協和キリンのファーマコビジランス(PV)本部は、世界中の患者さんに笑顔を届けるため、グローバルで連携しながらチーム一丸となって業務を行っている。前編に引き続き、後編ではPV本部のメンバーが日々どのようなことに取り組んでいるのか、PV活動を担う欧州と日本のメンバーによる対談をお届けする。

 

【話を聞いた3名】

アリーナ・チューダーAlina Tudor

協和キリン・インターナショナル ファーマコビジランス・シニアディレクター

2020年入社。前職での15年以上にわたる医薬品安全管理の経験を活かして、世界各国での医薬品の安全性管理の取り組みをリードしている。ルーマニア出身。医師(メディカルドクター:MD)

葉山 佐和子(はやま さわこ)

協和キリン株式会社 ファーマコビジランス本部 PVメディカル部 メディカルセーフティグループ所属 マネージャー

臨床医を経て、2020年に入社。医学的観点からの安全性情報の評価を主に行う。医師(メディカルドクター:MD)

西村 美紀(にしむら みき)

協和キリン株式会社 ファーマコビジランス本部 PVメディカル部 メディカルセーフティグループ所属

2018年入社。腎領域製品を担当し、医薬品および治験薬に関するファーマコビジランス関連業務の統括、他部門との連携を行う。

グローバルで統一したデータベースに基づき安全性を評価

――PV本部として、グローバルで連携しながら具体的にどのようにPV活動を行っていますか。

(アリーナ・チューダー、以下チューダー)

協和キリンのすべての製品に対して、PV本部内にグローバルセーフティチームが設立されており、統一したプロセスで安全性を評価しています。製品によって効能やライフサイクルのどの段階に位置するかは異なりますが(過去に承認され、長年にわたり臨床で使用されている製品もあれば、発売されて間もない製品もあります)、基本的にはグローバルで標準化した情報収集の方法を用いてリスクの検出と評価を行い、有用な安全性情報を提供しています。グローバルで統一したデータベースも活用しています。各製品に専門のグローバルセーフティチームが配置されており、製品に関する活動の規模や複雑性によって、チームメンバーは2人だけの場合もありますし、6、7人のチームで担当する場合もあります。

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画像:アリーナ・チューダー 

私は、骨疾患に関する医薬品(当社製品)のグローバルセーフティチームのリーダーです。英国で勤務していますが、各国や地域間の調整を行っています。骨疾患に関する医薬品のほか、EUのみで流通している数種類の製品も担当しています。

――皆さんは安全性評価に従事するうえで、普段はどのように連携しながら仕事を進めているのですか。

(チューダー)

私たち3人は同じ製品のグローバルセーフティチームで、日ごろからメールやTeamsなどのチャットツールを通じてたくさん連絡を取り合っています。シグナル検出(特定の医薬品に関する新たなリスクの有無や変化の確認を目的とした作業)や世界各地の関連機関に提出する安全性定期報告の作成を行っています。

(西村 美紀、以下西村)

3人でコラボレーションすることは多いですね。それぞれの業務で忙しい時も、絶えずコミュニケーションをとりながら、密に連携しています。

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画像:アリーナ・チューダー(PC画面)、西村 美紀(右)、葉山 佐和子(左)

――今、皆さんのグローバルセーフティチームにとって重要なテーマは何ですか。

(チューダー)

重要なテーマは、世界中に供給している製品のあらゆる情報をいかに入手して評価するかです。私たちの評価は、入手した全てのデータに基づいているので、可能な限り正確な情報を多く集めることが何より重要です。チームメンバーが世界各地にいる状況では、常にすべてを把握することは簡単ではありません。しかし、私たちは密に連絡をとりあうことで、この課題を克服することができました。

医薬品は、どの国にいるかにかかわらず全ての患者さんにとって安全なものでなければなりません。そのために、各国の行政機関や規制当局とも緊密に連携しながら、世界各地から製品の安全性情報を可能な限り収集、把握した上でリスクを評価することが求められます。

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「桃太郎プロジェクト」でPV活動を改善し続ける

――PV本部には「The Momotaro Project(桃太郎プロジェクト)」というものがあるそうですが、どのようなプロジェクトですか。

(チューダー)

桃太郎プロジェクトが始まったのは、2020年4月のGlobal PV体制の本格立ち上げ以前のことです。グローバルプロセスの確立とPV活動の調和を目的に始動しました。13のワークストリームごとにメンバーが割り当てられ、グローバルPVプロセスの確立に取り組みました。

