてしまったんです。

そんなときに出会ったのが、協和キリンでした。文系出身なので、製薬業界は私にとって全く知らない世界。それまで想像すらしていなかった側面から、患者さんの支えになる仕事ができる。そう思うと期待に胸が膨らみ、この会社で自分に何ができるのか、どんなことが起こるのか考えるだけでワクワクしました。

-半井:辻さんの「支えになりたい」という思いと、あふれんばかりの好奇心を満たすのが、今のMRという仕事なのですね。

前編では、参加者それぞれが抱く社会課題への関心や就活の軸について聞いた。後編では、それらが現在の仕事にどうつながっているのかを聞きながら、エシカルに働くことの意味を探っていく。

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