ファーマーズマーケット※でトウモロコシを買ったり、農場の直売所で牛乳を買ったりすると、実に素晴らしいことがある。自分が食べるものが、どのように作られたか分かるのだ。
※ファーマーズマーケットとは、複数の生産者が自らの農産物や加工品を持ち寄って対面で販売する「市」のこと
品質はいいし便利なのだから、スーパーで生鮮食品を買うことには何の問題もない。冷蔵庫やパントリーに食品を切らさないようにし、家族のために献立を考えて食事を用意するのは、一日がかりの大仕事だ。でも機会があればちょっと時間を割いて、ファーマーズマーケットでトウモロコシを買ったり、農場の直売所で牛乳を買ったりすると、実に素晴らしいことがある。作り手と話ができるのだ。自分と家族が食べる物がどうやって作られたか。それが見える窓が、にわかに開くわけだ。
ニューヨーク市の真北にある「ホーソーン・ヴァレー農場」は、野菜を育て、パンやジャム、ヨーグルト、牛乳、チーズなどを製造している。ここで取り入れられているバイオダイナミック農法は、「有機農法を超えた」厳格な環境への配慮で有名だ。共同経営者スペンサー・フェニマンは、牧草が生い茂るこの農場のことを「光合成工場」と呼ぶ。農場では、被覆作物(風雨による畑の浸食を防ぐために植える作物)や堆肥を使い、「土壌の有機物を増やす」努力をしていると彼は言う。
このような配慮の行き届いた農法は、環境保護に役立っている。米環境保護局(EPA)が指摘するように、米国の温室効果ガス排出量の10%が農業によるものだと考えると、素晴らしいことだ。いくつかの農法、とりわけ大規模農家が採用する農法は、気候への影響を軽視している。たとえば単作(1種類の作物だけを栽培すること)や化学肥料の使用、あるいは狭い場所に家畜を閉じ込める密集飼育などだ。一方、より小規模な農場は、農業が環境におよぼす影響にもっと深く配慮していることが多い。
自分が食べるものがどこから来るのか、どのように作られるのかをもっと知りたい人は、お気に入りの食品ブランドについて調べ、商品パッケージのラベルを読むことから始めるのがいいだろう。そして、より小規模な生産者から買うなら、ファーマーズマーケットや農場の直売所などを利用すると、作り手のことが分かる。作り手に会うと、いろいろ質問して、リンゴは農薬を使わずに育てているとか、乳牛は放牧されているといったことを知り、学ぶことができる。
地元のものを食べることは大事だが、その理由は意外
よく誤解されているのが、地元のものを食べると、フードマイレージを減らし、炭素消費量「カーボンフットプリント(フードプリント)」を抑えるのに役立つという考え方だ。フードマイレージとは、食料の生産地から消費地までの移動距離をさす。数千マイルになることも多い。南米で栽培されたブルーベリーや、アラスカでとれたサーモンを欧州に輸入する場合を考えれば分かる。食料を運搬する際には、化石燃料が使われる。多くの人は、地元産のものを食べれば、燃料を燃やすことによって排出される二酸化炭素が減り、カーボンフットプリントも減らせると信じている。
それは事実かもしれないが、人々が思っているほどには減らない。それはなぜか。食料のカーボンフットプリントの83%が、生産によるものだからだ。ほとんどの食料において、輸送による二酸化炭素排出量は10%しかない。「Our World in Data」の報告書には、次のように書かれている。「自分が食べる物のカーボンフットプリントを減らしたいなら、気を配るべきは、何を食べるかであって、その食料が地元産かどうかではない。(中略)何を食べるかは、それがどこから運ばれてきたかよりもずっと重要だ」
地元の農家から買えば、情報が手に入りやすい。「消費者として、その食料について、もっと多くを知ることができます」。ファーマーズマーケット連合(Farmers Market Coalition)で広報を担当するハナ・フラーは言う。「ファーマーズマーケットでおしゃべりすると、生産者がどんなことをしているか、どうやってサステナブルな仕組みを作っているか、分かるかもしれませんよ」
農家から直接買えば、どのようにして気候への影響を抑え、土地を再生しているか質問できるし、気候に配慮した方法で生産している農家を支援できる。環境保護団体レア(Rare)の報告書は、「個人や家庭、地域社会レベルでの変化は、大多数の人々が認識しているよりもはるかに重要である」ことを認めている。
地元の生産者を知るための4つの方法
- ファーマーズマーケット
ファーマーズマーケットの良いところは、1カ所でさまざまな生産者から購入でき、生産者にも会えることだ。何を買うか、夕飯は何にするかしっかり決めないまま出かけても、帰るときには、生みたての卵や鮮やかな色の紫キャベツを手に入れ、夕飯の献立まで決まっている。何より素晴らしいのは、生産者が提供するものが何であれ、おそらくそれは地元で栽培された旬のもので、サステナブルに作られたものだろうということだ。確信がもてない時は、聞いてみよう。
- 農場の直売所
生産者があなたのところへ出向いてくる代わりに、あなたが生産者のところへ行ってもいい。農場の直売所は、その農場で育てられた作物、あるいはそこで作られた製品を売っている農場併設の店だ。すべての農場にあるわけではないので、事前に電話して確認しよう。野菜や果物が実っている様子を、作られている場所で実際に見ることほどいいものはない。そして、新鮮でおいしいブルーベリーやスイートコーンが入った袋を両手に、家に帰るのだ。
- 家族で農場ツアーを体験しよう
子どものころ楽しんだリンゴ狩りを思い出してほしい。リンゴ畑を歩き回り、リンゴが木になっている様子を見るのは、すてきな経験だったはず。農場ツアーを計画すれば、一年中、全国各地のたくさんの農場で、またあのころのような体験ができる。アグリツーリズム(農場や農村で滞在型の休暇を楽しむこと)では、わくわくするような非日常的な体験が可能だ。地元でどの農場がツアーをしているか(子どもたちに、飼育している動物を見せてくれるところもある!)は、「アグリツーリズム・ワールド(Agritourism World)」で調べられる。泊まりたいという人もいるだろう。その場合は、「ファーム・ステイUSA(Farm Stay USA)」にアクセスしてみよう。
- 地域支援型農業(CSA)
地域支援型農業(CSA)は、契約した消費者が生産者に対して費用を前払いし、農作物を定期的に受け取る購買システムだ。農場で作られる旬の作物が手に入る。CSAは規模も頻度もさまざまだ。受け取りは週1回が多い。中には、通常プランに加えて、卵や魚などをオプションで付けられるところもある。ファーマーズマーケットや農場、あるいはその他の決められた場所で受け取るのが普通だ(CSAによって異なる)。申し込みたい場合は、地元の農家に、CSAをやっているか問い合わせてみよう。
生産者を知り、自分が食べる食品について学ぶのは簡単なことではない。しかしそうした情報が手に入れば、価値ある体験ができることは間違いない。生産者を知ることにより、私たちと地球の結びつきは深まる。環境に配慮した農法を取り入れる土地とのつながりも強くなる。しっかりと管理された牧草地で乳牛が草を食む、そんな地域と深いきずなができる。生産者を知ることは、地球に敬意を表す農場を支え、農家と私たち両方が恩恵を受けて生きるための素晴らしい方法なのだ。
この記事は、Real Simpleよりクリス・マロイが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。