日本最大級のアトピー患者向けアプリ「アトピヨ」の開発者Ryotaro AKO(リョウタロウ アコウ)さんをゲストに迎え、患者さん中心の医療=「ペイシェントセントリシティ」をテーマに、その意義や未来の医療像について語る本対談。後半は、協和キリン株式会社が製薬会社として実践する「ペイシェント・セントリシティ」について、そして両者の今後の展望を聞いた。

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一人ひとりの「生きる」を見つめて。“ペイシェント・セントリシティ”が育む次の医療の形とは?【アトピヨ×協和キリン】―前編―

ライフサイクルを通じ、常に患者さんに寄り添った医薬品の提供を

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画像:松下武史(協和キリン株式会社 メディカルアフェアーズ部長)

――協和キリンの考える「ペイシェント・セントリシティ」とは?

(松下)

研究から上市後まで含めた医薬品のライフサイクルを通じ、常に患者さんに寄り添った考えを事業活動の中に反映していくことが新薬メーカーである協和キリンの「ペイシェント・セントリシティ」だと考えています。

現在、実施している活動に「患者さんのジャーニー/体験記」の作成があります。これは、少数の患者さんにインタビューを実施し、疾患の認知、医療機関への受診、治療の開始と継続、それぞれの過程における行動、思考および感情などの変化などを記述します。

協和キリンでは、この「患者さんの体験記」の記録をもとに、企業が解決すべき課題を抽出して、研究開発や育薬活動に反映する活動を始めているのです。

※上市(じょうし)とは、研究開発を経て承認された新薬を、製品として市場に出すこと

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――「患者さんの生の声」が医薬品開発に変化をもたらすのですか?

(松下)そうです。まず、新薬の評価法には大きく分けて2つのアプローチがあります。

1つ目は、医科学的な測定値を用いて評価する方法。これは、ある疾患や症状のメカニズムに基づいて開発薬の効果や安全性を医科学的に定量可能な方法で測定し評価するというものです。

2つ目は、患者さんにとってのベネフィットに主眼をおき、患者さんご自身が実際に感じられるベネフィットを指標として設定し、その指標に対する開発薬の効果を評価する方法です。

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画像:研究開発中の様子(協和キリン株式会社)

(松下)近年、2つ目にご紹介した、患者さんのベネフィット視点での医薬品開発指標が、医薬品の承認取得においても重要な位置を占めるようになりました。

患者さんや患者さんのご家族が実際にベネフィットを感じられる指標の設定が、薬を世に送り出し育てていくために極めて重要なポイントになりつつあるということです。

私たちはこのアプローチを取り入れ、患者さんの生の声を元にした創薬や育薬を進めていきます。

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画像:患者さんの声イメージ

「患者さんの生の声」から真のニーズ(医薬品で解決すべきこと)を見出し、「患者さんとともに」いい薬を開発し、育てていく、協和キリンはそんな会社でありたいと思います。

患者さんを生活者として捉え、新たな価値を提供

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画像:高山徹(協和キリン株式会社 戦略本部コーポレートストラテジー部)

――協和キリンが「ペイシェント・セントリシティ」を実践する上で、とくに意識的に取り組んでいることはありますか?

協和キリン高山徹、以下「高山」)

とくに大切にしているのは「患者さんを生活者として捉える」ことです。

これまで当社は、主に患者さんの疾患に焦点を当てて活動を進めてきました。いわば「個人×医療」という観点からの価値提供が中心だったと言えます。

これは、医薬品の提供を担う当社にとって必然だととらえていました。しかし、これからは患者さんを、一人の生活者として捉え、「社会×生活」という観点での価値提供が求められると考えています。

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※写真はイメージです。

――患者さんを生活者として捉えるとは、具体的に?

(高山)当たり前のことなのですが、患者さんは、特定の疾患の患者である以前に、一人の生活者としてさまざまな課題をお持ちです。それは、お仕事や一緒にお住まいのご家族との関係性など多岐にわたります。

例えば、先ほどアコウさんがお話していた事例では、小児アトピー患者さんのケアを行なっているのは主に母親ということでした。私たち製薬企業は、疾患には患者さんご自身だけでなく、サポートをしている方々も含め「ペイシェント・セントリシティ」を検討していかねばなりません。「患者さんを生活者として捉える」ことは、疾患をよくすることと同時に、生きることそのものをよくする薬のあり方を模索することだと考えています。

