世界には、さまざまな差別が存在している。それは、日本国内においても例外ではない。差別のない社会をつくるためにも、「どのような差別があるのか」を知ることは重要だ。

この記事では、現代に存在する差別問題を紹介する。そして、差別問題をなくすために国連が採択した、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の取り組みを紹介していく。

日本国内における差別・人権に関する問題

差別 問題 2.jpg

国内には、どのような差別があるのだろうか。知っておくべき国内の差別問題を取り上げる。

女性

女性の社会参画は進んでいる。しかし、まだ「男性は仕事、女性は家庭」というように、男女の役割を固定的にとらえる考えが残っている。このような考えなどによって生まれているのが男女差別だ。

特に、女性への職場でのセクシャルハラスメント、妊娠や出産によるマタニティハラスメント、などが社会的な問題となっている。

女性という理由だけで職場や家庭で不当な差別が起きないような社会を実現していかなくてはならない。

子ども

子どもに対してのいじめ、体罰、児童虐待、性的搾取、いじめなどに起因する自殺などが深刻な人権問題として起きている。子どもも一人の人間として、最大限に尊重され、守られなければならない。

高齢者

高齢であることの職業差別、介護施設や家庭内での身体的虐待や心理的虐待、高齢者の意思を無視した財産処分が問題として起きている。

日本では、少子化などを背景に高齢者の人口が増えてきているのが現状だ。

人口的にも多い高齢者が、これまでの経験などをもとに社会に貢献したい気持ち、地域の人々と交流を楽しめる気持ちをもてるよう、高齢者への理解を深め、高齢者も生き生きと暮らせる社会の実現を目指さなければならない。

障害者

障害者については、障害があることでの職業差別、職場での差別待遇、車いすを理由にした乗車拒否や入居拒否、サービス拒否などが問題として存在する。共生社会の実現には至っていないのが現状だ。

障害者含め、あらゆる人が平等に過ごせる社会を実現するには、国や公共団体主導の施策が求められる。私たちは、障害がある人への理解を深め、偏見や差別のない、平等な社会づくりを目指さなくてはならない。

部落差別(同和問題)

同和問題は、日本の歴史的な身分制度によって形成されてきた、日本固有の問題だ。昭和44年の特別措置法以降、同和地区の劣悪な環境は改善の傾向にあったが、いまだ差別は残っている。結婚や交際、就職などで不当な差別がある。また、差別発言や差別的書き込みも存在する。

さらに、部落差別については「えせ同和行為」も問題だ。えせ同和行為は、同和問題を口実に企業などに不当な圧力をかけ高額なものを売りつける行為で、部落差別解消の妨げにもなっている。

アイヌの人々

先住民族であるアイヌの人々は、現在でも理解不足による就職や結婚の差別が存在している。さらに、近代以降の同化政策により、アイヌ固有の言葉、伝統的な儀式、ユーカラ(口承文学)、などの独自の豊かな文化が十分に保存、伝承されてこなかった。

アイヌの人々の民族の誇りを尊重するためにも、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」を踏まえ、アイヌの人々の歴史や文化への認識、理解を深めることが重要だ。

外国人

外国人であることを理由にしたアパートやマンションの入居拒否、職業上の不当な扱い、特定の国籍の人などに対する差別的な言動であるヘイトスピーチなどが問題になっている。

共生社会を実現するためにも、宗教や生活習慣の違いといった文化の多様性を理解し、尊重することが大切だ。

HIV感染者・ハンセン病患者などへの差別

HIVやハンセン病などの感染症については、誤った認識や偏見が存在し、いまだ正しい知識や理解が進んでいるとはいえない。

現代においても、HIV感染者やハンセン病患者、あるいは元患者や家族に対して、日常生活、学校、職場、医療現場などのあらゆる場所で、差別やプライバシー侵害が起きている。

HIVは通常の接触では感染しないほか、ハンセン病は感染しても発病するケースが少ないので、感染症と忌避せず、それぞれが正しい知識をもち、偏見や差別を解消していかなくてはならない。

刑を終えて出所した人

刑を終えて出所した人が社会復帰するには、本人の強い更正意欲、周りの人の理解と協力、のどちらも必要だ。しかし、本人や家族に対する偏見や差別のほか、就職の差別、住所の確保の難しさもあって、社会復帰が現実的に厳しい状況になっている。

