開発途上国と適正価格で取引するフェアトレードは、貧困問題やジェンダー平等の実現など多くの効果が見込まれる国際的取り組みだ。

今回は、フェアトレード認証、フェアトレードとSDGsの関係、企業の取り組み例について解説する。

フェアトレードとは「公平・公正な貿易」のこと

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フェアトレード(Fair Trade)は、「公平・公正な貿易」を意味する。開発途上国で作られた製品・農作物を購入する場合に、不当に低い価格ではなく適正価格で取引する貿易のあり方だ。継続的に適正価格で取引することで、開発途上国の生活を改善する目的がある。

この項目では、私たちが日常的に触れる機会のあるフェアトレード認証・製品を紹介しよう。

国際フェアトレード基準

フェアトレード製品であることを示す国際フェアトレード認証ラベルがある。その認証基準となっているのが「国際フェアトレード基準」だ。この基準は国際フェアトレードラベル機構によって定められている。

国際フェアトレードラベル機構によって定められる基準は、経済・社会・環境と、その視点は多様である。これら全般の基準に共通しているのは、「経済的」「社会的」「環境的」3つの原則だ。

経済的基準 ・フェアトレード最低価格の保証

・フェアトレード・プレミアムの支払い

・長期的な取引の促進 など

社会的基準 ・安全な労働環境

・民主的な運営

・差別の禁止 など

環境的基準 ・農薬・薬品の使用削減と適正使用

・有機栽培の奨励

・土壌・水源・生物多様性の保全 など

(参考:国際フェアトレード基準|フェアトレードとは?|fairtrade japan|公式サイト (fairtrade-jp.org)

適切な基準でフェアトレード製品と認められたものを、認証ラベルで消費者に知らせ、販売機会を増やしている。

主なフェアトレード製品

では代表的なフェアトレード製品を紹介していく。主に次のような商品がある。

・コーヒー

・紅茶

・カカオ

・コットン製品

・果物

・香辛料

この中でもコーヒーはフェアトレード認証製品市場で大きな割合を占めている。開発途上国のコーヒー生産農家の多くは、小規模で販路も情報網も持たないケースが多い。そのため、市場に有利な価格で売買したり、マーケット情報を手に入れたりすることができず、中間業者に頼らざるを得ない。

その結果、十分な利益を得られないこともあり、暮らしが圧迫される状況につながっている。生活が不安定になると、子どもを学校に通わせることが困難になり、貧困が広がったり児童労働をせざる得なくなったりと、負の連鎖が続いてしまう。

そこでフェアトレード製品から利益を獲得できれば、地域社会の発展が叶うといわれている。生産農業家をまとめて生産組合を作り、生産性向上のための取り組みや交渉力を身に付けていくことができる。

また、これらの取り組みや安定した生活を持続させるために、世界フェアトレード連盟よって「フェアトレード最低価格」が定められている 。

フェアトレードとSDGsの関係

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フェアトレードの取り組みは、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)が掲げる全ての目標に関係している。SDGsの取り組みにフェアトレードは必要な要素として考えられており、全ての目標に直接的、間接的に関連している。

ここでは、直接的に関わると考えられる目標を8つ紹介する。

目標1.貧困をなくそう

目標2.飢餓をゼロに

目標5.ジェンダー平等を実現しよう

目標8.働きがいも経済成長も

目標12.つくる責任つかう責任

目標13.気候変動に具体的な対策を

目標16.平和と公正をすべての人に

目標17.パートナーシップで目標を達成しよう

フェアトレードとそれぞれの目標がどのように関わるのか、具体的に説明する。

1.貧困をなくそう

フェアトレードに取り組むことは開発途上国の収入安定化につながるため、「SDGsの目標1.貧困をなくそう」の達成に関係する。

国際フェアトレード基準の経済的基準では、

・最低価格の保証

・長期的な取引の促進

などが推進され、安定した収入を継続して得られる仕組みづくりがされている。また、生産者組合の形成をサポートすることで、生産力や交渉力を向上させ貧困から脱却させる取り組みも、フェアトレードの一環である。

