最近、さまざまな場所で「SDGs」(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )という言葉を見聞きする機会が増えてきている。SDGsに関連する取り組みについて発信する企業も多く見られるようになってきた。
では、SDGsとは具体的に何のことなのか。この記事では、SDGsの概要と、国や企業の取り組みについて紹介する。
SDGs|持続可能な開発目標とは
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されている、国際目標のことである。2016年から2030年の国際目標として採択された。
SDGsでは、「誰ひとり取り残さない」という、公平性のアプローチを原則として掲げている。国際的な問題解決を図るために、SDGsでは17のゴールと169のターゲットが設定されている。
SDGsが採択される15年前には、MDGs(エムディージーズ:ミレニアム開発目標)と呼ばれる国際目標があった。SDGsと同様、MDGsも国連で採択された。
このMDGsで設定されていたゴールは8つで、2015年の達成期限までにある程度の成果を収めることができた。しかし、ゴールとして定められた数値は『平均値』であり、その陰で取り残される子どもがいるなど、8つのゴールには不十分な部分も見られた。
SDGsはMDGsの後継として、「MDGsで達成できなかった課題」「MDGsに含まれていなかった課題(MDGsでカバーできていなかった課題)」「新たに浮上した課題」という、3つの課題が包括的に含まれている。途上国だけでなく、先進国も巻き込んだ普遍的な目標だ。
SDGsの達成に向けた17の目標
前述したように、SDGsには17のゴールがある。具体的にどのような目標が設定されているのか、17の目標を簡単に紹介する。
目標1「貧困をなくそう」
SDGsの1つ目のゴールは、あらゆる場所での、あらゆる形態の貧困を終わらせることである。
目標1では、「極度の貧困と定義される『1日1.25ドル未満で暮らす人々』をゼロにする」をはじめ、「最低限の社会保障や対策を行う」「極端な気象現象のリスクが高い貧困層を災害や経済リスクなどから保護する」などが、ターゲットとして定められている。
目標1の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「6人に1人が貧困層。SDGs1『貧困をなくそう』の概要を解説!」
目標2「飢餓をゼロに」
SDGsの2つ目のゴールは、飢餓をなくし、栄養改善や持続可能な農業を進めることである。
目標2では、「脆弱な立場にある人が、一年中栄養のある食料を安全に得られるようにする」「あらゆる栄養不良を解消し、妊婦や高齢者などに栄養が行き渡るようにする」「小規模な食料生産者の所得や生産性を倍増させる」などが、ターゲットとして定められている。
目標2の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs2『飢餓をゼロに』とは!企業の取り組み内容。そして私たちができること」
目標3「すべての人に健康と福祉を」
SDGsの3つ目のゴールは、すべての人の健康的生活を確保して福祉を促進することである。
目標3では、「世界の妊産婦や新生児の死亡率を削減する」「エイズやマラリアなどの伝染病を根絶して肝炎などの感染症対策を行う」「道路交通事故の死傷者を減らす」「性と生殖の保険サービスをあらゆる人が利用できるようにする」などが、ターゲットとして定められている。
目標3の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGsの目標3『すべての人に健康と福祉を』はどのような取り組みか」
目標4「質の高い教育をみんなに」
SDGsの4つ目のゴールは、公正で質の高い教育をすべての人が受けられるようにするとともに、生涯学習の機会を設けることである。
目標4では、「すべての子どもが無償かつ公正に、質の高い初等教育や中等教育を受けられるようにする」「技術的、または職業的スキルを備えた成人の割合を大幅に増やす」「ジェンダーや障害に配慮した教育施設を構築して効果的な学習環境を提供する」などが、ターゲットとして定められている。
目標4の詳しい内容については以下のページで解説している。
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
SDGsの5つ目のゴールは、ジェンダー平等の達成と、女性や女児の能力強化を図ることである。
目標5では、「すべての女性や女児に対するあらゆる形態の差別や暴力を排除する」「強制結婚や女性器切除などの有害な慣行をなくす」「ジェンダー平等と女性や女児の能力強化のために適正な政策や法規を導入・強化する」などが、ターゲットとして定められている。
