近年、シェアリングエコノミーという取り組みが新たな経済活動として注目されている。文字どおりモノやスキルなどを「シェア」する経済活動のこと。提供者も利用者もお互いに得のあるサービスだが、具体的にどういったものか知らない人も多いだろう。

今回は、より多くの人にシェアリングエコノミーを知ってもらうために、具体的なメリットや身近な例を交えて解説する。

シェアリングエコノミーとは

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シェアリングエコノミーは、個人が保有しているさまざまな資産やスキル、隙間時間などをほかの誰かが有効活用できる状態にする新しい経済活動である。

インターネット上のプラットフォームを介して、提供者と利用者が接点をもつことでサービスが成立する。

現代は格差や孤立などの社会的な課題が深刻化していることもあり、すべての人たちが助け合い、支え合う世の中を再構築するために考えられた取り組みである。

国や地域、規模に関わらず「シェア」することにより、共助や共創できるような社会の実現につながるだろう。

国内のシェアリングエコノミーサービスは、大きく5つの種類に分かれており、活用しやすいプラットフォームも豊富に展開されている。

シェア対象 概要
モノ フリマアプリなどで個人が行う不用品販売が該当する。また、所有物のレンタルサービスなどもモノを扱ったシェアである。
空間 建物の空き部屋や使われていない土地などが該当する。建物をシェアする民泊や会議室のレンタル、空き地を活用した駐車スペースの貸し出しなどがある。
移動 車のカーシェアやライドシェア、自転車のシェアサイクルなど、移動手段のシェアが挙げられる。そのほか、料理の運搬や買い物代行サービスなども移動に該当する。
スキル スキルシェアには実際に対面型と非対面型のサービスがある。対面型として家事代行やベビーシッター、非対面型としてクラウドソーシング該当する。
お金 クラウドファンディングのような資金援助や中小企業への投資、株式購入などが該当する。

シェアリングエコノミーは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」にも貢献しており、このゴールを意識して取り組みを行うことも重要だ。

SDGsの目標12については以下の記事で詳しく解説している。

「SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の取り組み内容」

シェアリングエコノミーが注目されている背景

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シェアリングエコノミーは国内で徐々に注目を集め、2021年には過去最高の市場規模となる2億4198億円を記録した。SDGsの達成目標時期である2030年度には、最大で現在の6倍近い市場に拡大する予想だ。

もちろん世界的にもシェアリングエコノミーの市場拡大は目覚ましく、2025年には世界の半導体市場と変わらない規模にまで成長すると予想されている。

なぜここまで注目されるようになったのか、その背景について解説していく。

スマートフォンの普及

近年、スマートフォンの急速な普及により、多くの人がインターネットを利用できるようになった。2019年時点の個人のスマートフォン保有率は67.6%と過半数を占めている。

シェアリングエコノミーサービスはインターネットを活用する必要があるため、スマートフォンが普及していない状況では、パソコンを使用できる環境など一部の場所に制限される。

スマートフォンの普及により、これまで見えなかった個人の資産や能力といった情報を、インターネット上の各プラットフォームで可視化できるようになり、さまざまな需要と供給を誰もが認識できるようになったのだ。

さらに、スマートフォンはどこからでも操作や確認ができるため、いつでもシェアリングエコノミーサービスを利用可能である。時間や場所が制限されない手軽さも、注目が集まった要因だと考えられる。

ソーシャルメディアの普及

シェアリングエコノミーは個人のやり取りが多くトラブルを避けるためにも、相手がどのような人物なのか、本当に信用できるのかなどが重要視される。

しかし、インターネット上では相手が信用できる人物か判断するのは難しい。

SNSをはじめとする多くのソーシャルメディアの普及は、今までは判断しにくかった信頼性の確認などの課題を解決する方法となった。

SNSは個人でのやり取りがしやすく、レビューや口コミでも個人の使用度が可視化できるようになった。安心してサービスを利用する、または提供するためにもソーシャルメディアは必須といえる。

ソーシャルメディアの普及によって、シェアリングエコノミーサービスがより安心して利用できるものとなり、多くの人が使いやすくなったことで注目度が高まったと考えられる。

