途上国に広がるデジタル通貨や先進国の新しい寄付のカタチ。世界で進む最新プロジェクトの中から今回は、日本とドイツのお金の使い方を通して、社会問題を解決するヒントを紹介します。

weMORI/日本

森林再生のためのドネーションを日常の行為に

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一杯のコーヒーを買うのと同じ感覚で寄付を、というのが〈weMORI〉のビジョン。

環境問題が声高に叫れているにも関わらず、地球の森林破壊は年々、深刻化している。例えばブラジルでは、開発のための森林破壊が昨年の1.5倍のペースで進んでいるというデータも。世界全体でみると毎年、イギリスとほぼ同じ面積の熱帯雨林が伐採されていることになる。一方で、再生される面積はその半分以下。この量を少しでも増やそうと、コーヒーを買うような気軽な感覚で森林再生のためのドネーションができるよう開発されたのが〈ウィモリ〉だ。

立ち上げたのは環境アクティビストの清水イアンら。イギリスを拠点に森林再生に取り組む〈ワールド・ランド・トラスト〉などと共にプロジェクトが進められている。対象となっているのはザンビアやマレーシア、ブラジル、ケニアといった国々の森林。現在はホームページ上で寄付を募っているが、アプリも絶賛開発中。完成すればワンタップで寄付ができるほか、お金の流れや寄付がもたらすインパクトもアプリケーション内で可視化される。
ja.wemori.org

ArtSticker/日本

客室のアートを気に入ったら、アプリから投げ銭感覚で応援!

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アーティスト牛島光太郎の作品。旅人のように渋谷の路上や駅などをさまよい、そこで拾い集めたモノに、それとは関連性のないような言葉を組み合わせるシリーズ。

昨年の夏に渋谷の宮下公園にオープンした次世代型ライフスタイルホテル〈sequence MIYASHITA PARK〉内で、アーティストを直接、気軽にサポートできるプラットフォーム〈アートスティッカー〉が始めたプロジェクト。

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2020年8月にオープン。240の客室すべてに異なる作品がある。

すべての客室にはひとつひとつ異なるアートが飾られていて、作品紹介のプレートには二次元コードが表示されている。

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支援はアプリから。

作品を気に入ったら、〈アートスティッカー〉のアプリをダウンロード。そして、この二次元コードを読み込めば、そこから投げ銭感覚でアーティストを直接支援することができるのだ。お金だけでなく感想のメッセージも送れ、アプリを通して活動を応援することができる。

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客室で過ごす時間がアートの見方を変えていく。

支援は120円からと参加しやすいのもポイント。そのアーティストに興味を持って継続的に応援したいなら、アプリから作品を購入したり、展覧会情報を得ることもできる。

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パブリックスペースにもアートが。書家のハシグチリンタロウの作品。

パブリックアートなど、身の回りにあって無償で受け取ることが当たり前になっているカルチャーに対して、今一度、自分の姿勢を考え直すきっかけになる取り組み。映画や音楽などに比べて、少額での支援がしづらかったアートの世界に、新しいコミュニケーションを生んでいる。
artsticker.app

solio/日本

団体ではなくジャンルを選ぶ、新しい寄付のカタチ

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自分の選んだジャンルと支援割合を円グラフで表示。インパクトも報告される。

寄付に一歩踏み出せない人に共通するのは「どの団体を支援すればいいかわからない」という思い。“出産や子育てを取り巻く環境をよくしたい”“動物の殺処分を減らしたい”など、気になる社会問題ははっきりしているのに、団体選びで立ち止まってしまうのだ。そんな状況を変えるために生まれたのが、今までにない寄付のプラットフォーム〈ソリオ〉。

団体ではなくジャンルを選ぶと、具体的な支援先探しは〈ソリオ〉が担当。寄付のハードルを低くしてくれる。選べるジャンルは国際協力、出産・子育て支援、人権保護、女性支援など12種。関心のある複数のジャンルを選んで、国際協力に5割、動物保護に3割、女性支援に2割といった振り分けもできる。

メリットは規模は小さくても意義のある活動をしている団体に寄付を届けられること。〈ソリオ〉が第三者的な立場で団体の活動をチェックしているので、寄付をする側は寄付先を比較検討する必要がないのも嬉しい。現在は寄付先となる団体を募集中。
solio.me

share/ドイツ

自分の買ったものが、同じものを求める誰かにも届く

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商品はトラッキングコード付き。自分の寄付がどこで役立っているか分かる。

ドイツのスーパーなどで販売されている〈シェア〉ブランドの日用品。食品や飲料、ボディソープなどの衛生用品や文房具があり、これを購入すると、同じものを求めている途上国の人々に、自分が購入したのと同じだけの物資が届けられる。

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届いた石鹸で手洗いを習うインドの学生。

例えば、ハンドソープなどの衛生用品を買えば、それと同様に使える手洗い用の石鹸が。ミネラルウォーターを1本買えば、飲料水を必要としている地域に水を引くプロジェクトへの支援になる、といった仕組みだ。

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ペットボトルは再生プラスチック。

〈シェア〉がスタートしたのは2017年。創業者のセバスチャン・ストリッカーが掲げるのは“自分と同じものを世界の人々と分け合う”というコンセプトで、「1+1」という考え方を軸にした、自分の消費と同じだけのいいことができるというシステムが注目されている。商品は環境への配慮もされていて、食品はオーガニック、ソープ類は自然成分からつくられていたり、ミネラルウォーターのペットボトルにも再生プラスチックを使用している。
www.share.eu

KNAX/ドイツ

大手銀行が考えた、子どもがお金を学ぶプログラム

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お金の使い方を自分で考えられる大人になるためにも、幼い頃から学ぶことが大事。©Sparkasse

ドイツで1818年に設立された歴史あるシュパーカッセ銀行では、6歳~11歳の子どもを対象とした、お金について学べるサービス〈クナックス〉を無料で提供している。始まりは、1974年に創刊された子ども向け雑誌。年に6冊のペースで今も発行されていて、最新号には偽コインがテーマの漫画を掲載。どうやって硬貨が製造されているかを鍛冶職人に質問するといったコーナーもあり、善悪を交えながら、毎号ユニークな切り口で、お金の仕組みを教えてくれる。

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漫画やキャラクターを通して勉強できる。©Sparkasse

数年前からデジタル版〈クナックス〉も登場し、専用のホームページも完成。スマートフォンやタブレットにお小遣いアプリをダウンロードすれば、バーチャルな世界でお金の管理を体験できる。

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親のスマートフォンで一緒に勉強。大人にとっても発見がある。©Sparkasse

例えば、親から子どもへ、毎月決まった額をお小遣いとして入金。子どもはアプリ上で入金や出金の仕組みについて学べるほか、何か大きな買い物をしたいときの貯金箱システムもあり、お金を使うこと、貯めることをリアルに身につけられる。自分の責任でお金を使うということや、その価値をどう考えるかを、親子で一緒に考えられるプログラムだ。
www.knax.de

 

●情報は、FRaU SDGs MOOK Money発売時点のものです。
Coordination:Yumiko Nakanishi Text:Yuka Uchida, Yumiko Urae Edit:Yuka Uchida