目標5の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs目標5『ジェンダー平等を実現しよう』国内外の取り組み事例とは」
目標6「安全な水とトイレを世界中に」
SDGsの6つ目のゴールは、すべての人が水を衛生的に利用できるようにするとともに、水を持続可能に管理することである。
目標6では、「すべての人が安全かつ安価な飲料水にアクセスできるようにする」「適切な下水施設や衛生施設を整え、野外での排泄をなくす」「汚染や有害物質の放出を抑えて水の再利用を世界的に可能にし、水質を改善する」などが、ターゲットとして定められている。
目標6の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGsの目標6『安全な水とトイレをみんなに』の取り組み内容」
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
SDGsの7つ目のゴールは、すべての人が信頼できる持続可能なエネルギーに安価にアクセスできるようにすることである。
目標7では、「現代的エネルギーサービスへのアクセスを普遍的にする」「世界の再生可能エネルギーの割合を大きく拡大させる」「再生可能エネルギーやクリーンエネルギーへの技術投資や国際協力を促進させる」などが、ターゲットとして定められている。
目標7の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs7『エネルギーをみんなにそしてクリーンに』とは!取り組み・私たちにできること」
目標8「働きがいも経済成長も」
SDGsの8つ目のゴールは、持続可能な経済成長と人間らしい働きがいのある雇用(ディーセント・ワーク)を促進することである。
目標8では、「イノベーションを支援し、中小零細企業の設立や成長を奨励する」「資源効率の改善により、経済成長と環境悪化を切り離す」「強制労働やあらゆる形態の児童労働をなくす」「すべての労働者の権利を守り、安心安全な労働環境を提供する」などが、ターゲットとして定められている。
目標8の詳しい内容については以下のページで解説している。
目標9「産業と技術革新基礎をつくろう」
SDGsの9つ目のゴールは、強靭なインフラの構築や持続可能な産業化とイノベーションを促進することである。
目標9では、「小規模企業を中心とした金融サービスなどのへのアクセス拡大」「環境に配慮した技術やインフラ改良による持続可能性の向上」「インターネットアクセスの普遍的かつ安価な提供」「途上国の科学研究や技術能力の向上」などが、ターゲットとして定められている。
目標9の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs9『産業と技術革新の基盤をつくろう』の目的と背景、取り組み事例」
目標10「人や国の不平等をなくそう」
SDGsの10番目のゴールは、国内または各国間の不平等をなくすことである。
目標10では、「人種や宗教、経済的地位などに関わりなく、すべての人が能力強化や政治的参加を図れるようにする」「安全で秩序のとれた移住や流動性を促す」「国際的な協力において途上国の参加や発言力を拡大される」などが、ターゲットとして定められている。
目標10の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGsの目標10『国内および国家間の格差を是正する』の取り組み内容」
目標11「住み続けられるまちづくりを」
SDGsの11番目のゴールは、持続可能な都市や居住を実現することである。
目標11では、「スラムの改善と、安全かつ安価な住宅やサービスの確保」「持続可能な交通アクセスの確保」「文化遺産や自然遺産の保護」「貧困層などの保護に焦点を当てた、災害による被害の大幅な削減」「公共スペースへの普遍的アクセス」などが、ターゲットとして定められている。
目標11の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「【持続可能な開発目標】SDGs11『住み続けられるまちづくりを』とは」
目標12「つくる責任つかう責任」
SDGsの12番目のゴールは、持続可能な生産および消費形態を確保することである。
目標12では、「天然資源の持続可能な管理や、効率の良い利用の達成」「生産やサプライチェーンによる食品ロスの減少」「人や環境に有害な廃棄物や化学物質の放出の削減」「あらゆる場所で人々が自然と調和したライフスタイルを意識する」などが、ターゲットとして定められている。