刑を終えて出所した人が社会復帰できるようにするためにも、問題についての関心や理解を深め、偏見や差別意識をなくしていくことが重要だ。

ホームレス

ホームレスに対する嫌がらせや暴行事件などが社会問題として挙げられるようになってきた。

自立の意思はあっても、やむを得ない事情などでホームレスになった人も多く存在する。ホームレスに対する偏見、差別からの嫌がらせや暴行をなくすためにも、行政などの自立をサポートする取り組み、地域社会の理解と協力が必要だ。

性的指向および性自認(性同一性)

同性愛や両性愛などの性的指向に対する偏見から職場で不当な扱いを受ける人、心とからだの性が一致しない性自認(性同一性)によって、周囲から好奇な目を向けられたり、職場で不当な扱いを受けたりする人もいる。

性的指向や性自認を理由にした偏見や差別をなくすためにも、社会全体が問題について関心をもち、深く理解することが必要だ。

人身取引(トラフィッキング)

性的搾取や強制労働などを目的に行われる人身取引(トラフィッキング)は、深刻な人権侵害であるほか、重大な犯罪でもある。問題解決のためには、問題への関心と理解を深め、直接、間接を問わず犯罪行為に加担しないことが重要だ。

差別・人権問題の解決を目指す『SDGs・ダイバーシティの推進』

差別 問題 1.jpg

差別をなくすために、日本をはじめ、各国の政府や企業でさまざまな取り組みが実施されている。近年の代表的な取り組みが、「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の目標達成」と「ダイバーシティの推進」だ。

SDGsの達成

SDGsは、以前に採択された国際目標の後継として2015年の国連サミットで採択された。持続可能で、よりよい社会を目指すための国際指標で、全部で17の目標が設定されている。SDGsの概要はこちらの記事で詳細を紹介している。

【SDGsとは(持続可能な開発目標)】17の目標と世界の取り組みを紹介

17の目標のうち、差別や人権問題に関連するのが、目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」や、目標10の「人や国の不平等をなくそう」だ。SDGsの達成には、ひとり一人の意識と行動が求められる。

目標5と目標10の概要を紹介している記事はこちら。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」国内外の取り組み事例とは

【持続可能な開発目標】SDGs10「人や国の不平等をなくそう」とは

ダイバーシティの推進

ダイバーシティは、多様性という意味で、現在では主にビジネスの世界で広く利用されている。経済産業省が企業に向けて推奨しているのが、ダイバーシティ経営だ。

ダイバーシティ経営とは、年齢、性別、人種、障害の有無、性的指向、価値観、働き方、経験などにとらわれず、多様な人材を活かして、それぞれ能力が最大限に発揮できるような機会を提供する経営をいう。

ダイバーシティ経営のメリットは、個々人が特性を活かせることで、企業側は多様な人材によるイノベーション、価値創造、競争力の強化を期待できる。

【企業の取り組み】差別を解消するための取り組み事例

差別 問題 3.jpg

差別を解消するために日本企業はどのような取り組みを行っているのか、協和キリン株式会社を例に紹介しよう。

人権への配慮

協和キリン株式会社と属するキリングループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠する人権方針を策定している。そして人権方針の精神を社内で定着させるために、各種研修や施策を実施している。

また、差別問題でも取り上げたように、ハラスメントは重要な人権課題のひとつだ。ハラスメントをなくすために、同社では啓発研修や相談窓口、内部通報制度を設置するなど、環境整備と風土改善にも努めている。

Diversity, Equity and Inclusionの推進

協和キリン株式会社では、人事部に「多様性・健康・組織開発グループ」を設置して、社員一人ひとりの能力を最大限引き出し、変革に挑み新しい価値を創造し続ける人と組織をつくるため、制度の充実や環境整備を推進している。

実施されているのは、女性の活躍を進めるための女性社員のエンパワーメント推進、介護や育児と仕事との両立支援、グループ全体での障害者雇用の拡大、国籍などにとらわれない公正な採用、などだ。

2021年12月には「私たちのDE&I宣言」も策定し、人権や多様な人材の活躍に配慮してプロアクティブに取り組みを行っている。

「協和キリンのCSV経営についてはこちら」

まとめ

差別問題は、世界的な課題であるのはもちろん、日本国内でもさまざまな差別が存在し、大きな人権課題となっている。差別をなくすためにも、問題に関心をもち、正しい認識をもつこと、政府や企業の取り組みについて関心を寄せることが大切だ。