世界全体で見ると、新しく製造される衣料品の5分の3近くは、1年以内に焼却炉や埋立地に送られ処分されている。衣服を買う行為はもはや無害な娯楽ではなく、欲望と自制心がせめぎ合い、苦痛をともなう行為だ。いわゆる「持続可能なファッション」という言葉がブーフー(英国のファストファッションブランド)やブルーミングデールズ(アメリカを代表する百貨店)など販売の現場で飛び出すのも納得できる。ところが、ファッション業界の社会的・環境的責任の向上を目指して非営利運動を展開する「ファッションレボリューション」の共同創始者オルソラ・デ・カストロはその言葉を嫌う。「単に、ソリューションを追求する優良デザインというだけよ」とカストロは言う。しかし、何と呼ぶにせよ、こうしたアプローチは急拡大を遂げている。ファッション検索サイトのLystでは昨年、「オーガニックコットン」や「ヴィーガンレザー」などのワードで商品を探す買い物客が47%増加、持続可能な靴ブランドVejaの検索数は113%増加した。今回ご紹介する若手ブランド6選は、アップサイクルや廃棄ゼロに取り組むものから、活動家や新繊維の開発者が立ち上げたものまで多岐にわたる。どのブランドもおしゃれにこだわりたい人が満足できるデザインを提供するが、それにとどまらず業界全体のファッションに対する意識まで変える可能性を秘めている。

エコニル(Econyl)
– 使い古された漁網を原料にした無限にリサイクルできる水着

使用後の商品をリサイクルした素材を用いる水着ブランドが大きな注目を浴びている。デイジー・ロウやリアーナが愛用するAuria London。自然の中でアクティブに泳ぎを楽しむ人向けの水着や競技用ウェアを手掛けるDavy J。「活動的な人のためのスポーツウェア」を販売するRuby Moon。マッチズファッションにも出品しているFisch。数百ポンドの価格設定でラグジュアリー感が売りのMara Hoffman。これらの各ブランドが語るストーリーを辿っていくとひとつの場所に行き着く。それが、リサイクルナイロン繊維のエコニルだ。イタリアにある同繊維のメーカーによると、この繊維は「無限にリサイクルできる」という。

「はじめは、馬鹿にしてくる人が多かったんです」とエコニルの親会社アクアフィル(Aquafil)のCEOジュリオ・ボナッツイは言う。海では平均して年間6万4000トンにも上る漁網が捨てられている。同社がリサイクルの原料としてまず目を付けたのがこの漁網だ。はじめはスコットランドとノルウェーの養殖業者から漁網回収していたが、プロのダイバーが見つけたゴーストネット(幽霊のように漂い海洋生物に絡まる漁網)を、そして現在は「日本、オーストラリア、東南アジア、南北アメリカなどの世界各国」からも回収している。

エシカル・ファッション・フォーラムを設立した2006年当時、プラスチック問題には特に注目していなかったと話すのは、同組織を立ち上げたタスミン・ルジューヌ。「この2年間で大きく変わりました」。海洋廃棄物をリサイクルして作った水着で泳ぐという単純明快な循環プロセスには、ある種の小気味よさを感じる。エコニルを取り入れたいと考えるのは、当然ながら小規模ブランドにとどまらず、2017年にはグッチが同社の繊維を採用。ステラ・マッカートニーは2020年までに未使用のナイロン材の使用を廃止し、エコニルに切り替えることを発表した(同ブランドはバッグにもエコニールを使用している)。

エコニルが抱えるクライアントは今や750社を超える。「需要は日々、ぐんぐん伸びています」とボナッツイは語る。彼が見据えるのはプラスチック業界全体だ。ターゲットは「メガネに、家具に、イスに」と数え上げるときりが無く、スーパーに並ぶ果物の輸送や販売に使用されるネットさえも視野に入れている。

ナインティ・パーセント(Ninety Percent) 
– 収益を社会に還元

Ninety Percentの共同創業者であるシャリク・ハサンは「突飛なアイデアを試して、人々に響くかどうか確かめているんです」と語る。同ブランドは、仕立ての良いオーガニックコットンのTシャツや絞り染めのフード付きワンピース、アシンメトリーのスカート、レジャーウェアなどを販売している。社会貢献を主軸とし、収益の90%を寄付するという同ブランド。バングラデシュとトルコで服の生産に携わる人々に5%、ブランドを立ち上げた人々に5%を振り分け、残りは4つのチャリティ団体に分配する。チャリティ団体の選択には、購入者の手を借りる。各商品の取り扱い表示ラベルにあるコードを同ブランドのウェブサイトに入力すれば、寄付したい団体に投票することができる。

