Ashley Cain-Gribble and Timothy LeDuc at the US Figure Skating Championships

(Image credit: NBC Sports)

2022年冬季オリンピックは、LGBTQ+コミュニティに新たな道を切り開いた。東京2020大会には史上最多となる186人のLGBTQ+アスリートが出場したが、それに続く今年の大会では冬季オリンピックとしては史上もっとも多くのLGBTQ+アスリートが参加した。フィギュアスケート選手のティモシー・ルデュクが、男女の枠にとらわれないノンバイナリーを公表する選手として初めて出場の意思を示した時には、各メディアがこぞって取り上げた。ルデュクは、スケートリンクの中でも外でも、爪痕を残したいと考えている。(そしてそのあり方は、カミラ・ワリエワ選手の件のように物議を醸すものではない。)

ティモシー・ルデュクは、オリンピックにおけるLGBTQ+アスリートの未来に期待を寄せている。

「私たちを見た人が、ありのままでいてもいいんだ、スポーツで成功したり夢を追いかけたりするために自分を変える必要はないんだと、感じてくれたら嬉しいです」

LGBTQ+のオリンピック選手はここ数年で少しずつ増えてきているが、ノンバイナリーを公表している選手はまだ少ない。ティモシー・ルデュクの出場は、旧来のジェンダー観に違和感を覚えるアスリートの背中を押し、世界の舞台でありのままの自分を表現する勇気を与えるかもしれない。ほんの小さなひと押しさえあれば、大きな波が起こることもあるのだ。

ティモシー・ルデュクはLGBTQ+アスリートの大会出場への道を切り開いたばかりではなく、ペアを組むアシュリー・ケイン=グリブルとともに、凝り固まったストーリーの刷新にも取り組んでいる。男性と女性という区切りが今も普通とされるスポーツの世界で、二人の演技はそうしたストーリーのあり方を覆そうとしている。これまでは男性と女性がペアを組み、恋愛をテーマにした演技をするのが一般的だった。それに対しティモシー・ルデュクとアシュリー・ケインが演じる関係は、恋人というよりも同志に近い。ルデュクは次のように語っている。「アシュリーと私が他のペアと違うのは、そこだけです。恋愛系のストーリーを演じたことはないし、恋愛関係になったこともありません。私たちが表現するのはいつも対等な関係。二人の優れたアスリートが一緒に美しいものを作り上げるところを見てほしいのです」

ティモシー・ルデュクとアシュリー・ケインは、口先だけではなく行動でもそうした姿勢を見せている(スケートの演技でも、と言った方が適切かもしれない)。女性選手がいつもリフトされ、男性選手が支えるというあり方に対し、ルデュクとケインの二人は似た動きをすることが多い。また衣装についても、女性のスケート選手はドレスやスカートを着るのが通例だが、ケインはルデュクの衣装に合わせ、ビジューが散りばめられたユニタードをよく着ている。

ルデュクとケインが言うように、これまでのあり方が間違っているわけではない。だが、一つの形だけが「普通」として押し付けられると問題が生じる。二人は自分たちが注目されることで、あらゆるジェンダーのスケート選手がありのままの自分で暮らし、大会に出場できるように勇気付けられればと願っている。

ルデュクとケインの二人が投じた一石がどこまで波紋を広げられるかは、時間が経たなければ分からない。だが、メディアでLGBTQ+の人々が取り上げられる機会が増えたことが何らかの兆しだとすれば、二人の取り組みはまさに、より多様な人々が受け入れられるインクルーシブな競技の場の実現に向けた第一歩だろう。

この記事は、Marie Claire USよりレイチェル・ロマンが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。