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新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校で、レバノンでは11歳のモハンメドを含む数万人もの子どもたちが何カ月も授業を受けられずにいる―画像提供:ジョセフ・エイド(AFP) 著者:バシル・エル・コーリー

レバノン東部のシリア難民キャンプに暮らすモハンメド11歳)は、このまま来年度も学校に行けないのではないかと不安に感じている。リモートでオンライン授業を受けることもできない。彼の3人のも、同じ境遇に置かれている。

僕の携帯がこんな状態だっていうのに、息子はどうやって勉強できるというんでしょう」 一家が住むベカー渓谷のテントで、父親のアブドル・ナセルは、あぐらをかいて座ったまま嘆いた

「画面は割れているし…インターネットにもつながっていません」

新型コロナウイルス感染拡大に伴う休校で、数万人ものシリア人やレバノン人、パレスチナ人の子どもたちが、何カ月も授業を受けられずにいる。モハンメドと彼の姉たちも、そのような子ども達の中に含まれる。

経済危機が悪化する中、こうした子どもたちは二度と学校に戻れなくなる恐れがあり、人権団体はこの状況を「教育の大惨事」と呼んでいる。コロナ前からすでに教育へのアクセスが限られていた難民への影響は、特に大きい。

子どもたち全員に携帯電話を買ってあげることはできません。食事を確保することが第一ですから」と、母親のシャマは言った。

モハンメドの家族がシリアからレバノンに移り住んだのは、シリア内戦が勃発した2012年のことだった。今なお続くこの内戦で、38万8000人が死亡し、数百万人が移住に追い込まれた。

だが、彼は2019年まで学校に通えなかった。レバノンの公立学校制度では2013年からシリア難民を受け入れるようになったが、当初はごく限られた人数分の枠しかなかったのだ。

モハンメドが入学した年度は、新型コロナ拡大のタイミングと重なり、2学期になる頃には全学級が閉鎖された。

「息子は1×1すら計算できないんです」と父親は言った。

「危機にさらされて」

2020年3月、レバノン教育省はオンライン授業への切り替えを発表した。その時、モハンメドの姉のハインド、サラ、アマル(12~14歳)は、学校に通い始めてからすでに4年が経っていた。

「前は楽しかったのに」とアマル(14歳)は涙声で話した。「アラビア語と英語、科学、地理の勉強をしていました」

「でも今は、うちはお金がないから、オンライン授業を受けられないんです」

英国に拠点を置く慈善団体のセーブ・ザ・チルドレンによると、2020年にコロナの感染拡大が始まって以来、レバノンでは120万人以上の子どもたちが学校に通えずにいる。

同団体は今年4月、多くの子どもたちが二度と学校に戻れなくなるのでは、と危惧を示した。その理由は、すでに長い間学校を離れてしまったため、あるいは家計が厳しく子どもを学校に通わせることができないためのいずれかだという。

「レバノンに住む大勢の子どもたちの教育が、危機にさらされている」と同団体は指摘している。

レバノンは、1975~1990年の内戦以来最悪の経済危機に陥っており、今や人口の過半数が貧困状態にある。

シリア人の貧困率はさらに高く、90%の世帯が生きていくのがやっとの状態だ。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のリサ・アブー・ハリドは、教育にも影響が及んでいると指摘する。

「シリア人の子どもたちの中には、家族の仕事を手伝うために、やむなく学校をあきらめた子もいます」

レバノンの教育省のデータによると、2020年から2021年に再入学または1年生として入学するはずだったものの、それが叶わなかったシリア人の子どもたちは2万5000人もいるという。

「実際は、もっと多いと考えています」とハリドは言う。現在、学齢期のシリア人の子どもの半数以上が学校に行けていないのでは、と推測している。

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「うんざりして」

「教育の大惨事」は、2019年に悪化した経済危機で職を失ったり収入が激減したりした数万人ものレバノン人にとっても、現実の問題だ。

レバノンの首都ベイルートの東のはずれに位置するブルジュ・ハモウドに住むパメラ(11歳)は、狭いアパートの中で、キーボードを指さした。昨年夏、ベイルートの港で起きた大爆発で壊れたデスクトップパソコンの部品の中で、唯一残ったものだ。

2020年8月4日の同事故では、200人以上が亡くなり、ベルイートは広範囲にわたって壊滅状態となった。パメラの自宅にも被害が及び、景気後退ですでに打撃を受けていた一家にさらなる追い打ちをかけた。

レバノン・ポンドの急落で価格が高騰したパソコンは、パメラの家族にとってはあまりにも高く、代わりを買うことができなかった。

「それで、携帯で授業を受けるようになりました」とパメラは言う。

目の悪い彼女にとって、小さな画面はただでさえ見づらかった。

だが、停電が1日最大18時間に及ぶようになると、携帯電話の電源やインターネットへの接続が切れないようにしておくのが難しくなった。

そして、授業を受けるのをやめることにした。

「オンライン授業にはうんざりして、これ以上続けられないと思いました」と彼女は語った。

パメラの父は、タクシー運転手として働いていたが、失業に追い込まれた。実は何カ月も前から、娘に学校をやめてほしかったという。

「教育もこの国も、どうだっていい」と彼は言う。

だがパメラ本人は、まだ完全に復学を諦めたわけではない。

「勉強をして、将来はちゃんとした仕事に就きたい。そして、両親を助けられるようになりたいんです」

 

オリジナル記事‘I want to study’: Lebanon crisis cancels school for manyDigital Journalに掲載されたものです。

この記事は、Digital JournalよりAFPで執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。