国際的な開発目標であるSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の各国の目標達成状況はSDGs報告書により公表されている。世界的に見て、日本はどのくらい達成できているのだろうか。

この記事では、SDGs報告書2022をもとに、日本のSDGsの達成状況と日本が抱える深刻な課題の現状について解説する。

【2022年】日本のSDGsの達成状況は?

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2022年度における日本のSDGsの達成度合いと日本が深刻な課題を抱えるSDGsの目標について紹介する。

日本の達成度は163ヶ国中19位

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の測定や評価については、国際的にさまざまな組織が手法を開発し測定している。

この中で、国連加盟国を対象に、SDGsに関わるパフォーマンスの国別ランキングを公表しているのが、「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」とベルテルスマン財団だ。

次の表は、ベルテルスマン財団が策定したSDGs報告書2022の1位から20位の国とそのスコアである。

順位 国名 点数
1位 フィンランド 86.5点
2位 デンマーク 85.6点
3位 スウェーデン 85.2点
4位 ノルウェー 82.3点
5位 オーストラリア 82.3点
6位 ドイツ 82.2点
7位 フランス 81.2点
8位 スイス 80.8点
9位 アイルランド 80.7点
10位 エストニア 80.6点
11位 イギリス(英国) 80.6点
12位 ポーランド 80.5点
13位 チェコ 80.5点
14位 ラトビア 80.3点
15位 スロベニア 80.0点
16位 スペイン 79.9点
17位 オランダ 79.9点
18位 ベルギー 79.7点
19位 日本 79.6点
20位 ポルトガル 79.2点

出典:「SUSTAINABLE DEVELOPMENT REPORT 2022」をもとに作成

2022年6月に公表された報告によると、日本のSDGsの達成状況は163ヶ国中19位であることがわかった。これまで同財団が公表してきた国別ランキングと比較すると、日本の順位は年々下がってきている傾向にある。

日本は6つの目標に「深刻な課題がある」

SDGsでは17の目標が設定されている。17の目標のうち、同報告の中で日本において深刻な課題があるとされるのが、以下の6つの目標だ。

・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

・目標12「つくる責任 つかう責任」

・目標13「気候変動に具体的な対策を」

・目標14「海の豊かさを守ろう」

・目標15「陸の豊かさも守ろう」

・目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

SDGs報告書2021において、「深刻な課題」とされる目標は5つであった。しかし、SDGs報告書2022では、新たに目標12が「深刻な課題」に引き下げられた。

それぞれの目標の評価と現状については、次の項で詳しく説明していく。

日本において課題のある目標とその現状

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SDGs報告書における各目標の評価指標の項目数は国によって異なる。ここでは、日本で深刻な課題があるとされる目標5、目標12、目標13、目標14、目標15、目標17、それぞれの評価指標と現状について詳しく見ていこう。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

ベルテルスマン財団のSDGs報告書2022において、目標5は「近代的な方法で家族計画ができている人の割合」「平均就学年数の男女比」「労働力率の男女比」「国会における女性議員の割合」「賃金のジェンダー格差」の5つの指標で評価される。

このうち、特に深刻な課題があると評価されたのが「国会における女性議員の割合」であった。

これまで深刻な課題と評価されていた賃金のジェンダー格差については、2018年の非正規雇用の割合が男性22.2%に対し、女性は56.1%であった。非正規雇用の割合から女性の賃金に課題があることがわかるほか、正規雇用者にも課題は残る。

年間収入を見ると、男性は500~699万円が22.8%と最も多く、女性は200~299万円が28.1%と最も高い割合であったためだ。

参考: 平成30年 労働力調査|総務省 統計局

目標12「つくる責任 つかう責任」

目標12においては、SDGs報告書2022で7つの指標で評価されている。特に深刻であるとされるのが「電子ごみの廃棄量」「プラスチックごみの輸出量」の2つの指標である。

日本における携帯電話やテレビなどの電子機器の廃棄量は、2020年時点で年間約257万トンと世界4位の多さである。ひとり当たりに換算すると年間約20㎏もの電子ごみを廃棄している。

参考:増え続ける電子ごみ|国民生活センター

また、日本は世界でも有数の廃プラスチック輸出国だ。プラスチックごみにおいて、汚れが付着したプラスチックなどはリサイクルが難しく、「資源」の名目でアジア諸国を中心に輸出されてきた。しかし、2017年末には中国が廃プラスチックの輸入を禁止し、2019年にはバーゼル条約が改正され、2021年からプラスチックごみの輸出には相手国からの同意が必要とされている。