目標12の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGsの目標12『つくる責任 つかう責任』の取り組み内容」
目標13「気候変動に具体的対策を」
SDGsの13番目のゴールは、気候変動の影響を軽減する緊急対策を行うことである。
目標13では、「すべての国における、自然災害への適応力の強化」「気候変動対策の政策への盛り込み」「気候変動に関する教育や啓発」などが、ターゲットとして定められている。
目標13に関連して、気候変動の世界的対応について、交渉や対話の場として設けられているのが国連気候変動枠組条約(UNFCCC)だ。
目標13の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「【気候変動に具体的な対策を】SDGs13の目標を徹底解説」
目標14「海の豊かさを守ろう」
SDGsの14番目のゴールは、海洋や海洋資源を守り持続可能な形で利用することである。
目標14では、「あらゆる海洋汚染を防止し大幅に削減する」「海洋や沿岸の生態系の回復を図る」「漁獲の効果的な規制により過剰な漁業を終わらせる」「国際法により海洋や海洋資源の保全や持続可能性を強化する」などが、ターゲットとして定められている。
目標14の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs14【海の豊かさを守ろう】の目標を詳しく解説」
目標15「陸の豊かさも守ろう」
SDGsの15番目のゴールは、陸の生態系の保護や回復、持続可能な森林経営、砂漠化や土地の劣化への対処や生物多様性を守ることである。
目標15では、「陸や淡水の生態系の保全や回復」「森林減少の抑制と再植林の大幅な増加」「砂漠化などで劣化した土地の回復」「絶滅危惧種の保護」「動植物の密猟や違法取引の撲滅」「外来種の侵入防止と、外来種による影響の減少」などが、ターゲットとして定められている。
目標15の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「【陸の豊かさも守ろう】SDGsの目標15について解説」
目標16「平和と公正をすべての人に」
SDGsの16番目のゴールは、すべての人の司法へのアクセスと平和な社会の促進、効果的で説明責任のある制度の構築を図ることである。
目標16では、「あらゆる場所や形態での暴力の減少」「子どもに対する虐待や搾取などの撲滅」「国際的レベルでの司法への平等なアクセス」「違法な資金や武器取引の減少」「汚職や賄賂の減少」「すべての人が法的身分証明を得られるようにする」などが、ターゲットとして定められている。
目標16の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGs16『平和と公正をすべての人に』とは?現状と取り組み事例をわかりやすく解説」
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
SDGsの17番目のゴールは、グローバル・パートナーシップを活性化させることである。
目標17では、「資金、技術、能力構築、貿易、体制面でのグローバル・パートナーシップを強化する」「知識や技術を動員したマルチステークホルダー・パートナーシップによる持続可能な開発の強化」「途上国のデータ取得や統計能力の向上」などが、ターゲットとして定められている。
目標17の詳しい内容については以下のページで解説している。
>>「SDGsの目標17『パートナーシップで目標を達成しよう』とは?」
SDGsの達成に向けた世界の取り組み
国際目標であるSDGsの達成に向けて、世界中でさまざまな取り組みが行われている。この項目では、スウェーデン、デンマーク、日本の取り組みについて紹介する。
スウェーデン
スウェーデンは、リサイクル率の高い国として知られている。これは、廃棄物管理システムの規制と、生産者責任を規定した法律がうまく機能しているためだ。
生産者責任のないものについては、地方自治体が収集と処理の責任を負うとされており、欧州連合(EU)の基準に合わせた廃棄物の抑制、再利用、リサイクルといった廃棄物の階層が定められている。
スウェーデンの取り組みとして特に注目されているのが、他国からの廃棄物の輸入だ。年間をとおして寒くて暗いスウェーデンでは、高機能で効率的な暖房や電気システムを常に稼働させなくてはならない。
廃棄物を焼却することで、電気の生成を行い、エネルギーを確保するのが輸入の最大の目的だ。
廃棄物を燃料として使うことは、化石燃料の利用を抑えられるだけでなく、埋め立て地で処分しなければならない廃棄物を最小限に抑えられるメリットがある。特に、企業による取り組みが活発だ。
デンマーク
