昨今、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)という言葉をよく耳にするようになった。なんとなくSDGsが重要なことは分かっていても、社会や企業が達成に向けて、どのような活動をしているのか、そして自分たちの「普段の生活にどう関わっているのか」をよく分かっていない人は多いのではないだろうか。

今回は、中国出身で2016年に新卒として協和キリン株式会社に入社した、孫 然 (Ran Sun)さんに、CSR推進部という業務を通して感じたSDGs達成への課題や、私たち一人ひとりが意識できることについて聞いた。

【インタビュイー】

孫 然 (Ran Sun)

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中国遼寧省出身。2016年、協和キリン株式会社に入社。人事部での勤務を経て、2020年からCSR推進部企画推進グループに在籍。

日本リージョン及びグローバルなCSR委員会事務局、リスクマネジメントシステム管理、リスク・コンプライアンス関連業務を担当。

『リスクマネジメント』と『コンプライアンス』の観点から、会社の目標達成と中長期的な企業価値の向上に貢献したい

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―協和キリン株式会社(以下、協和キリン)に入社した経緯を教えてください。

私は中国の遼寧省出身で、大学時代まで中国で過ごしました。

元々、日本の企業で働きたいと思っていたので、日本企業を中心に就職活動を進めていました。面接を受ける中で、特に協和キリンは面接官の対応がとてもよくて雰囲気が良いな、というのが率直な印象でした。面接官の中には中国出身の方もいらっしゃり、当時日本語が全く話せなかった私に対しても、とても丁寧に質問をしてくださりました。また、会社として様々な研修を用意しており、自分自身の成長の機会が沢山あるのではないかと感じて入社を決めました。

―これまでの経歴を教えてください。

2016年10月に入社して人事部で様々なグループを経験後、2020年8月にCSR推進部に異動しました。大学時代の専攻は英文学だったので、元々CSRに興味があったり専門知識があったりしたわけではなく、CSR推進部に配属されてから勉強をして興味を持つようになりました。

―CSR推進部の取り組みを紹介してください。

そもそもCSRというのは「Corporate Social Responsibility」の略称で、『企業の社会的責任』という意味です。各企業が社会に対して責任を果たし、社会とともに発展していくための活動を指しています。

私は協和キリンのCSR推進部 企画推進グループの一員として、リスクマネジメント関連の業務をしています。リスクマネジメントとは、経営目標に与えるリスクの特定と分析評価、リスクへの対応、対応状況の確認、対応の改善を行う、一連の継続的な活動です。

主要業務はCSR委員会の運営です。日本国内のCSR委員会だけでなく、日本、北米、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、アジア/パシフィックというグローバル拠点を統括したグループCSR委員会を運営しています。日々のコミュニケーションで英語や中国語を利用することもありますが、主に日本語をベースとして仕事を進めています。

それに加えて、リスクマネジメントシステムの運営と管理を担当しています。

―CSR推進部の仕事を通じて実現していきたいことはなんですか?

リスクマネジメントとコンプライアンスの観点から、会社の経営目標の実現に貢献すること、そして中長期的な企業価値の向上に貢献したいと考えています。

何か災害や問題が生じたときに、その逆境を乗り越え、しなやかに回復する力として、レジリエンスという言葉でも表現されますが、会社としてのレジリエンスを高めていきたいです。

人材の多様性があふれるCSR推進部で働き、得られる知識や経験が財産

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―現在の仕事をする中で、一番やりがいを感じるところはなんですか?

CSR推進部の特徴は、様々な背景を持った人材が所属していることですが、そのような環境で働き、日々沢山のことを学べるのがやりがいです。

研究開発、営業、法務など専門分野が異なる方や、経験者採用で入社された方が集まっているので、様々なバックグラウンドを持っている方々と一緒に働く中で、得られる知識や経験は本当に財産となっています。

―多様性があふれる部署だからこそ、仕事をするうえで困ったことはありますか?

R&D(Research and Developmentの略。研究開発のこと)部門のリスクマネジメントをサポートしていた際に、R&D部門のリスクマネジメント活動をモニタリングする必要がありました。当時、私にはR&Dに対する知識があまりなく困っていたところ、R&D本部の経験があった上司が丁寧に関連知識や文化について教えてくれました。そのサポートがなければ業務は務まりませんでした。

また、中堅以上の先輩方が多い中で、若手は自分だけで戸惑うこともありました。ただ英語、中国語、日本語を話せるという自分の強みがあって今の仕事に抜擢されたと感じていたので、それを活かして頑張ってきました。

―グローバルな視点からみて、各国のSDGsの取り組みはどう感じていますか?

