化粧品業界は、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の達成に向けた目標5、12、14の3つと深い関連性があるのは知っているだろうか。今回は、これらの達成目標と化粧品業界がどのように関わっているのか、具体的な取り組みを解説する。SDGsの目標達成に貢献できる製品選びの参考にしてほしい。

SDGsと化粧品業界の関連性

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冒頭でも説明したとおり、化粧品業界ではSDGsの3つの目標と高い関連性がある。その背景には、2021年4月に経済産業省がした「化粧品産業ビジョン」にて、SDGsの目標達成を言及したこともあるだろう。

この項目では、「化粧品産業ビジョン」と化粧品業界に関連する3つのSDGsの目標について、詳しく解説する。

化粧品産業ビジョンで「SDGsへの積極的な貢献」が言及されている

2021年4月に経済産業省が発表した「化粧品産業ビジョン」は、産官学で策定した初めてのビジョンだ。経済産業省及び日本化粧品工業連合会を事務局とし、有識者や化粧品メーカーの上層部などで結成した「化粧品産業ビジョン検討会」により策定された。

ビジョンの内容は、化粧品メーカーの売り上げ低下やSDGsに対する消費者意識の変化などに対応するため、目指すべき化粧品産業の将来像が中心となっている。

目指すべき化粧品業界の将来像を実現するための具体的な取り組みとして、SDGsへの積極的な貢献が挙げられた。

◆「化粧品産業ビジョン」の主な内容

・化粧品産業の発展と経済成長の関連性やコストの割合、企業の規模や世界の市場など

・新型コロナウイルス感染症の流行や、新興国をはじめとする海外の企業の台頭、デジタル技術によるイノベーションといった、化粧品業界を取り巻く環境変化の現状

・SDGsに関する意識の高まりと、化粧品メーカーによる目標達成に向けた取り組みの事例

・世界から見た日本の化粧品産業が持つ強みと弱み

・以上のような実態を踏まえた、10年後、30年後に日本の化粧品産業があるべき姿と、それを実現するために取り組むべきこと

出典:経済産業省「化粧品産業ビジョン

化粧品業界に関連する3つのSDGs目標

化粧品業界に関連するSDGs目標は、次の3つだ。

目標5 SDGs5.ジェンダー平等を実現しよう
目標12 SDGs12.つくる責任 つかう責任
目標14 SDGs14.海の豊かを守ろう

SDGs5.ジェンダー平等を実現しよう

目標5のジェンダー平等については、ジェンダーレス・ジェンダーフリー実現のために、性別に関係なく使用できる化粧品を製造・販売することが求められる。また、男性が化粧品を利用できるように、男性向け化粧品を拡充することも必要だ。

また、女性の社会進出という観点から、子育て中でも仕事がしやすい職場環境の整備に、率先して取り組む。

SDGs12.つくる責任 つかう責任

化粧品業界が目標12の達成に貢献するには、返品や廃棄によるコスメロス、販促物の廃棄への対応が必要だ。

例えば、以下の取り組みが求められる。

・アウトレットでの販売

・アップサイクルによる別製品(絵具など)への転換

・詰め替えタイプの販売

SDGs14.海の豊かさを守ろう

目標14を達成するには、海洋プラスチックを減らすための対策が必要だ。例えば、容器包装からプラスチック製品をなくすことや、容器回収を積極的に行うことが考えられる。

国内化粧品メーカーの動きも盛んになっている

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化粧品業界に対するSDGsの目標達成に向けた取り組みに関する要請を受けて、国内化粧品メーカーの動きも盛んになっている。

◆SDGsの目標達成に向けた国内化粧品メーカーの動向の例

・プラスチック包装容器の開発

・「詰め替え」「付け替え」の推進

・紙資材に再生紙を使用

・環境に配慮した紙資材を使用

・水資源使用量の削減

・包装資材の軽量化

・単一資材の使用 など

上記のとおり、化粧品の原材料の調達段階・製品の使用・使用済み製品の廃棄・リサイクルと、ライフサイクル全体にわたって取り組みを行っているのが特徴だ。

SDGs達成に向けた化粧品メーカーの取り組み

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SDGs達成に向け、実際の化粧品メーカーの取り組み事例3つを紹介する。

SDGs達成に向けた化粧品メーカーの取り組み
肌と海を守ろうプロジェクト ・シャンソン化粧品の取り組み

・清掃イベントへの協賛やオーガニック認証を取得した化粧品の開発など

プラスチックの削減 ・ドクターリセラの取り組み

・詰め替え用専用ボトルと詰め替え用などをラインナップ

3Rの実現 ・桃谷順天館の取り組み

・工場から出る廃棄物などについて、3Rを実現

肌と海を守ろうプロジェクト(シャンソン化粧品)

シャンソン化粧品が2019年7月に開始した、肌と海に優しい日焼け止めの大切さをアピールする取り組みが、「肌と海を守ろうプロジェクトだ。

肌と海を守ろうプロジェクトでは、これまで、ビーチや海中の清掃イベントへの協賛やサンゴ基金への寄付などの支援を行ってきた。

コロナウイルス感染症の影響から、しばらく期間が空いていた同プロジェクトでは、2021年1月に、環境に配慮したシャンソンUVプロテクトミルクを開発している。

第一弾 ・ダイビング教育機関の主催するダイビングを楽しむ女性を支援するイベントに協賛

・世界的なビーチ・海中の清掃イベント参加者に日焼け止めサンプルなどを提供

第二弾 ・チャリティー用のリストバンドSANGO BANDを販売し、サンゴを保全する活動をしている団体に全収益を寄付
第三弾 ・シャンソンUVプロテクトミルクを開発し、環境に関する規制の厳しいハワイでも販売開始

シャンソンUVプロテクトミルクは、サンゴの白化の一因となる紫外線吸収剤を使用しない日焼け止めだ。国際的なオーガニック認証も取得している。

プラスチックの削減(ドクターリセラ)

天然成分を使用した無添加の化粧品を販売していることで有名なドクターリセラでは、SDGsの目標達成に貢献するための取り組みに力を入れている。海洋汚染や水質汚染を引き起こしにくい成分選びから森林保全に関する国際的な認証の取得まで、多岐にわたる。

また、プラスチック削減に力を入れているのも同社の特徴だ。容器包装の付け替えボトルへの変更や、詰め替え用専用ボトルと詰め替え用を準備するなど、脱プラスチックとごみ削減に向けた豊富な取り組みを行っている。

3Rの実現(桃谷順天館)

桃谷順天館は、大阪に本社を置く明治18年創立の老舗化粧品メーカーだ。同社では、SDGsの目標達成に向けた取り組みの一環として、工場から出る廃棄物や汚泥の3Rを実現している。

具体的には、以下のような3Rに取り組んでいる。

不要な瓶 ガラス原料へリサイクル
不要な透明 PET 固形燃料へリサイクル
廃液 セメントの原料・燃料へリサイクル
汚泥 たい肥化

同社の岡山工場では上記のような取り組みを実施した結果、2020年の段階で工場において発生する廃棄物などを100%リサイクルすることに成功している。

これらの3Rの取り組み以外に、大学でSDGsに関する講義を行うなど、幅広い活動を行っているのが特徴だ。

まとめ

化粧品業界は、ジェンダー平等や廃棄物の発生抑制・海洋汚染の防止など、複数のSDGsの目標達成に深く関係し、すでに多くの企業が取り組みをはじめている。私たちも、このような企業の取り組みについて理解を深め、消費活動の参考にすることで、SDGsの目標達成に貢献することが大切だ。