今後、日本国内で資源循環を進めていくためには、ごみの効率的な活用方法やプラスチックの代替品開発などについても考えていかなければならない。

参考:日本のごみはどこに行くの?|国民生活センター

目標13「気候変動に具体的な対策を」

目標13は、SDGs報告書2022において4つの指標で評価されている。

中でも特に深刻とされるのが「化石燃料の燃焼・セメント生産による二酸化炭素排出量」「輸入にともなう二酸化炭素排出量」「CO21トンあたり60ユーロとしたときの炭素価格」の3つの指標だ。

二酸化炭素の排出量については、2018年時点で約10億8000トンと世界で5位の排出量となっている。日本の二酸化炭素排出量削減についてはまだまだ課題が多い。

参考:二酸化炭素(CO2)排出量の多い国|外務省

なお、日本をはじめ世界各国が温暖化対策を取らず二酸化炭素の排出を抑制しなかった場合、21世紀末には20世紀末と比べて3.4~5.4℃気温が上昇するという予想もある。

参考: 令和元年度 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省

気候変動は、大雨の増加や農作物の品質低下、動植物の分布域、熱中症など、さまざまな影響を与えるため、深刻な問題として取り組んでいかなければならない。

このような現状を受け、日本では2030年度に向けて温室効果ガスの排出削減目標を2013年比で-46%とした。さらに-50%を達成すべく、持続的な取り組みを宣言している。

参考:日本の排出削減目標|外務省

目標14「海の豊かさを守ろう」

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海の環境に関わる目標14は、SDGs報告書2022では6つの指標で評価されている。

特に深刻とされているのが、「海洋地区の保護された平均占有面積」、「海洋健全度指数」、「漁獲されすぎた、または崩壊した魚種資源から獲られた魚の割合」、「輸入にともなう海洋生物多様性への脅威」だ。

中でも、海の環境についてさまざまな影響を及ぼしており、深刻な課題とされているのが海洋ごみの問題である。

日本海岸には多くの海洋ごみが漂着しており、容積としてはプラスチックごみが最も高い。特にプラスチックごみは海の生物や海鳥に大きな影響を及ぼし、多くの生物の死傷例が報告されている。

このように、生態系への影響をはじめ、海岸機能の低下や景観への影響、漁業への影響など、さまざまな部分に問題が波及している海洋ごみを生まないためには、私たち一人ひとりのごみへの意識や関わり方の変化が重要だ。

目標15「陸の豊かさも守ろう」

SDGs報告書2022では、目標15は5つの指標で評価されている。

特に深刻なのは、「地上地区の保護された平均占有面積」、「淡水地区の保護された平均占有面積」、「レッドリスト」、「輸入にともなう地上・淡水の生物多様性への脅威」だ。

2022年の報告によると、順調な改善が見られる「恒久的な森林伐採」に関する指標を除いて、いずれの指標も停滞か悪化という結果であった。

指標にもあるレッドリストは、絶滅の危険がある野生生物のリストを表したものだ。2020年においては、前年より増加して3,716種の野生動物が絶滅の危機にあると評価された。

参考:レッドリスト|環境省

レッドリストのリストアップからは、かつてない速さで、多くの生物が絶滅の危機に瀕していることがわかる。

このような絶滅の危機にある生物が増えた原因は生息地だ。生物の生息環境を守り絶滅を回避するために、生息地だけでなく、安全な施設での保護など生息域外保存の取り組みが重視されてきている。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

目標17は、SDGs報告書2022で7つの指標により評価されている。

特に深刻とされるのが、「国民総所得(GNI)に含まれる政府開発援助(ODA)の割合」、「金融秘密度スコア」だ。

国民総所得における政府開発援助額は、国際目標の0.7%を大きく下回り、2016年時点で0.2%。これは、OECD/DAC加盟国29ヶ国のうち20位だ。OECD/DAC加盟国の平均と比較しても低いことから、さらなる取り組みが求められている。

参考:国際的な教育課題に対する日本の支援:日本の政府開発援助( ODA )について 選択・投票する|SDG4教育キャンペーン2020

まとめ

SDGs達成のためには、国だけでなく、企業や個人など多くの人が協力していくことが重要だ。協和キリン株式会社においても、SDGs報告書2021で特に深刻な課題があるとされる、目標5、目標13、目標15、目標17を含む包括的な取り組みを実施している。

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