専門家によると、リジェネラティブ農業の考え方を家庭菜園に取り入れると、ガーデニングの楽しみが増すだけでなく、より健康的で栄養豊富な作物を育てられるという。

私たちは、食べ物のサステナビリティについて多くのことを耳にする。どのように育てられ、梱包されているか、堆肥化できるか、公正な労働環境の下で作られているか――私たちが食べるものを「サステナブル」にする要素はたくさんある。これ以上話を複雑にするつもりはないが、実は「サステナブル」を上回る価値を持つ新しい(けれど昔からの)栽培方法が存在する。それこそ、私たちが目指す「環境再生型の(リジェネラティブな)」食料システムだ。

リジェネラティブ農業とは、簡単に言うと、私たちの大切な土地や土壌を守るだけでなく、土壌の質を高め、それにより炭素隔離を促す農法だ。リジェネラティブ農業はとても重要なテーマであり、すぐに廃れてしまうものではなさそうだ。食品大手の米ゼネラル・ミルズのような企業は、今後10年間に、100万エーカー(約40万ヘクタール)の農地でリジェネラティブ農業を実践すると約束している。また『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしの作り方』などの映画は、リジェネラティブ農業という考え方が主流になる後押しになっている。

※炭素隔離とは、二酸化炭素の大気中への排出を抑制する手段のこと

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リジェネラティブ農業の基本的な考え方を知り、それを利用した食料生産を行う農家や牧場をどうやって支援するか学ぶのは素晴らしいことだ。ただ、その一方で、私たちの多くがすでに庭で育てている農作物についてはどうすべきだろう。家庭菜園にリジェネラティブ農業の考え方を適用する方法はあるのだろうか。答えを求めて、米コロラド州ボルダーでリジェネラティブ農場マッコーリー・ファミリー・ファーム(McCauley Family Farm)を営み、フォーマザー・フーズ(Foremother Foods)社も設立したマーカス・マッコーリーに話を聞いた。

リジェネラティブ農業とは?

リジェネラティブ農業の根本には、土壌は自ら養分を育み、自身が癒える過程で環境に有益な働きをする一つの生態系であるという考え方がある。マッコーリーによると、まさに次の二つの質問に行きつくという。「どうすれば、元より良い状態にして残せるか」と「この土地は、どうなりたいのか」だ。

「環境再生の中核をなすのは、自然のつながりへの理解です」とマッコーリーは説明する。「私たちは、より大きな生態系に影響を与えていて、私たちもその一部だと理解することです。たとえば、水の循環は土壌につながりますし、食物網は炭素の循環につながります。私たちは、自分たちも生態系に欠かせない一部であることを心に刻みながら、そうした循環を尊重し、つながりを取り戻しているのです」

庭でリジェネラティブ農業を実践するには

「庭で野菜作りを始めるだけで、十分リジェネラティブです。なぜかというと、できる限り身近なところで資源を調達しているからです。自然環境は、そのように機能しているのです」とマッコーリーは言う。自宅の庭で育てたキュウリを食べることほど身近なことはない。それは身の回りの生態系にも地球の生態系にも重大な影響を与えることなのだ。

はじめの一歩を踏み出したら、次は家庭菜園のデザインだ。リジェネラティブ農業の考え方に沿って環境に大きな効果をもたらすために、できることを実践してみよう。リジェネラティブ農業の考え方を庭に取り入れる際の重要なヒントを、マッコーリーが教えてくれた。

具体的な4つの方法

システムとして考える

「私の家の庭では、どうしたら(水、土壌、動物や鳥、人間などの)システムを構築し、それらを自分の周りのもっと大きなシステムにつなげられるか考えながら、工夫を重ねています」とマッコーリーは言う。たとえば、雨水をためておいて水やりに利用するのも一案だ。そうすれば、水の流出も抑えられるし、雨の少ない時期の水やりで使う水を節約できる。

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コンポストを始める

リジェネラティブ農業の考え方を取り入れるもう一つの方法として、コンポストの利用がある。リジェネラティブ農業とは、土壌を健康にすることにほかならない。コンポストを土壌に混ぜるのは、栄養分を追加し、土壌を肥沃にするために極めて有効な方法の一つだ。マッコーリーが提案するのは、もう一歩踏み込んで、コンポストを店で買うのではなく、台所の生ごみから自分で作ることだ。豊かな土壌にするための資源を台所で調達し、まさに自宅で資源が循環する仕組みを整える。それが無理なら、地元の園芸店で堆肥化された肥料を買うのも一案だ。

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耕さないガーデニングを取り入れる

聞いたことがあるかもしれないが、リジェネラティブ農業の考え方に「不耕起栽培」がある。大まかな考え方は、土壌を耕したり掘り起こしたりすると、「根穴構造(土中に残った根が分解されて、空気や水を通す穴ができた状態)」が壊れ、時間をかけて育まれた、ミミズやバクテリアなどからなる豊かな土壌環境が破壊されるというものだ。耕さないことにより、自然のプロセスをそのまま残し、より健康な土壌(と作物)を得られる。この考え方を家庭菜園にも取り入れることができる。自宅の土壌の生命力を高めつつ、毎年畑を耕すという骨の折れる作業をせずにすむわけだ。

耕さないガーデニングの多くは、作物を植えたい場所を有機物で分厚く覆う手法に頼っている。そうして雑草が育たないようにし、その下の土壌に栄養を与える。そうすると、より健康で作物が良く育つ土壌になる。土壌は年々良くなり、作業は減っていく。

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他の影響にも気を配る

最後にマッコーリーは、庭の菜園以外の場所を軽視しないようアドバイスしている。食物が育っている場所ばかりに目を向けてしまうかもしれないが、庭の他の場所で使っている肥料や農薬が流出すれば、付近の生態系や流れていく先の生態系に大きな影響を与える。自分の菜園で環境に良いことをしていても、それを上回る悪影響を与えてしまうかもしれないのだ。

この記事は、Real Simpleよりローラ・フィッシャーが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。