デンマークでは、「UN17 Village」と呼ばれる取り組みが行われている。UN17 Villageは、SDGsの17の目標すべてを達成できるようなビレッジを建設するというプロジェクトだ。
ビレッジは5つのブロックで構成されており、さまざまなタイプの住宅には800人が暮らせるようになっている。コミュニティの再解釈、自然との統合が行われたビレッジは25年の長期にわたり、共同で開発が行われてきた。
また、デンマークは、世界でもオーガニック食材の利用率が高い国だ。サステナブルフードとして注目されるオーガニック食材は、デンマーク独自の管理システムによる品質の高さや安全性から、デンマーク国外でも人気を博し、輸出が伸びている。
日本
日本では、SDGsの達成に向けて、政府の具体的な取り組みの重点事項を盛り込んだ「SDGsアクションプラン」が定められている。2021年のSDGsアクションプランとして定められた重点事項は、以下の4つだ。
1.感染症対策と次なる危機の備え
治療やワクチン、診断の公平なアクセス確保、次なる危機に備えた保健システムの構築。
2.復興に向けたビジネスとイノベーションの成長戦略
デジタルトランスフォーメーションの推進による新たな日常の推進と定着、ESG投資の推進による企業経営でのSDGsの取り込み推進、ワークライフバランスの実現、バイオ戦略やスマート農林水産行推進など。
3.地方創生、経済と環境の好循環の創出
カーボンニュートラルへの挑戦、防災や減災、質の高いインフラの推進、海洋プラスチックごみ対策と海洋保全、SDGsを原動力としたSDGs未来都市などの地方創生。
4.可能性の発揮と絆の強化による行動の加速
女性参画やダイバーシティ、バリアフリーの推進、すべての人が能力を発揮できる社会、子どもの貧困対策、教育のデジタルリモート化、次世代へのSDGs教育、スポーツSDGsの推進。
日本企業の取り組み事例
SDGs達成に向けた取り組みは、国単位の取り組みだけでなく、企業単位でも行われている。実際どのような取り組みが行われているのか、日本企業の取り組み事例を紹介する。
野村ホールディングス株式会社
野村ホールディングス株式会社では、金融資本市場をとおした社会課題の解決に向けた挑戦を行っている。
企業と投資家をつなぐリスクマネーの循環による社会課題の解決を目指す活動のひとつとして、同社が行っている取り組みのひとつが、金融リテラシーの向上だ。
個々人が金融や経済に関する正しい知識を身につけられるように、小中学生、大学生、社会人を対象とした教育や啓発活動を進めてきた。これまで、全国の都道府県において、累計76.7万人に金融リテラシーの向上を目的とした教育を実施している。
この取り組みにおいて、同社が重視しているのは、均等な機会の提供だ。次世代を担う子どもたちの金融リテラシーを一律に向上させるため、教材を無償で提供し、誰もが均等に学べるようにしている。
大和ハウス工業株式会社
SDGsの達成においては、脱炭素社会に向けた取り組みも重視されている。大和ハウス工業株式会社が注目しているのは、脱炭素社会を実現するための「エネルギー“ゼロ”の住宅・建築・街づくり」だ。
具体的には、省エネやスマート化推進による建物の建設、建物一棟ではなく街全体の広範囲でのエネルギーゼロ化の推進、電力融通によるエネルギー自給、太陽光発電所のシェアなどによる、快適でエネルギー効率の良い街づくりである。
協和キリン株式会社
協和キリン株式会社では、社会課題への取り組みによって企業価値を向上させるCSV経営を実践している。
SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも経済成長も」に関連することとして、重点課題に設定しているのが従業員の安全や健康増進だ。
具体的には、女性の活躍推進、ワークライフバランスの確保、スマートワーク推進プランなどを積極的に取り組んでいる。
さらに、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標15「陸の豊かさも守ろう」に関連する重点課題として、温暖化防止と水資源の保護を設定している。
このように、協和キリンでは水資源保護のための環境保全、CO2排出量削減に向けた取り組みを行っている。
協和キリンが行っているCSV経営についてはこちら
まとめ
今回は、国際的な目標として設定されている、持続可能な開発目標「SDGs」について、基本的な概要を説明した。本記事で取り上げた国や企業をはじめ、近年では世界中でSDGsの達成に向けた取り組みが行われている。
SDGsの達成は、私たちひとり一人の生活の維持にも大きく関係している。まずはSDGsに対して興味を持ち、さまざまな取り組みについて知ることから始めてみて欲しい。