エシカル・ファッション・フォーラムの創設者であり新設企業Common ObjectiveのCEOも務めるルジューヌは、「ファッション業界で最も素晴らしく画期的な変化がサプライヤー側から生まれることもあります」と話し、だからNinety Percentは面白いと指摘する。1971年にバングラデシュからイングランドに家族で移住したというハサン。ジョン・レノンの『イマジン』やピンク・フロイドの『生命の息吹き』(「Don’t be afraid to care …」)を聴いて10代を過ごした。

90年代初め、ニュールックに販売する製品の買い付けのためにバングラデシュに行った際、ハサンはコムラプール駅近くのごみ捨て場を車で通りかかった。その臭いは酷いものだった。だがそれ以上に酷かったのは、「そこで食いぶちを稼ぐ子どもたち」を見たことだった。このことをきっかけにハサンは、持続可能な事業モデルについて考えを巡らせるようになる。パートナーのパラ・ハミルトンとともに、ハサンはチルドレンズ・ホープという慈善団体(Ninety Percentの寄付先の一つ)を立ち上げた。さらに2009年、二人で工場を立ち上げると、出来立ての食事を毎日提供する社員食堂も同時に始めた。他にも、健康保険や現場での健康管理など福利厚生を充実させている(従業員数は現在1万2000名。同工場は、H&Mやディベンハムズ、ニュールック向けの衣服の生産を行っている)。

「若い企業が主導してサステナビリティを考えていかなければなりません」とハサンは語る。Ninety Percentのアイデアは急進的にも思えるが、バングラデシュの衣料品業界で培った何十年もの経験の賜物だ。ハサンが当初抱えていた問いの中には、まだ答えの見つかっていないものもある。「どうすれば変化を起こせるだろうか。どうすれば共感や思いやり、価値観、目的、透明性を共有できるだろうか。人々に力を与えるには? そういった点を引き続き考えていきます」

マシュー・ニーダム(Matthwe Needham)
– ショッピングカートがレインコートに変身

マシュー・ニーダムは、パリの某有名高級ブランドでインターンとして働いた経験を持つ。そこで彼が目にしたのは、ファッション業界に染み付いた廃棄の習慣だった。「革なめし工場から革を取り寄せるには10週間かかるので、余分な色まで注文することが多いんです」とニーダムは語る。どれを使い、どれを廃棄するかは、注文の品が届いてから決める。「私には、捨てることに何の配慮も感じられませんでした」。ニーダムはアップサイクルこそが最善のアプローチだと信じている。同じくデザイナーの仲間で、古本などを素材としてものを作るベサニー・ウィリアムスや、捨てられた靴を集めて見事にスニーカーにリメイクするヘレン・カーカムにも共通する考えだ。

ニーダムはデ・カストロと同じく、サステナビリティは「すべてのデザインプロセスにおいて切り離せないもの」だと考えている。焼却処分されてしまう前に、高級素材の売れ残り品を見つけ出すというニーダム(偽造品対策として、2800万ポンド分の自社商品を破壊処分したバーバリーの件は、事前に知っていれば飛びついただろう)。市場や路上、ときには自身のスタジオでも、何かないかと探し回る。路上でショッピングカートを見つけた時は、2週間経っても持ち主が現れないことが分かると、それをレインコートに作り変えた。ノルウェーの海辺で拾ったレース状のプラスチックは、スカートに変身させた。見つけた素材を未使用の高級素材と組み合わせることも多い。たとえば、シャネルの商品になっていたかもしれないのに、実際は何年も倉庫に放置されていたツイードなどはうってつけだ。「創造性が持つ価値を考えるのが好きなのです。物質そのものの価値ではなく、創造性が持つ価値です。それこそ、真の贅沢というもの。何かを作り上げるまでの手作業やスキル、物の見方、思考プロセスにこそ、価値があるのです」とニーダムは語る。

