膨大なカーボンフットプリントを減らさなければならない状況に追い込まれている自動車業界では、古くなった電気自動車のバッテリーからエンジンやバックミラーまで、さまざまな部品をリサイクルする努力が活発になっている。

各国の自動車メーカーは、古い部品を回収する施設に資金を投入している。一方、業界では未来を担う電気自動車に使われている大量のバッテリーのリサイクルにも目を向けている。

電気自動車は、化石燃料を使う従来の車よりも環境汚染が少ない。だが、バッテリーに必要な原料はアフリカの鉱山で採掘されており、そうした鉱山は、環境汚染や児童労働についてたびたび非難を受けている。

「これらの原料に対する需要が高まるにつれ、おそらくこうした(経済的に貧しい)地域の苦況はさらに悪化するだろう。そして、社会的にも環境的にも持続可能な再生可能エネルギーシステムを構築するという目標を危うくする可能性がある」。シドニー工科大学の持続可能な未来研究所(Institute for Sustainable Futures)はそう分析している。

自動車業界が電気自動車への移行をどのように進めるかは、2021年10月31日から2週間にわたり英国主催で行われたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で注目の議題となった。

世界経済フォーラムによると、自動車業界はEU全体より多くの温室効果ガスを排出しており、その20%が製造によるものだという。

バッテリーは電気自動車の価格の半分を占めることもあり、寿命は8〜15年だ。

バッテリーをリサイクルすれば、その効果はかなり大きいだろう。

シドニー工科大学の持続可能な未来研究所(Institute for Sustainable Futures)は、リサイクルにより、2040年にはリチウムの25%、コバルトの35%、ニッケルと銅の55%の需要を削減できる可能性がある、とレポートで報告している。

しかし、進行中の新たな採掘プロジェクトが、「土壌・大気・水の汚染、人権侵害、危険な労働環境など、地元の環境や地域社会に悪影響を与える可能性がある」という。

バッテリーに使われている金属は、技術的には90%以上回収可能だが、そのための取り組みは、「リサイクル原料の利用を促進する強力な経済的インセンティブや政策がないために、限られている」と報告書は述べている。

欧州委員会は、2030年以降、電気自動車のバッテリーに使われるコバルトの12%、リチウムの4%、ニッケルの4%を、リサイクル材料にするよう求めたい考えだ。

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――進むリサイクル計画――

この分野で一歩先を行くのは中国だと専門家は言う。バッテリー・メーカーの寧徳時代新能源科技(CATL)は、先ごろ、320億元(約5700億円)をかけて湖北省にリサイクル工場を建設すると発表した。

米電気自動車業界トップ、テスラの創業者の一人が率いるレッドウッド・マテリアルズ(Redwood Materials)は、リサイクル施設を拡大するため、7月に5億米ドル(約570億円)の資金を調達した。

フォルクスワーゲンとBMWが出資するスウェーデンのスタートアップ企業ノースボルト(NorthVolt)は、2022年に、年間2万5000トンのバッテリーをリサイクル可能な工場を立ち上げる計画だ。

同社は、2030年までに、バッテリー部品の50%をリサイクル材料にすると約束している。

「リボルト(Revolt)」と名付けられたノースボルトのリサイクル・プロジェクトは、欧州で最も環境に配慮したバッテリー・メーカーになるという同社の理念を体現する取り組みの一つとして進められている。

ノースボルトの最高環境責任者エマ・ネレンハイムは、あらゆる市場予測がバッテリー製造の伸びを低く見積もっていると警告する。

「製造は伸び続けています」とネレンハイムは言う。

「欧州では体制が間に合わないことのほうが心配です。関心の高さはうかがえますが、現実との間にギャップがあるように思います。体制を整えなければなりません。私たちは、今すぐ行動しなければならないのです」と彼女は言う。

フランスの原子力大手オラノ(Orano)は、ウラン抽出に使われる技術をバッテリーのリサイクルに応用するプロジェクトに着手している。

フランスの廃棄物処理会社ヴェオリア(Veolia)は、フランス東部にある工場で、スマートフォンとパソコンのバッテリーをリサイクルする試験プロジェクトを進めている。

その工場では、バッテリーのセルを覆うプラスチックとアルミ箔を取り除き、さらにセルを細かく粉砕して、さまざまな金属を取り出している。

――ダッシュボードもリサイクル――

リサイクルされているのは、電気自動車のバッテリーだけではない。自動車業界は、将来的にカーボンフットプリントがネットゼロの「サーキュラー・カー」の製造を目指しているからだ。

フランスでは、自動車メーカーのルノーと公益事業グループのスエズ(Suez)による合弁会社が、年間5000台の自動車を解体して部品を回収している。

この合弁会社インドラ(Indra)は、解体・回収作業をベルギー、ポルトガル、スイスにも展開した。

作業員は、燃料タンクを空にし、エンジン、タイヤ、ダッシュボード、バックミラーなど車の重さの約35%に当たるパーツを、2時間かけずに取り外す。

回収され、修理業者や個人消費者に販売されるパーツは、1台当たり最大400ユーロ(約5万2000円)になる。残りは圧縮、溶解、焼却されるか、ほかの業種向けにリサイクルされる。

ジャガー・ランドローバーは、解体した車からアルミニウムをリサイクルするプロジェクトを進めている。同社は、これにより製造過程のCO2排出量を26%削減できるとしている。

この記事は、Digital JournalよりAFPで執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

 

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