デンマークにある世界最大手の玩具メーカー レゴの依頼で行われたグローバル調査で、遊びや将来のキャリアに対する捉え方には依然として男女差があり、制約をはらんでいることが分かった。調査結果を受けてレゴは、自社製品からジェンダーの固定観念をなくす取り組みを進めると発表した。

調査では、女の子は幅広い活動に自信をもって熱心に取り組もうとする傾向が高まっているのに対し、男の子にはそういう傾向は見られなかった。

調査対象の男の子のうち71%は、女の子向けとされるおもちゃで遊ぶとからかわれるのではないかと不安に感じていた。また、親も同じ不安を抱えていることが分かった。今回の調査を行った「ジーナ・デイヴィス メディアにおけるジェンダー研究所」(以下、「ジーナ・デイヴィス研究所」)の所長マデリン・ディ・ノーノは、「異性向けのおもちゃで遊ぶといじめられるのではないかという親の心配は、娘よりも息子に対して強く見られます」と語る。

「しかし、男性と関連づけられる行動の方が、社会では高く評価されるということも事実です」とディ・ノーノは言う。「一般的に女性のものとされる行動や活動も同じように価値があり、重要であるという認識が社会に広まらなければ、親も子どももそういう行動を抵抗なく受け入れることはできないでしょう」

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調査では、親世代が今なお、息子にはスポーツやSTEM(科学、テクノロジー、工学、数学)関連の遊びを勧め、娘にはダンスやおしゃれ、あるいはお菓子作りに関連する遊びを勧めていることが分かった(女の子がダンスやおしゃれといった遊びを勧められる傾向は男の子の5倍、お菓子作りでは3倍だった)。

アカデミー賞俳優で活動家でもあるジーナ・デイヴィスは、「このような結果から、世界中でジェンダーバイアス(男女の役割についての固定観念)が根深く残っていることは明らかです」と話す。彼女は、2004年にジェンダー研究所を設立して、ジェンダーに関する否定的な固定観念と闘い、インクルージョンを推進する活動をしている。

『The Gendered Brain』(仮題:ジェンダー化された脳)の著者で認知神経科学者でもあるジーナ・リッポン教授は、「非対称的なのです。女の子に対して男の子向けとされるおもちゃは勧めても、その逆はありません」 と語る。

おもちゃ遊びが将来必要となる資質を身につけられる機会を提供できるという点を考えると、今の状況には問題があるとリッポン教授は指摘する。「レゴのように組み立てたり分解したりするおもちゃで遊ぶ機会を女の子が与えられないとしたら、生きていく上で役立つ空間能力を身につけることができません。人形遊びが女の子にばかり押しつけられていたら、男の子は何かを育む力を習得するチャンスを失ってしまいます」

レゴは、国連が国際ガールズ・デーとして定める10月11日を迎えるにあたり、今回の調査報告書の作成を依頼した。調査は、中国、チェコ共和国、日本、ポーランド、ロシア、英国、米国の6歳から14歳の子どもとその親7,000人近くを対象に行われた。

「私たちは、何とかしてレゴをもっと分け隔てないおもちゃにするため、手を尽くしています」 レゴグループのチーフプロダクト&マーケティングオフィサーを務めるジュリア・ゴールディンはそう語る。

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2021年初めから、ジーナ・デイヴィス研究所は、レゴの監査を行い「ジェンダーバイアスと有害な固定観念に対処する」ための助言を行ってきた。その結果レゴは、自社製品からジェンダーバイアスをなくすことを約束するに至った。

「これまでレゴの商品は男の子に多く利用されていました。しかし、アート&クラフトセットの『レゴ®ドッツ』や『レゴ®シティ どうぶつレスキュー基地』などの商品は、厳密には男の子にも女の子にも遊んでもらえるように作られています」とゴールディンは話す。現在レゴは、空間認識力や創造的な思考、問題解決能力だけでなく、何かを育て、思いやる力を伸ばす商品づくりを進めている。

2012年、子ども向け商品のブランドに対して、ジェンダーの分け隔てをなくして商品展開を進めるよう迫る草の根運動「Let Toys Be Toys」が英国で始まった。男の子も女の子も誰一人として、「自分にはふさわしくないおもちゃ」で遊んでいると感じないようにするために始まった運動だが、進展は遅い。英国の人権団体フォーセット・ソサイエティが2020年に発表した報告書は、いいかげんなステレオタイプ化や性別によるおもちゃの決めつけが若者の心の健康の危機をいかに加速させ、キャリアを考える上でいかに選択肢を狭めているかを明らかにした

その影響は親世代にも広がっている。ジーナ・デイヴィス研究所の調査では、父親母親ともに、女性よりも男性の方が「創造力がある」と捉えていることが分かった。科学者やアスリートが男性向きの職業であると考える割合は女性向きと考える割合の6倍、エンジニアにおいては8倍以上の差が開いた。

ゴールディンは、レゴではすでに「女の子向け」や「男の子向け」という商品表示をしていないと語った。レゴのウェブサイトでは現在、性別で商品を検索することはできなくなっている。その代わりに、同ウェブサイトでは「パッションポイント」(情熱、興味関心)という区分を設けている。

「これからはあらゆることをジェンダーの分け隔てなく検討し、女性のロールモデルになるような商品を増やしていきます」とゴールディンは言う。最近の同社のライブ配信「レゴコン」では、女性デザイナーが自身の作品について紹介する様子を伝えたり、「Rebuild The World――創造力が、世界を変える」キャンペーンでは、特に女の子の取り組みに注目したりしている。

ゴールディンはこう付け足す。「私たちが今やるべきことは、これまでなら自分には『ふさわしくない』と判断されかねなかったようなおもちゃで遊びたいと思う子どもたちの背中を押すことです」

この記事は、The Guardianよりヘレン・ラッセルが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。