例えばグローバルリスクマネジメント計画のプロセスでは、会社が定めている中核的な考え方をもとに、地域や国レベルでも親和性のある手法が必要となるので、担当チームのメンバーはそのためのグローバルプロセスを検討し、確立しました。そのほか、先に述べたシグナル検出やコンプライアンス(企業が法令を守っているかどうか)、症例の収集や評価に関するグローバルプロセスも定めました。

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チームとしてともに学んで成長し、グローバルな医学・サイエンスを活用しながら製品にさらなる価値を加えることで、私たちは法令に沿ってグローバルに医薬品の安全性を担う組織になれると信じています。また、そうして初めて、私たちの究極の目標である副作用の予測・予防もできるようになると考えています。

――なぜ、桃太郎プロジェクトという名前が付いたのですか。

(葉山 佐和子、以下葉山)

たくさんの候補があったのですが、リーダーシップチームの投票で選ばれました。桃太郎が仲間を引き連れて鬼退治に行くように、私たちも業界のリーダーになるために多彩なメンバーの能力を活かしてさまざまな課題を克服することが必要であることを表したモチーフとしてぴったりなので、桃太郎プロジェクトになったのだと思います。

――桃太郎プロジェクトはフェーズ1が2020年8月に終わり、現在はフェーズ2に入っていますね。フェーズ2では何をしているのですか。

(チューダー)

新しいシステムを日々運用しながら、フェーズ1で定めたグローバルプロセスのさらなる改善や、フェーズ1ではできなかったことに取り組んでいます。例えば、ローカル、グローバル両方のすべてのリスクマネジメント活動を追跡・監視するプロセスは、フェーズ1では確立できませんでした。フェーズ2ではこの課題に取り組み、ローカル、グローバル両方で追跡・監視する仕組みを作っています。新しく確立したグローバルプロセスに沿って業務を進めれば進めるほど、さらに良くするための課題が見つかり、改善の余地は常にあります。フェーズ2が終わった後も、やるべきことや改善すべきことはきっと出てくると思いますよ。

副作用の予測・予防が実現する時代に向けて

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画像:葉山 佐和子(左)、アリーナ・チューダー(中央)、西村 美紀(右)

――今後、2025年に向けてPV活動はどのような取り組みを中心に進んでいきますか。

(チューダー)

シグナル(特定の医薬品に関する新たなリスクの有無や変化)の予測に力を入れていきます。それを実現するためにはまず、協和キリンが持つ独自の安全性データベースのみならず、公開されているデータも含め、多くのデータにどこからでもアクセスできる必要があります。グローバルチームとして、より良い方法でデータを集め、より良い評価につなげることが大切です。

また、サイエンスの世界では今、医療ビッグデータ(リアルワールドデータ)をどのように見るかに注目が集まっています。ひとたび製品が臨床応用されると手に入る医療ビッグデータを用いて、私たちは製品の安全性のモニタリングと評価を行うことになります。それらをどう行うかが、製品の安全性を高める上で極めて重要です。

協和キリンは希少・難治性疾患の医薬品も取り扱っていますが、患者さんの情報は限られている上にとても重要で、こうした制約がある中で製品の安全性評価を行っています。世界各地で長期的な安全性のモニタリングを行いながら、データの収集や評価の質を高められれば、製品の安全性をより正確に捉えられるようになり、いずれ副作用も予測できるようになるでしょう。

やるべきことはたくさんあります。私にとってはすべてがとてもエキサイティングで、未来のチャレンジに参加するのがとても楽しみです。

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(葉山)

とても大事なことですね。私たちは一つのグローバルなデータベースを持ち、それを使って統一したアプローチで安全性を評価しています。すでにそういった統一した評価アプローチを確立した製品は多いですが、一部の製品ではまだ確立しきれていない部分がありますので、次のステップとして取り組んでいきたいです。

(西村)

患者さんの安全を第一にというポリシーは、PV本部だけでなく社内に根づいています。患者さんのニーズや製品の安全性を引き続き追求しながら、チームメンバーが働きやすい環境作りも継続して行っていきたいです。

グローバルでのPV活動の基盤をつくり、信頼性の高い安全性評価を行っている協和キリン。医薬品の副作用の予測・予防が実現する時代に向けて、PV活動はこれからも続きます。

 

後日、英語原文もアップされますので興味のある方はぜひご覧ください。