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※写真はイメージです。

(松下)私たちは、患者さんの「生の声」を大切にしています。しかしながら、(さまざまな規制や制約のため)当社が直接アプローチできているのは、主に医療機関や医師、コメディカルの方々に限定されているのが現状です。

※コメディカルとは、医師と協同して医療を行う医療専門職種の総称。看護師、保健師、管理栄養士などさまざまある。

現状、当社では疾患啓発活動の中で患者さんに情報提供を実施していますが、(患者さんを)生活面でサポートできているかと問われれば、十分とは言えません。その点、「アトピヨ」には、患者さん同士がつながるフォーマットがあり、疑問や悩みを患者さん同士が共有し、励まし合うコミュニティがあります。

これは、製薬会社にとっては取り組みが(規制上)難しい部分であり、そこが「アトピヨ」の大きな社会的価値の一つになっているのではないかと感じています。

コロナ禍で浮き彫りになったアトピー患者さんの孤独

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画像:Ryotaro AKOさん(アトピヨ合同会社代表)

(アコウ)ありがとうございます。現在「アトピヨ」には、約45,000件のコメントが集まっており、コメントを分析することで、患者さんがリアルワールドのどういった場面で悩んでいるかが見えてきます。

例えば昨年5月、私たちは、アトピー患者さんのコロナ禍での生活への影響を調査しました。新型コロナウイルスの流行期間において、コメント内でコロナに関するキーワードを抽出、データ分析した結果が次の図です。

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画像:アトピヨによって見えてくるアトピー患者さんのリアルワールド

(アコウ)調査の結果から、コロナ禍においてアトピー患者さんの悩み・ストレスは増大していると考えられます。例えば、左側の点線で囲んだ部分からは、

  • アルコール消毒による手の痛み(荒れ)によってストレスを感じていること
  • 感染リスクから、皮膚科への通院に恐怖を感じていること

などが浮かび上がりました。また、右下のところに、小さな枠で「顔」「酷い」とあります。これは、長時間のマスク生活によって、マスクが肌に擦れ、顔の症状が悪化したケースを現しています。

このように、患者さんのリアルな声から、リアルワールドで何が起きているのかが見えてきます。今後は、個人情報に配慮しつつ、今患者さんが困っていることを明らかにし、製薬・医療と連携しながら一緒に解決策を導き出せたらと考えています。

お互いに補い合いながら、医療を次の未来へ。

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※写真はイメージです。

――ありがとうございました。最後に、現在の取り組みについて、今後の展望を教えてください。

(高山)製薬業界として「ペイシェント・セントリシティ」の機運が高まっている一方、協和キリンとしては、まさに取り組み始めたところであり、さまざまな体制整備が追い付いていないと感じることもあります。

現行の体制では、「やりたいこと」と「できること」の間に大きなギャップがあるのも現実です。この部分は、今後の検討で整理していく必要があると考えています。

「ペイシェント・セントリシティ」の浸透により、患者さんの医療への参画が増え、意見が治療に反映されることで、より医療参画への意識が高まる――そんな好循環を目指して、提案と検討を積み重ねていきたいと思います。

(松下)協和キリンでは、今後も社をあげて「ペイシェント・セントリシティ」に基づく医薬品の開発を進化させ、最終的には、私たちのすべての活動が患者さんを中心に回る、そんな製薬会社を目指していきます。

その過程において、患者さんのインサイトは大変貴重です。まさに「アトピヨ」のような、患者さんの生の声を拾い、それをデータとして活用する取り組みは、製薬企業のナレッジと組み合わさることで、これまでにない価値を生みだす可能性を秘めているのではないでしょうか。

(アコウ)これまで徹底的に患者さんの方を向き開発してきた「アトピヨ」ですが、最終的に患者さん同士だけでは、治療は完結しません。今後は、「患者さんを中心に」というスタンスは変えず、製薬・医療との連携を強化していきたいと考えています。

「アトピヨ」は患者さんのリアルワールド吸い上げ、「医療機関」や「製薬会社」は医学的に正しい治療や生活習慣、医療アクセスを提供する。お互いに足りない部分を上手く補完しあいながら、より患者さんにベネフィットを還元できる体制を構築できたらいいですね。

【アトピー見える化アプリ-アトピヨ】

ダウンロードはこちらから

App Store URL : https://goo.gl/xRJeyX

【くるこつ広場】

くるこつ広場は、協和キリンが運営するFGF 23関連低リン血症啓発サイト

https://www.kurukotsu.com/