「生理の貧困」とは、生理の尊厳とも言われ、生理用品の利用ができないことや状況を指します。経済的理由や環境、社会的偏見、虐待やネグレクト、生理への無理解、知識不足など多くの深刻な問題があります。

 

リオデジャネイロのスラム街に住むヴァネッサ・モラエス(39歳)は、仕事をかけ持ちして2人の息子を育てているが、生活保護を受けてやっとの暮らしだ。

だから、毎月タンポンやナプキンを買うことはどうしても後回しになってしまう。

ブラジルの多くの女性がそうであるように、モラエスも生理の時には使えるものは何でも使って間に合わせている。長年タブー視されてきたこの問題をめぐって、2021年10月、政治的な動きがあった。ジャイル・ボルソナロ大統領が、貧困層の女性に生理用品を無償提供するという法案に拒否権を行使したのだ。

「ナプキンは高いので、布切れや枕カバー、おむつなど代用できるものは何でも使っています」とモラエスは言う。

2人の息子は11歳と12歳。年上のヒューゴーには脳性まひがあり、おむつが欠かせない。

「息子のおむつが1枚でも破れたら、かならずこう考えるんです。『よし、ナプキンとして使おう』って」と彼女は話す。

長身のモラエスがどうやるか見せてくれた。まず、おむつの両側にある伸縮性のバンドをはがし、真ん中の吸収部分を開いて、そこに布切れをあてて使い勝手をよくする。

モラエスが住むコンプレックソ・ド・アレマンは、リオデジャネイロ北部に無秩序に広がる貧民街「ファベーラ」のひとつだ。

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ウェイトレスとスクールバスの運転手をかけ持ちして得られる彼女の収入の大半は、ヒューゴーの介護に充てられる。

政府からは毎月1,100レアル(およそ22,000円)の補助があるが、それでも生活はギリギリだという。

ブラジルでは、タンポンやナプキンは1パック3~10レアル(およそ60~200円)で販売されている。モラエスにとっては、簡単に出せる金額ではない。

2億1300万人が住むブラジルでは、6000万人の女性に月経があると推定されている。

貧困層の女性のおよそ28%は、最低限の生理用品を買う余裕がなく、いわゆる「生理の貧困」に陥っている。

必要に駆られて、女性たちは生理を乗り切るための解決策として、パン切れ、コットン、紙、「パニーニョ」(洗って何度も使う小さな布切れ)など実にさまざまなもので代用してきた。

それでも国連財団のイニシアチブ「Girl Up」の最近の報告によると、生理用品がないことで、毎月4人に1人の女の子が家から出られず学校に行けていない。

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– 公衆衛生の問題 –

モラエスは、貧困にあえぐ障害者とその家族を支える地元の慈善団体「One by One」から支援を受けている。

同団体は、車いすのような用具のほか、食料や生理用品などの生活必需品も支給している。

同じく団体から支援を受けているカーラ・クリスティーナ・デ・アルメイダ(15歳)は、月1回支給される1パックの生理用品を姉妹と分けて使っている。だがそれも、支給があれば、の話だ。

「1パックもらえるときもありますが、まったくもらえないときもあります。支給がなければ家から出ることすらできません。だから学校はお休みするんです」と彼女は言う。

One by Oneが最近行った生理用品の配給には女性たちが列をなした。

そのうちの1人ミリアム・ファーミーノ(51歳)は、「パニーニョ」を使っていた当時のことを覚えている。3人の娘には同じ経験をさせたくない。

「タンポンを買うならセール品じゃないと買えません。セール品を見つけられなければ、何とかして別の方法でやり過ごします」と彼女は話す。

新型コロナウイルス感染症の大流行で、問題はいっそうひどくなった。パンデミックによる経済危機で最も大きな打撃を受けているのは貧困層だ。

One by Oneの代表テレサ・ステンゲルは次のように語る。「パンデミックと経済危機の影響で、私たちが支援する母親たちからは、生理の時には『パニーニョ』や紙、コットンなどをまた使うようになったという声が多く聞かれるようになりました」

「傷や感染症を訴える方も多くいます。生理の貧困は公衆衛生の問題なのです」

– ボルソナロ大統領の拒否権行使 –

昨年10月、ボルソナロ大統領は「月経の健康」を促進するための法案に署名したが、生理用品の無料配布の項目については拒否権を行使した。対象となる500万人を超える低所得層の女性に無料配布するだけの資金がないと説明している。これを受けて、ブラジル国内では議論が巻き起こった。

極右のボルソナロ大統領は、これまでもたびたび女性蔑視や反女性的な政策で批判されてきたが、今回の拒否権行使も激しい非難を招いた。

大統領の動きに対して、リオデジャネイロ市や他の一部の州・地方政府は公立学校でのタンポンの無償提供を始めた。

ツイッターには皮肉を込めたこんな投稿が寄せられている。「私の学校は、ボルソナロ大統領よりよっぽどブラジルのためになることをしてくれた。女の子全員にタンポンを3パックずつ配ったのだから」

 

この記事は、Digital JournalよりAFPで執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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