SDGs関連のトピックはそもそも欧米が先行して取り入れていた印象でしたが、日本でも昨年から急激に議論に上がるようになりました。YouTubeでもSDGs関連の動画は日本語のものが多くて、興味関心の高さが見て取れます。現在となっては、世界のどの地域の経営層も課題意識をもって取り組んでいる重要なトピックとなっているなと感じています。

私の出身である中国では、SDGsというワードこそ日本ほど認知度は高くないかもしれないですが、「持続可能な発展(可持续发展)」というスローガンはずっと前から流行っていて、SDGsに近い概念としてあるので、持続可能性という考え方は浸透しているように思います。

多様な人材が多様な形で活躍できる社会を実現したい

―孫さんが感じる、SDGsの取り組みにおける日本の課題はなんですか?

私が感じている日本の課題は、ジェンダー平等です。まだまだ女性の経営層の比率は、世界各国に比べて日本は少ないですし、正規雇用(フルタイム)で働いている女性の割合も多くありません。

中国では男性も女性も働くのが普通ですが、日本では『男性は仕事優先で稼ぐ、女性は家庭を優先する』というような考え方もいまだに残っていると感じています。

今後は女性の社会進出だけではなく、国籍、障害者含めて多様性の推進をしていければと思います。

―孫さんご自身は中国出身で、日本企業で働くにあたり困難はありましたか?

協和キリンでは外国人の採用は私の入社以前から進んでおり、手厚い研修を受けることができます。私も入社前からオンラインで日本語の研修を受けましたし、入社後も個々人のレベルに応じて日本語研修を受けることができ、安心して仕事ができるサポートがありました。私の知る範囲では、入社後半年間にわたり日本語を集中して学ぶという手厚い研修を受けた人もいます。

就職活動の面接のときに受けた「外国人にやさしい」という印象は会社の文化であり、いい意味でギャップもなく、特段困ったことはありませんでした。

―更に多様性を推進していくために必要なことはなんですか?

まず個人の意識面を変えていくことが大事だと思います。例えば、『女性は〇〇の仕事には向いていない』、『外国人だから〇〇を好む』などという偏見(アンコンシャスバイアス)をなくしていくことが大切です。お互いの背景を理解して、個性を尊重しあえる状態を築いていくこと、そして一人の『人』として一緒に働ける状態が望ましいと考えています。

そして企業は、多様な人材が活躍できる環境や制度面を更に充実させていくことです。先ほどの語学研修のように、国外の人が安心して仕事ができるような手厚いサポートをしていく仕組みを提供できると良いなと感じています。

入社の決め手になった「人の魅力」。これが協和キリンの強み。

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―孫さんから見た協和キリンの魅力とは?

色んな見方があると思いますが、自分にとっては「人」です。私の考えとしては、もちろん仕事の内容も大事ですが、それ以上に一緒に働く人が大事だと考えています。仕事の内容がどんなに楽しかったとしても、人間関係が合わなければ楽しく仕事をすることができないからです。

協和キリンはチームワークの文化を持っている、と私は感じています。そのおかげで沢山の協力を頂いて今楽しく仕事ができていることに感謝をしています。

実は元々私は人見知りであまり意見を言えず、そのことで悩んでいたこともありました。その時の上司との面談で、これからキャリアを積んで行くためには自分の意見を言っていこうとアドバイスをもらってから、間違っていることもあるかもしれないけど、自分の意見を言うことにチャレンジしています。若手の意見をきちんと受け入れてくれる会社としてのフラットさにも魅力を感じています。

―今後のビジョンをお聞かせください。

直近においてCSR推進部で実現したいのは、リスクマネジメントシステムのグローバル展開です。

グローバルで同じひとつのシステムを使うことに関しては、各拠点からすると不都合も生じるので、時として反発もあります。各拠点での個別最適になっているものを、長期的な全体最適に整えていくのは当然一筋縄ではいきません。何度も何度もコミュニケーションを取って理解を得ていくことが大切だと感じています。

個人的には、今年入社6年目になるので、仕事も家庭も両立していける人になるということと、将来的にはCSR推進部以外の仕事も経験していきたいです。

―――今回は、孫さんがグローバルにCSRを推進する立場だからこそ見える、世界各国のSDGsへの取り組みや協和キリンの今の姿を知ることができました。ありがとうございました。