2.飢餓をゼロに

フェアトレードの取り組みは、「SDGsの目標2.飢餓をゼロに」の達成、持続可能な農業の促進にも関係が深い。

国際フェアトレード基準の環境基準を 推進することによって、生態系を維持し将来にわたって持続可能な農業の実現につながるからだ。

また、生産者組合の形成による生産性向上は安定した食料供給を可能とし、飢餓の撲滅達成に寄与するといえるだろう。

5.ジェンダー平等を実現しよう

フェアトレードの取り組みの1つに、対象地域の生産者に対する奨励金(フェアトレード・プレミアム)を支給する制度がある。

これを活用して行われているのが、女性を対象とする職業訓練や小規模融資など、女性の地位向上につながる取り組みだ。

このようにフェアトレードは、ジェンダー平等の実現にも貢献している。

8.働きがいも経済成長も

開発途上国で大きな問題となっているのが児童労働だ。フェアトレードの取り組みは、児童労働の撲滅や安全安心な労働環境の実現にも関係する。

具体的には、国際フェアトレード基準の社会的基準において、児童労働・強制労働を禁止し安全な労働環境づくりを求めていることが挙げられる。

フェアトレードの取り組みを進めることで、子どもは安心して教育を受け、大人は安全に労働に従事できる環境が実現するだろう。

12.つくる責任つかう責任

フェアトレードでは、生産者に農薬・薬品の使用削減と適正使用や土壌・水源・生物多様性の保全など、持続可能な農業を推進している。

一方で消費者に対しては、フェアトレード認証ラベルにより世界30ヶ国以上でフェアトレード調達を促している状況だ。

このように、フェアトレードは生産、消費の両面から持続可能なあり方を目指している。

13.気候変動に具体的な対策を

国際フェアトレード基準では、気候変動対策として効果的な有機栽培を奨励しており、認定農家の実に50%以上がオーガニック認証を受けている。

加えて、奨励金(フェアトレード・プレミアム)を活用し、環境負荷を低減する農法へシフトする取り組みを実施する例もある。

フェアトレードの推進は、気候変動対策にも大きく寄与する。

16.平和と公正をすべての人に

開発途上国に多い小規模農家が協働できる生産者組合を作ることで、発言力や交渉力を高める取り組みもフェアトレードの一環だ。

その結果、先進国や発言力の大きな業者の言いなりにならず、取引や仕組みづくりに参画できることが可能になる。

公正なビジネス・労働環境の実現につながるSDGsの実現に欠かせない取り組みといえるだろう。

17.パートナーシップで目標を達成しよう

フェアトレードの取り組みにおいて、SDGsの目標17達成に関わるグローバルパートナーシップが活性化している。

・フェアトレードに地域全体で取り組む「フェアトレード・タウン」

政府、企業、生産者が協働してプロジェクトに取り組む

販売会や勉強会の実施

など、フェアトレードの推進に向けたパートナーシップは、国内外で広がりを見せている状況だ。

企業のフェアトレードへの取り組み

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フェアトレードの取り組みは世界的に広がりを見せており、日本企業も例外ではない。ここでは、先進的な取り組みを行う2社を紹介する。

イオン株式会社

イオン株式会社では、プライベートブランドに使用するカカオなどの原料を、フェアトレードによって調達する取り組みを行っている。

具体的には、

・国際フェアトレード認証などを受けている

・労働環境の改善などをイオンが直接支援した生産者が生産している

のどちらか、または両方を満たすことを確認できた原料を使用することを目標に設定している。プライベートブランドで使うカカオすべてを持続可能性の裏付けが取れたものにシフトし、開発途上国を支援することを目指している。

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

持続可能なコーヒーの調達100%を目指すスターバックスコーヒーでは、フェアトレードに関するさまざまな取り組みを行っている。

・持続可能な調達の独自ガイドラインを策定

・国際フェアトレード認証のコーヒーを世界でもっとも多く購買

・コーヒー豆生産地にサポートセンターを開設し、生産性向上などをサポート

独自ガイドラインでは、生産者に支払われている価格や労働環境が適正か、環境への影響に配慮しているかなどを確認の上、取引することを定めている。

まとめ

フェアトレードは、開発途上国で作られた製品・農作物を適正価格で取引することで、生産者の生活を改善する目的がある。SDGsの多くの目標達成と密接にかかわる取り組みが世界中で行われている。フェアトレード認証製品を手に取ることで、私たちも参画可能だ。