ニーダムの作品はすでにi-D(ロンドン発のファッション&カルチャーマガジン)にも取り上げられており、彼にあやかろうとする有名ブランドから提携を持ち掛けられることも多いが、基本的には断るという。「ブランドからすれば、私はただの『To Doリスト』の1項目ですから」。ニーダムは注文内容に応じて作品を制作する。大手販売業者との取引も時間の問題だ。キャリアを始めて間もないことも、大きな強みだと言う。「マーケティングや事業計画に縛られないというのは有利です。サステナビリティとは何かということは、皆さん自身が決める必要があります。私にとっては、それが今あるものを使うということ。物はすでに溢れかえっていますから」

カユ(Kayu)
– 麦わら素材の持続可能な高品質バッグ

ジェイミー・リムは、マレーシアと香港で子ども時代を過ごした。両親が着ていたバティック柄の服や麦わらで作られた素敵な家具が、リムの大のお気に入りだった。17歳になると米国の大学に進学し、休暇で帰省するたびに、友人へのお土産として持ち帰る工芸品を探した。ところが、だんだんと工芸品を見つけるのが難しくなっていった。麦わら風のプラスチック製品が急増したためだ。「それが、このブランドを立ち上げるきっかけでした。その土地の工芸を守る手段として始まったのです」とリムは語る。

マレーシア・トレンガヌ州の職人が天然の植物繊維を使って手編みするカユのおしゃれなカリフォルニア風トートバッグは、現在、リバティ、ブルーミングデールズ、サックス・フィフス・アベニュー、ネッタポルテなどの高級店で販売されている。リース・ウィザースプーンやサセックス公爵夫人メーガン妃も御用達だ。

カユのバッグは、非常に見栄えがいい。サステナビリティに配慮したファッションが、美しさやデザインに関してもファッション業界の主流ブランドと互角にわたりあい、さらには業界を牽引できることを証明している。「カユの製品は文句なしにおしゃれで、持続可能なファッションと聞いて通常思い浮かぶものとは完全に一線を画しています」とファッション販売のサステナビリティと倫理性を専門とするクリエイティブコンサルタントのエマ・スレード・エドモンドソンは語る。

リムは、カユの廃棄物ゼロ化も進めている。バッグの生産時に余った生地は、アルファベットのストラップやポーチに生まれ変わり、その収益はチャリティ団体に寄付される。金属製の部分は除くが、麦わらの廃棄物は生分解性で、当然バッグも時が経つにつれて分解する。

「はじめは皆、乗り気ではありませんでした。今では、お客様からたくさんお問い合わせをいただいています。麦わらはプラスチック製か本物か、製品はヴィーガンか、バッグは大量生産されたものか、といった内容です」。販売業者からも同様の問い合わせがあるとリムは話す。「ネッタポルテからは、どのようなサステナビリティの取り組みを行っているのかというデザイナーへの問い合わせがありました。そうした取り組みが消費者から強く求められているのです」

マッド・ジーンズ(Mud Jeans)
– デニム界のレンタル革命

2012年にマッドを創業したバード・ファン・ソンは「オーガニックコットンでジーンズを作り、労働の対価がきちんと支払われるようにしようという思いで始めました」と語る。特に急進的な点は見受けられない。「ところが間もなく、コットンのリサイクルは簡単だということが分かったのです。そこでジーンズを回収したらどうかと思いました」。マッドは、ジーンズの購入とレンタルという二つのオプションを提供している。レンタルのシステムは、古い商品を新しい商品に交換するというシンプルなものだ。

「人々の意識は変わりつつあります」とファン・ソンは言う。「レンタルと購入の比率は、以前は5:5でした。ところがこの12カ月でレンタルが増えています。1年後には別の色や型、ウォッシュ加工のジーンズを受け取れるということを、楽しんでいただいているのです。古いジーンズを返却して新しいジーンズを受け取るというやり方に満足いただいているようです」

レンタル事業の成長に伴い、使用後の生地をリサイクルした素材の使用率も拡大している。マッド・ジーンズでは当初、再生デニム20%と未使用コットン80%を混ぜていた。それが今では、再生生地の比率はジーンズ1本あたり40%。来年には、「使用後の再生素材を100%使用したジーンズを発表したいと思っています」とファン・ソンは話す。

