新型コロナウイルスの流行による大混乱で、人との付き合い方から買い物の仕方まで、私たちの生活はすっかり変わってしまった。食と私たちとの関係も例外ではない。在宅勤務になり、ロックダウン続きでレストランやパブが休業し、家で食事をすることが増えた。そんな中、よりサステナブルな食事を取り入れる傾向も見られる。先日、英国食品基準庁(FSA)が発表したによると、調査対象となった英国の一般市民の41%が、以前より食品の無駄が減ったと回答している。また18%が、ここ1年間に野菜や果物を育ててみたことがあるという。
この傾向は今後も長く続くのだろうか。正しい方向に向かう一歩であることは確かだ。専門家たちは、今の私たちの食習慣の多くはサステナブルではないと口をそろえる。世界的に見れば、水利用全体の70%が食料生産に使われ、森林伐採や生物多様性減少の60%は食料生産が原因で起こっている。そして、全世界の温室効果ガス排出量の約3分の1は、食料品の生産から流通・消費までの過程で発生している。
だが、サステナブルな食生活においては、小さな心がけで、大きな効果を生み出せる。ここでは、もっと環境に優しい食生活を実践するための簡単な方法を6つ、紹介しよう。
食品ロスを減らす
食品廃棄物を埋め立てると、分解されてメタン(温室効果ガスの一種) が発生する。すべての英国民が、1日食品を無駄にせずに過ごすと、自動車1万4,000台の交通量を1年間減らしたのと同じ環境効果があると考えられている。「平均的な家庭では、年間244キログラムの食品ロスが出ます」。ロンドン大学シティ校で、講師として食料政策を教えるクリスチャン・レイノルズ博士は言う。「買い物袋4つ分の食料を買っても、そのうち1袋分を無駄にしていることになります」。必要なものだけを買うように、買い物に行く前に献立を決めておこう。すぐに食べない分は冷凍する、冷蔵庫や戸棚の古い食材は忘れないように手前に移動する、などの工夫も必要だ。冷蔵庫の設定温度が5度以下になっているかを確認するのも大切だ。「英国では、冷蔵庫の3分の1が6度以上になっています」とレイノルズ博士は説明する。「そうすると、牛乳や肉、チーズ、野菜や果物の賞味期限が1日短くなってしまうのです」
調理方法を変える
「食品によっては、その食品に関連して排出されるすべての温室効果ガスのうち、最大61%が調理によって排出されます」とレイノルズ博士は言う。「調理の方法を変える――例えば、ジャガイモをオーブンで焼く代わりに電子レンジで調理すると、かなりの効果があります」。グリーンエネルギーの供給業者に切り替えることもおすすめだという。また、圧力鍋やスロークッカーを使うと、大きな省エネにつながる。オーブンでの調理時間が45分以上なら、予熱を省いてもいいだろう(ケーキやスフレなど、予熱が出来栄えを左右するものは別だ)。最近のオーブンは、たいていすぐに温度が上がるので、予熱は時代に合わない手順と言える。
レシピにひと工夫する
食料生産で発生する温室効果ガスの30%以上は、畜産業と水産業によるものだ。そこで、肉や魚を食べる量を減らすことが重要になる。日曜日には、15分費やしてその週の献立を考え、お気に入りのレシピにひと工夫してみよう。「レシピを2つ選び、どうすればもう少しサステナブルにできるか考えてみてください。野菜を増やし、動物性タンパク質を減らす工夫をしましょう」。レイノルズ博士によれば、ボロネーゼなどひき肉を使うメニューでは、肉の半量をみじん切りのマッシュルームに替えると、食感や風味を損なわずにカーボンフットプリントを減らせるという。サステナブルに調達されたシーフードは、肉の代わりにぴったりだ。スーパーでは、さまざまな植物由来の代替肉やビーガンチーズがスーパーで買えるようになってきている。
最近発売された『The Planet-Friendly Kitchen(未邦訳 仮題:地球に優しいキッチン)』や、『The Green Roasting Tin(未邦訳 仮題:ローストパンで野菜をロースト)』などの料理本も、アイデアを得る参考になるだろう。
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バラエティに富んだ旬の食材をとる
バイオバーシティ・インターナショナル(Bioversity International)によると、世界に7,000種類あると言われる食用植物のうち、実際に食べられているものは30種類に偏っている。農作物の多様性が限られていることは、気候にも食料安全保障にも悪影響がある。選ぶ食材を賢く替えれば、その影響が多方面に広がることも考えられる。例えば、「ZENB」のパスタは、小麦ではなくイエロー・ピー(南欧、アジア原産の豆の一種)を原料にしている。イエロー・ピーは、窒素を固定することによって土壌を改善する上に、小麦より少ない水で育つので、より環境負荷が低い選択だ。
空輸を減らす
飛行機で輸送される食品は避けるようにしよう。傷みやすい野菜や果物、例えばイチゴ、ブルーベリー、アスパラガス、インゲン、ハーブの苗などだ。「空輸されるハーブのカーボンフットプリントは、自宅の窓辺で育てるハーブの10倍になります」と語るのは、社会的企業ギキ(Giki)の共同設立者ジョー・ハンドだ。彼らは、サステナブルな製品を見つけるためのアプリ「Giki」を提供している。できる限り旬の野菜や果物を選び、旬でないなら缶詰や冷凍のものを買うといい。そのほうが、傾向として、サプライチェーンのエネルギー効率が良いからだ。
賢く買う
世界の食料システムは複雑で、どの食品がサステナブルか判断しにくいことがあるが、それを分かりやすくしてくれるアプリがある。前述の「Giki」は、英国のスーパーで取り扱う商品28万点のサステナビリティを評価するアプリだ。また、海洋保護協会(MSC)が提供する「Good Fish Guide」は、英国で取引される135種類の魚介類のサステナビリティを評価している。サステナブルな養殖魚には「MSC」(または水産養殖管理協会の頭文字「ASC」)のロゴもついている。ほかにも、「フェアトレード」、「フリーダムフード」(動物福祉に関する認証)、「RSPO」(責任をもって調達されたパーム油の認証)といった認証ラベルやオーガニックの表示なども、環境に優しい選択に役立つ指標となっている。パーム油の生産は、環境に甚大な被害をもたらしてきたが、もどかしいことに、どの食品にパーム油が使われているのかは分かりにくい。パーム油がさまざまな名称で表示ラベルに記載されているからだ、とハンドは説明する。
英国では、よりサステナブルな食品を選ぶために、もっと役に立つ仕組みが必要だ。サステナブル・フード・トラスト(Sustainable Food Trust)は、まさにそのためにスーパーや農業関連団体、企業と協力して活動している団体だ、と設立者パトリック・ホールデンは言う。「私たちは、食品のサステナビリティ評価を表すスコアがあるべきだと考えています。今の食品のサステナビリティ評価は複雑すぎます。統一された評価システムが必要です」
ZENBのミッションは、食品ロスの問題に対する意識を高めることにより、フードシステム内部の変化を促すこと。ZENBの「イエロー・ピー・パスタ」シリーズについて詳しく知りたい方はこちら。なぜイエロー・ピーが環境に優しい選択なのかも分かる。
この記事は、The Guardianのエマ・シェパードが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはすべてlegal@industrydive.comまでお願いいたします。