要点:

  • 米スナック食品・飲料大手ペプシコは声明の中で、2030年までに同社のリジェネラティブ(環境再生型)農業プログラムを約2万8000平方キロメートルに拡大すると発表した。同社が商品に使用するジャガイモやオーツ麦などの作物を栽培する、ほぼすべての土地に匹敵する広さだ。この取り組みにより、今後10年間で少なくとも実質300万トンの温室効果ガス排出量を減らせると推定される。
  • スナック菓子のドリトス、サンチップス、レイズなどを製造するペプシコ傘下のフリトレー事業部は、年内にリジェネラティブ農業を米国内の2000平方キロメートル以上の農地に広げるとしている。
  • リジェネラティブ農業は、大手消費財メーカーが環境への影響を減らすために利用しているさまざまな手法の1つで、カバークロップ(被覆作物)を使用したり、毎年栽培する作物を替える輪作を行ったりする。

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詳細:

ネスレダノンコカコーラアンハイザー・ブッシュなどの食品・飲料会社は、自社が環境に及ぼす影響を減らすため多くの試みをしている。具体的には、再生可能エネルギーの導入やプラスチックの使用削減、リサイクル素材の積極採用、水や土地などの利用規模の縮小などに取り組んでいる。

リジェネラティブ農業には、個々の農家により持続可能な手法への切り替えを促すという直接的な投資効果がある。ペプシコなどの企業にとっては、環境に配慮した商品に対する消費者需要の増加に合わせて、リジェネラティブ農業で生産される原料の比率を高められるというメリットがある。その結果、収益を増やせるだけでなく、ドル箱商品の製造に欠かせない作物そのものの生産支援にもつながる。

「世界の食料システムが直面する喫緊の課題に立ち向おうと思うなら、農業の問題を避けて通ることはできません。農業は何十億もの人々の食物を生むだけでなく、気候変動と不平等の問題に取り組むための重要な手段の1つでもあるからです」とペプシコのラモン・ラグアルタ最高経営責任者(CEO)は声明の中で語っている。「強じんな食料システムがなければ、当社のビジネスは成り立ちません。それゆえに有意義な変化を促す機会と責任が当社にはあると考えます」

リジェネラティブ農業に乗り出している企業は、ペプシコだけではない。

2019年、ゼネラルミルズはリジェネラティブ農業に対するコミットメントを表明し、2030年までにその手法を約4000平方キロメートルの農地で採用すると約束した。シリアルを製造する同社は、オーツ麦や小麦、トウモロコシ、酪農飼料、テンサイなどの原料の生産に持続可能性の高いリジェネラティブ農法をさらに導入するため、「主要な栽培地」の農家や卸売業者、農業普及員と提携するという。また今年2月には、同社のミートバーブランド「EPIC」から、この農法により生産された牛肉を使った商品が発売された。

米食肉大手ホーメルフーズの「アップルゲート」ブランドは、2019年にリジェネラティブ農法を実践する小規模農場で生産されたポークソーセージの商品を発売した。また3年前には、ダノンが600万ドルをリジェネラティブ農業と土壌の健康に関する研究に投資している。

2018年に米調査会社ニールセンが行った調査では、消費者の半数近くが、環境基準を満たすために購入商品を変える可能性があることが分かった。支払う金額が増えても、多くの場合、消費者は商品を切り替えると予想されている。こうした消費者の考えを反映する商品が、当然ながら食料品店の棚に増えている。同じく米調査会社のIRIとニューヨーク大学スターン経営大学院センター・フォー・サステナブル・ビジネスによる昨年の報告によれば、2019年に消費財市場の商品のうちサステナビリティ市場の商品が占める割合は16.1%に過ぎなかったが、2015年から2019年にかけての消費財市場全体の成長の54.7%はサステナビリティ関連商品によるものだった。

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ペプシコに関しては、2030年までに同社のバリューチェーン全体で温室効果ガスの絶対排出量を40%以上削減することを目標に掲げ、2040年までに排出量ネットゼロの達成を約束している。

ペプシコはまた、パッケージの改善にも取り組み、最善の栽培方法が実践されるよう農家と協力し、完全に持続可能な方法で調達できる作物を購入している。同社は今週の発表で、直接調達するジャガイモやオレンジ、トウモロコシ、オーツ麦から対象を広げて、すべての主要な原料を持続可能な方法で調達することを約束すると語った。同社は現在60カ国から作物を調達している。

新型コロナウイルスの世界的流行が続く中、「食品の生産方法」の重要性が高まっており、消費者が高い価値を見いだす商品の特質となりつつある。食品会社には、環境への影響を少なくし、さらにその対応策を具体的な形で示さなければならないというプレッシャーが重くのしかかるだろう。大企業にとって、ビジネス全体の持続可能性に関する目標を定めて報告することは、もはや必須条件となっている。

この記事は、Food Diveよりクリストファー・ドアリングが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。