シェアリングエコノミーが個人と社会にもたらすプラスの影響

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シェアリングエコノミーによってどのようなメリットがあるのか紹介する。

【個人】安価で高品質なサービスを受けられる

シェアリングエコノミーサービスでは、個人による供給が増えたことで新たな消費活動が促進されることになった。

そして、今までにはなかった高品質なサービスを安価で受けられるようになり、提供者と利用者のどちらに対してもコスト削減につながる取り組みである。

代表的なサービス例を下記にて紹介する。

UberEats

UberEatsは、今や多くの人に利用されているだろう。

サービスとしては「移動」に分類され、自宅に居ながら食べたい店舗の料理を、少額の手数料を支払うことで第三者に運んでもらえる取り組みである。

自身の代わりに移動を代行してもらう代表的なシェアリングエコノミーサービスだ。

airbnb

Airbnbは世界中の観光産業をサポートする取り組みとして、空き家や空き部屋を活用した民泊など、主に「空間」を活用したシェアリングエコノミーサービスを提供している。アパートや一軒家に格安で宿泊できるサービスだ。

近年では、オンラインによるバーチャルツアーや、旅行計画作成など、現地に住む人々の知識を活かしたさまざまなサービスが展開されている。

地域を問わず、見知らぬ土地を観光する際に活用しやすいプラットフォームである。

【社会】地方創生の実現

さまざまな資源を活用することによって地方創生にもつなげられる。例えば、赤字運営の公共施設の場合、民間の利用者を募集することで新たなサービスを展開できる可能性もあるだろう。

そのほか、福祉など高費用負担の公共サービスであれば子育てや家事代行のシェアといった地域内互助システムとして利用可能だ。

また、地元住民から協力を得て独創的な観光コンテンツを発信すると、地方の観光促進にもなる。地域が盛り上がると地方自治体の活性化にも良い影響を与え、地方創生の実現が期待できる。

【社会と個人】キャリア選択の多様化

シェアリングエコノミーは、遊休人的資産を再活用できるため、さまざまな人が市場に参加できるという特徴がある。そのため、高齢者や専業主婦もサービスを提供する側として経済活動に加わることが可能だ。

また、一般の会社員でも副業やフリーランスとしての働き方が可能となり、収入を得る方法の多様性が豊かになるだろう。

年齢や立場に関係なく、すべての人のキャリア選択が多様化し、誰もが活躍できる社会の実現にもつながるサービスだといえる。

シェアリングエコノミーが抱える課題と取り組み

シェアリングエコノミーによる恩恵は大きいものの、現状では課題も残っている。課題の概要や課題解決に向けて行われている取り組みについて紹介する。

トラブルや事故などのリスクがある

シェアリングエコノミーは、個人同士の取引であるCtoCが中心のため、利用後のトラブルや事故のリスクを抱えている。そこで政府は民泊などに関して「シェアリングエコノミー・モデルガイドライン」を策定した。

これにより、各事業者でも安全性や信頼性を高める取り組みが促進され、より安心してサービスを利用できる環境が整い始めている。

また、それぞれが協力して成り立つサービスであるため、責任の所在に関しては提供者や利用者、事業者の間で分担する体制を整えなければならない。

そして、プラットフォーム側は、利用者への保険加入を必須にするなどの取り組みも進められている。

法的にグレーゾーンな場合がある

シェアリングエコノミーサービスは新しいビジネスモデルであるため、現行法令による適用が不明確な場合が多い。法的にグレーゾーンがあると、サービスの信頼性も損なわれ、さまざまなリスクの対処も困難になる。

そこで国はグレーゾーン解消制度・企業実証特例制度の活用などを推奨し、利便性の向上や安全性の確保に留意しつつ必要な規制を強化する方針だ。

まとめ

シェアリングエコノミーは、個人の資産やスキルをシェアして有効活用できる新しいサービスである。誰でもサービスの提供者になることができ、年齢や立場を気にすることなく副業やフリーランスとしてのキャリア形成やビジネスチャンスが得られる取り組みだ。

利用者側にとってもリーズナブルで質の高いサービスを受けられるため、双方にとってメリットが大きい。しかし、現状としては法整備が追いついていない部分もあるため、トラブルやリスクに関しては責任を分担する形で対応する必要がある。