ファン・ソンが語る言葉のキーワードは「使用後」だ。リサイクルには、工場の床に落ちている切れ端を回収して何か別の用途に使うということもある。だが、使用後の生地をリサイクルする場合は、回収されなければ埋立地へ向かうはずだった衣服を生まれ変わらせることができる。世界全体でのジーンズの販売本数は年間10億本を超えるが、衣服の生産に使用された生地のうちリサイクルされて新しい衣服に生まれ変わるものは、1%にも満たない。

マッドでは、ボタンにステンレススチールを使用しているが、これもリサイクル可能だ。「紙製タグは、cradle-to-cradle(ゆりかごからゆりかごへ)の認証を受けたものです。革は使用していません。ポケットの内張りは、100%コットン素材で作っています」。そしてさらには「内張りの縫い糸には生分解性ポリエステルを使ってみようと考えています」と言うファン・ソン。「私たちは完璧主義なんです」

バードソング(Birdsong)
– 作り手の顔を見せることで女性を応援

バードソングで服を買うと、作り手の顔を見ることができる。ロンドン発の社会的企業である同ブランドは、スローガンがプリントされたTシャツや正統派デザインのシャツなどを手掛ける。そしてラベルには、服の裁縫、刺繍、編み物に携わる女性の写真を載せている(全員女性)。

これは、単に注目を集めるためだけの小手先の技ではない。バードソングを創業したソフィー・スレイターとサラ・ネヴィルは、はじめは女性を対象とするチャリティ団体で働いていた。二人は、服の生産者50名のうち12名と個人的な付き合いがある。「ファッションブランドを作ろうとしていたわけではないんです」とスレイターは語る。「ファッションは単に、本来の目的を達成するための手段として好きでした。女性のスキルを生かして変化を起こすための手段として、です」。同ブランドの服は現在、30カ国以上で販売されている。

バードヤング誕生のきっかけになったのが、フェミニズムと「ファッションレボリューション」の運動だ。スレイターとネヴィルは、デイケア施設で作られた衣服をバザーで販売し、スタイリッシュなウェブサイトで紹介したいと考えた。

「そこで、素晴らしいフェミニストの写真家の皆さんと手を組もうとひらめいたんです」とスレイターは語る。スレイターは知り合いのフェミニスト活動家たちに協力してもらって衣服の写真を撮り「No sweatshop & no Photoshop(労働搾取もフォトショップもなし)」というスローガンを掲げた。

バードソングは、今では専属デザイナーを抱えている。そうすることで、作り手の才能を形にするとともに、製品に統一感を持たせることができるのだ。ニットウェアのデザイナーであるケイティー・ジョーンズは、廃棄物や過剰在庫を減らすため、かぎ針編みのパーツ用の型を作成した。受注内容に応じてこのパーツを縫い合わせれば、セーターやカーディガンを手早く作ることができる。

「特に優先すべきことは、トレーサビリティと透明性です」とエマ・スレード・エドモンドソンは話す(エドモンドソン談:Know The Originも要チェックです)。そのための取り組みとしてスレイターは、バードソングにおける作り手の名前を把握したり、ロンドンにおける生活に必要な賃金を支払ったりしている。スレイターは、作り手の内輪で行う結婚式に呼ばれたことさえもあると言う。「当ブランドの使命は、女性たちが楽しみながら働いておしゃれな商品を生み出し、作り手の皆さんに収入源を提供することだと思っています」

バードソングのファッション業界における立ち位置も変わってきている。「かつてはイベントに招待されても、麻協議会で講演をするくらいでした」とスレイターは話す。だが最近は一般大衆向けの有名ブランドの経営層が集まる業界交流会に参加したりもしている。スレイターとともにその場に同席していた人たちが議論していたテーマは「サステナビリティは流行りか否か」。「私は立ち上がって、言ったんです。『収穫できるのはあと50シーズンしかないんですよ!』とね」。彼女は今後数十年のうちに英国の土壌の肥沃度が失われるというニュースを引き合いに出したのだ。「エシカルなファッションに取り組む友人と一緒に、私はよく言っていました。私たちはオタクっぽい。流行りに乗っている人たちが格好いいと感じてしまうと。今では、そんな人たちの間でも関心が高まっていると感じます」

 

この記事は、The Guardianのポーラ・ココッツァが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。